第5話 さらに追放
アダムがイヴを追い出してから間もなく、アダムはルルの元へ向かった。アダムは体を大きな葉でくるみその身を隠すようにして歩いていた。しばらくすると水辺で佇むルルを見つけ、アダムはその傍らへと寄り添った。
「アダム!? 突然どうしたのですか? それにそのおかしな格好」
「ルル、僕はわかったんだ、君の本当の美しさに、はあはあ。君こそ僕の婚約者に相応しい素晴らしい人だ」
「そんな…… あなたにはイヴがいるではありませんか。イヴは私なんかよりもよほど美しいのです」
「いいや、それは違う。あの女はもうここにはいない。僕はルル…… はあはあ、君を愛しているんだ」
「ああ、アダム、あなたは私を愛してくれるのですか? 長い間ずっと、神を愛するだけだったこの私を愛してくれると。そして私もあなたを愛して良いのですか?」
「もちろんだとも、お互いに愛し合うことは素晴らしいことだ。僕はもう一人前だ、これでルルと夫婦に…… はあはあ。さあ、ここから長い時間を共に過ごしていこう」
アダムは、イヴを追放したことでこの神の国がルルと二人のものになったと考えているようだった。しかしそれは大きな勘違いだと知ることになる。息遣いを荒げているアダムへ神が語りかけた。
『アダムよ、お前はなぜ木の葉で体を隠しているのか。一体何があったと言うのだ』
「神よ、私は裸でいることをおかしいと思うのです。それにルルに見られるのがとても恥ずかしいのです」
『お前は善悪の知識の木になる禁断の果実を食べたのだね? あの実を食べてはいけないと私と約束したにもかかわらず、それを破ったのだ』
「いいえ違います。あの女が、イヴが私を騙して食べさせたのです。決して食べたかったわけではないのです。ですので罰としてイヴはこの楽園、神の国から追放してやりました」
『アダムよ、お前にそんな権限はないのだよ。それに禁断の果実を食べたものは誰であっても神の国を出て行かなければならぬ。よってアダム、お前も追放する』
「そんな! 追放されてしまったら私は今後どうやって生きて行けばいいのでしょう。神よ、哀れな私をお許しください!」
『ではイヴはどう生きていける考えたのだ? それはまあ良い…… 今後お前は永遠の命を無くし、自らの手を使って大地を耕し糧を得る者になるのだ。生きていく場所を作り、子を産み、育て、子孫が生きるために努力するが良い』
神は次に、アダムの傍らに立っているルルへ言葉をかけた。
『ルルよ、お前はこのアダムを愛すると言ったな。それでは共に行くがよい』
「えー、私は嫌ですよ? 何も悪いことをしてないし、禁断の果実も食べてませんからあ。だからずっとこの神の国で楽園生活満喫したいですう」
『良かろう、罪なき者の願い聞き入れよう』
「あの…… 神よ? 私はどうやって子孫を作ったらいいのでしょうか」
神はゆっくりと首を振った。
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