青の時間

星宮林檎

青の時間

もしも僕と君との間に、何か密やかな秘密があるとして

それに一体どんな意味があると思う?

静かにうねる、凪いだ海から青い風が生まれては消える

立ち上る蜃気楼の向こうから

潮風が柔らかく肌を撫で

汗ばんだ首筋がひんやりした

君とこの場所を訪れたあの時はもう戻らないって

そんなことは知ってるよ

だって

時を置いて再び訪れる事が許されない場所っていうのがあると思うから

肌をひりひりと灼く強い日差しとこの胸の痛みだけが

僕たちがかつてここに存在していた証

だからこの痛みを手放せないでいる

僕の弱さを許して欲しい

その甘い痛みだけが、この恋の形見だから

今はただ

この孤独な透明感が心地いい

一瞬でいい

かつて君を愛していた

このままの僕でいさせて

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