第一章
初めての仲間は追放されてきた?
『一応新しい部門だからな、部屋を用意した
私の秘書がメモを渡すからそこへ行きなさい』
ギルド長に命じられた秘書さんにメモを渡され用意された部屋へと向かう
かなり大手のギルドのギルドハウスなだけあってここはとてつもなく広いのだが、向かった先は資料室の隣
元々倉庫だった部屋だった
新しい部門の部屋だと聞かされて期待してたんだけどなぁ
とりあえず中に入ってみよう
辺りに扉の鈍い音が響く
あとで蝶番に油を差さないといけないな
扉を開けたその先には
事務机と椅子が二つずつ
そして空の棚があるだけの殺風景な光景だった
そりゃ今日から始動する部門だ
必要なものは追々増やしていくのだろう
この光景の前に僕は呆けてしまっていたところ、開いていた扉をノックする音が聞こえたので振り向く
ギルド長の秘書のキャサリンさんが立っていた
「お疲れ様ですマークさん」
「お疲れ様ですー」
僕はまだ何も仕事をしていないのだけれどこれが彼女の挨拶なのだ
キャサリンさんはメガネの位置を指で直すと話を続ける
「まだ追放部門の初日ですので誰を追放するか決まってはいないでしょう?」
「確かにそうですね、迷惑な人が増えたとは聞いていましたけど名前や部門までは分かってないです」
「そこで秘書部門から一人、追放すれすれの子を一人連れてきました」
「なんですって?」
いきなりとんでもない事言いだしたよこの人
秘書部門は各隊長達に振り分けられる補佐の役割を担っている人の部門だ
「私たちは追放などしたくないのでこちらの部門で働かせてあげることは出来ますか?まだこちらの部門ではマークさんおひとりでしょう
仕事のアシスタントとしてお願いします」
なるほどそういう事か
たしかにこの追放部門はまだ初日なので僕一人しかいない
一人増えるだけでも寂しくないし仕事も捗りそうだ
「お入りなさいニーナ」
「はいぃ・・・」
キャサリンさんに呼ばれた人が開いた扉から入ってくる
見るからに落ち込んでいるニーナと呼ばれた少女が現れた
「貴女は今日からこちらでの仕事となります、わかりましたか?」
「わかりました・・・」
「では私は仕事に戻りますのでマークさんこの子をよろしくお願いします」
「あっはい、わかりました」
そうしてキャサリンさんは足早に去っていった
残されたのは追放すれすれ?らしい少女といきなり部門長に抜擢された僕
沈黙に耐えきれなくなったので
「とりあえず、自己紹介をするよ
僕はマーク、昨日まで広報部門でチーフをしていたんだ
今日からこの追放部門の隊長だよ、よろしくね」
「ニーナですぅ・・・
ご迷惑をかけると思いますがよろしくお願いしますぅ・・・」
ニーナは下を向いたまま自己紹介をした
秘書部門からここにきて落ち込んでいるんだろう
いったい何があったんだろうか
追放すれすれと言っていたなぁ
これから追放する人たちの参考にするために彼女のここに来た理由を聞いてみよう
「ところで君は秘書部門でなにがあったんだい?」
ニーナが体を強張らせている
彼女の顔が青くなっていく様が見て取れる
少し溜息を吐いた彼女が口を開く
「実は・・・遅刻と居眠りを・・・」
「学生かよ!」
「ふぐぅ・・・;;」
思わず突っ込んだら泣かせてしまった
もっと重い理由で追い出されてきたのかと思ってたよ
ぐすぐすと泣く彼女にかける言葉を探す
慰めになるかわからないけど
「・・・まぁ追放処分って訳じゃないんだしこれからここでしっかりと働いてくれればいいよ
君は秘書部門にいたんだろう?
なら僕はこの部門の隊長だから秘書として出向してきたようなもんじゃないか」
「ぐすっ確かに・・・そうですねぇ・・・」
「とりあえずこれからよろしくお願いするよ」
「はい、よろしくお願いしますぅ」
追放部門の仲間が増えた
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