違う未来
小さな窓から朝焼けと共に赤い陽の光が暗い部屋に差し込む。
いつも通り、三角の屋根を眺めながら俺は目を覚ました。
静かな部屋の中には、車の走る音やシャッターが開く音が外からしみこんでくる。
冬の寒さに打たれながら、俺は布団をどけて制服に着替える。
屋根裏の扉を開け、下へ降りていくその途中で母と、父と、祖父母と何でもないような短い会話をして、キッチンのシンクで歯を磨くと、ほんのちょっとだけ身だしなみを整え、微妙に開きにくい玄関の扉を開け家を出る。
家を出て歩き始めると、冷たい風が頬をかすめていく。
青くなりつつある暗い空では、鳥たちが自由に飛びまわり、すぐ横の小さな花壇では名前も知らない草たちが青々と茂り、その下では小さな白い柱たちがひょっこりと土を持ち上げている。
静かなようで騒がしいこの空気が、どこか心地が良かった。
俺はそんな風景の中を歩いて、学校へ向かっていく。
なんてことはない_いつも通りの朝だ。
まだ人の少ない教室に着くと、生暖かい空気が俺を迎える。
特に誰とも会話をしないまま窓際の自分の席に着くと、暇つぶしに最近買った本でも読み始める。
そうしているうちに教室もだんだんと騒がしくなり始める。
ふと、視線を横にやる。
すると視線の先、俺の席のちょうど反対側_廊下側の席で二人の女子生徒が話しているのが見える。
一人は何やら煩わしそうな表情で席に座っていて、もう一人はその前で目を輝かせながら何かを話している。
そんな光景を見ながらボーとしていると、不意に俺の視界をふさぐように人が現れる。
「おっはー、満」
「_おはよ、悟」
佐山悟、俺の友人がそこに立っていた。
「なーに、見てたんだ」
「何も見てない」
「ハーン、なるほど由紀さんと加奈さんどっちだ」
悟が耳打ちするように言ってくる。
「だから、見てないって」
投げやりにそう言うと、俺はため息を漏らす。
面倒な友人から視線をそらすために見上げた空は、青々とどこまでも広がっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます