空色から茜色そして夜
からいれたす。
空色から茜色そして夜
今日、ピアスを買った。
素敵な雫型で空色の石が揺れているやつ。
耳につけたそれを見てニヨニヨする、自分が少し照れくさい。
自然と頬が緩んじゃう。つけたまま寝てしまった、私ってばうかれすぎ。
翌日、私はボブカットの髪の毛を下ろして耳元を隠したまま家を出る。
いけないことをしているみたいで慣れないなぁ。
今日は学校で英語の訳が当てられちゃいそうで憂鬱だけれど、アクセサリを付けてテンションあげて乗りきるのだ。
もうすぐ夏休みだしね。
なんて自分を誇示して気合をいれてみる。
ふぅ、でもため息はでちゃうなぁ。最近成績も下がり気味だしねぇ。
気分転換でピアスの穴を開けたのは二カ月前。
「あ~あ~学校が火事とかにならないかしら」
「まーた、なに物騒なこと言ってるのよっ。おはよう」
友達のヤマダに肩をぽんっと叩かれた。
「たた。あ、おはよう~ヤマダ」
「あれ?」
私の変化を目ざとく見つけたヤマダに対して、耳にかかった髪をかきあげて、ちらっと耳元を覗かせる。
「これ買ったんだけど、どうかな?」
「また、無駄遣いして~とはいえ、やっと買いましたか」
ヤマダはからかい半分で、私のちょっと恥ずかしい穴あけのエピソードを語ってくる。ちょっとだからねっ!
「あんなに、大騒ぎして、勇気でないから開けてとか、最終的に泣きついてきたりしてめんどくさかったのになー。二カ月も孔あいてるだけとか、ぷくすっ」
「ひどいなー。大決心だったんだから」
ポーズとして、ほっぺたをふくらませる。
子供っぽいけど私らしいちょいおこのフリ。
「なんか一目惚れしちゃった、八百円
「やっす。どこでかったの? 橙色の石ってなにかしらねぇ」
またまた、すぐにからかってくるんだから。
「えっ、空色だよ」
「はい? どう見ても橙じゃない」
え、真顔やめてよ。やっていい冗談のレベルってあるんだからね。
「またまた。ひどいな~そんな嘘に騙されないんだから。意地悪する人はコケればいいのに、へへっ」
「なにそれ。ふふっ。いや、橙だから……あれ? 赤になってない?」
どしん。突然、友達が
「いったぁ~おけつが割れちゃうよ~」
「ちょっと、大丈夫。やだなぁ、冗談にしても、まじ怖いからやめてよ」
あと、それはもとから。
「いや、ホントだってなんなら写真撮るから」
「ちょっとー、こわいからもうやめようよ、写真もやめよ?」
「ってあれ、スマホ動かない。ちょっと、冗談でしょ? 紫になってるよ」
あわてて、耳に手をのばすが、なんだか耳にピアスが張り付いているような気がしてうまくはずせない。
「うそうそ、ちょっとまってはずすから……あれ、はずれない」
なんだか、手が震えてヤバイ。あれ、ヤバイヤバイヤバイ。
「ねぇ、ほんとどこで買ったのソレ」
「えっとねぇ…………あれ、どこだっけ」
「大丈夫なのソレ、なんかおかしくない?」
「ところで気になったんだけど、なんか学校のほうから煙上がってない?」
「な、なんで。まさかねぇ」
「うそ、学校燃えてない? 大雨とか大雪とか振ってくれないと」
「やだなぁ。まだ夏だし、びしょ濡れになっちゃうから。ポップコーンとかでどうかな?」
「ばか、それじゃ消えないで……しょ?」
あれ、なんでヤマダ横向きになって……あ、私だ。
あんなに早鐘を打っていた心臓の音がいまはやけに静かだ。
なにかの声が耳元で聞こえた気がした。
青空から夕焼けを通り過ぎて夜になる。
夜は寝る時間って決まってるんだよ。
雪じゃなくてポップコーンが降り積もった。
空色から茜色そして夜 からいれたす。 @retasun
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