死にたがり泡沫

菟月 衒輝

序章 死にたがり泡沫

第1話

 絶望のふちに片足を乗せる。

 灰白色の空は蔑むように俺を見下げる。

 両足を乗せると、荒廃した世界がぞぉっと広がる。

 湿った風が俺の頬をべろりと舐めてくる。煽っているのかもしれない。そう考えると俺はやっぱりひどく嫌な気分になった。



 姿勢をゆっくりと、潜るように前傾させていく。呼吸を絞め殺す。

 息の死骸を吐き出すと、白い煙になった。俺は、こんなにも寒くなるまで――――。

 のっぺりとした校庭がずっと先に見える。

 両足が簡単に剥がれる。俺は校庭の影になる。陽光に頼らぬ影に。薄い灰色の影に。

 目を瞑ると、静謐で厳粛な暗闇が広がって、上下左右の感覚が失われる。ただただ空気が俺の身体を引き裂くように過ぎていくだけだ。




「くそったれ」




 俺は、水風船みたいに割れて散った。

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