第14話
ゴローの生活スキル
【ファイア】火をつける
【ウォーター】水を出す
【ウインド】そよ風をおこす
【ロック】岩を出す
【ライト】光を出す
【ダーク】暗くする
【アイス】氷を出す
【スタン】気絶させる
【ケア】治療する
【クリーン】綺麗にする
【リペア】修理する
【ポーチ】財布程度の容量のアイテムボックス
————
——
「おっ、なかなかいい感じじゃない?」
俺がお世話になっている男娼館は快楽街でも外れの方にあり意外と敷地が広い。裏手の方が特に。
この前、倉庫にある寝具を運び出した時に気づいたんだ。
倉庫の裏手の方には結構な広さの荒れ地が広がり、さらに奥には荒れた垣根で囲まれたゴミ処理施設(裏手側が面している)がある。
そして、この荒れ地はウチのオーナー所有地でもあり、ついでに言えば(スライムを利用した)ゴミ処理施設もウチのオーナーが営んでいるらしいのだ。
ウチのオーナーはやり手の印象が強かったけど、いつも仮面をつけているので顔は見たことないけど、印象通りの人のようだね。
俺が荒れ地を眺めている時にシゲさんが教えてくれた。
それで俺はというと、以前購入した本は全て読み終わったから魔道具屋さんに行ってみようかと思ったけど、少し距離があるため、乗合馬車に乗った方がいいと聞いて、やめることした。
というのも魔道具は高価な物が多いらしいからどうせ買えない。
ただ、どんな魔道具があるのか興味があっただけだからだ。
それで、予定のなくなった俺は、日課にしているお店のクリーンにリペアをしていたんだけど、いつもしているからそれもすぐに終わり、今まであまり使っていなかったスキルで使って暇つぶしをしていた。
「ちょっと、こっちが傾いているな。ここも少し削って……」
ロックスキルを使い手頃な大きさの岩を出して、ウォータースキルで削っていくのだ。
ウォータースキルも使い出して分かる。この便利さを。
蛇口から水を出しているようなイメージすればその通りにシャバシャバ出てくるし、シャワーの様に出すことだってできる。
そして、今はウォーターカッターみたいなイメージで細く放出して硬い岩を削っているところだ。
「よし、こんなところかな」
それで完成したのが岩を削って作ったテーブルとイス。水飛沫で濡れた髪や顔を首にかけていたタオルで拭きつつ一歩離れて眺めて見る。
「おお、いい感じじゃないか?」
初めて作ったにしてはなかなかのできだろう。むふん。
「何をやっとるかと思えば、ゴローは面白い使い方をするのぉ。見事なものじゃ」
「シゲさん? あはは、初めて作ってみたから見栄えはよくないんですけどね」
出来上がったイスにシゲさんと腰掛けて座り心地を確かめる。
「うーん、座り心地は正直よくないですね」
「岩を削って作ったイスじゃろ? こんなもんじゃて……しかし、よくこのような手頃な岩を見つけたの……」
シゲさんが座ったまま荒れ地の方に顔を向ける。
「えっと、この岩も俺が出したやつなんですよ、こんな風に」
ロックスキルを使って手頃な大きなさの岩を出してみせる。
このロックスキルも便利でイメージ次第で大きさや形は自由に変えれ……ん?
「なるほどの……ゴロー? 突然考え込んでどうしたんじゃ」
「いや、俺気づいたんです」
今座っているイスをイメージしながらロックスキルを使ってみた。
「げっ、やっぱり」
俺が岩を削って作ったイスとそっくりな、切り株のようなイス(背もたれ付き)が出て来た。
「なんてことだ」
「これはたまげたの」
滅多な事では驚かないシゲさんもこれには目を丸くして驚いていた。俺は驚きよりもショックの方が大きいけど。まあいいか。他にもいい事思いついたし。
「これはどうだ」
そう、アイススキルだ。お店で毎日使っている便利なスキル。ロックスキルができるならアイススキルだってできるんじゃないかと思ったのだ。
ロックスキルの時と同じように形や大きさをイメージして使ってみれば、
「おお、できたよ」
切り株の様な氷のイスが出来上がった。太陽の光が半透明の氷に反射して綺麗なイスに見える。
アイススキルの方が使い慣れているせいなのか、ロックスキルよりもスムーズにイスを作る事ができた。
「なんと」
シゲさんが驚きつつもゆっくりと氷のイスに近づき触れる。
「氷じゃな」
「はい。やり方はロックスキルと同じだったので。でも溶けちゃいますからあまり使い道はなさそうですけどね」
「ふむ……それはもったいないの」
「そうですね……」
シゲさんがそこで何やら考え始めたので、俺は似たようなイスを何脚か作り、今度はロックスキルとクリーンスキルを同時に使ってみる。
こうすればロックスキルで出した岩を消す事ができるっぽいのだ。何となくそう思っただけで確証はないけど、イスはちゃんと消えていた。
「おお」
クリーンスキルって万能だわ。しばらくロックで使ったイスとアイスで作ったイスを作っては消しを繰り返していると、
「そうじゃゴロー。氷で花は作れんのかの? できるのならほれ、お主が気に入っている娘たちよ。エールに氷の花を浮かべてやれば喜ぶじゃろうて」
「氷で作った花をエールに浮かべる……?」
エールに氷の花を浮かべてレイナさんとアンナさんの前に差し出している自分の姿を妄想をしてみる。
レイナさん『ゴロー、これを私にか。ふむ。奥はもう空いているか?』
『もちろん空いてます』
えちえちモードに突入。
アンナさん『ゴロー。なかなか粋な事するじゃねぇか、よし奥いくぞ』
『はい、喜んで』
えちえちモードに突入。
ふへへ。
「シゲさん、それ良い! やる、俺はやるよ」
「そ、そうか。あまり無理せず頑張るんじゃぞ」
氷の花は細かく簡単にできるものじゃなかった。それでも2人の喜ぶ顔が見たくて頑張った俺。夕方にはどうにか形になった。
その夜。
「ゴロー、いつものをもらっていいだろうか」
「レイナさんいらっしゃい。はい、エールです」
「うむ。ん? これは氷のバラ、なのか!?」
「レイナさんに喜んで欲しくて」
「そ、そうか」
顔を真っ赤にしてちびちび飲み始めたレイナさん。ちょっと反応は違ったけど、とても喜んでもらえて良かったよ。
ちなにみレイナさんは機嫌がいいと俺の頭をよく撫でる。
「ゴロー。あたいが来てやったぞ!」
「アンナさんいらっしゃい」
次の日の夜、アンナさんにも同じようにエールに氷のバラ(花)を浮かべて提供した。
「な、なんだこれ!」
「バラの花です、アンナさんに喜んでほしくて。あ、でも氷でできていますのですぐに溶けますけどね」
「そ、そうか。あたいにこんな綺麗な花を。ふふっ、エールに入れてってのがゴローらしくて、いいな」
アンナさんは顔を真っ赤にした後に、ぐいっとエールを一気に飲み干した。
妖しく笑ったアンナさんから奥へと引っ張られた。
ちょっと思っていた反応と違ったけど、喜んでもらえたようでよかったよ。
ちなみにアンナさんは機嫌がいいとよく笑い俺の背中をバシバシ叩いてくる。
気をよくした俺。この日からエールに色んな形(花以外)の氷を入れるようにしたら、エールの売り上げがぐんぐん伸びて、みんなからとても感謝されたよ。
俺は忙しくなったけどね……
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