第27話 謎の人物との邂逅
レイア達が「水上爆発」で魔物を殲滅する前。ボールスは一人街の中を駆け回っていた。
「やっと酔いが覚めてきたと思ったけど。自分のハイテンションぶりを思い出したら泣けてくる」
自分の失態を思い出し少しでも動き魔物を倒すことで嫌な思い出を忘れようと試みる。
「本当に何が起きてやがる。
「グルルルルッ!」
「邪魔だ」
「キャウン!」
ウォレストウルフ出現。出会い頭棍棒で脳天を一撃。魔石を拾うとそのまま何処へともなく走る。
未だに確かな状況がわかっていない俺は道端に出会う魔物達を屠りながら考える。そんな時何処からか自分に向けて「何か」まずいモノガ飛んでくるように感じた。嫌な予感がしたのでその場から横に転がる。
ズドドドドドドッ
「――おいおい。なんだよ」
さっきまで自分がいた場所から銃撃じみた音がした。そちらを見ると地面に幾つもの小さなクレーターが形成されている。
少し遅かったら自分が蜂の巣のようになっていた可能性もありゾッとした。
「ちぇっ。避けるなよぉ〜ボクの可愛い魔物達を殺したんだから甘んじて受けろよなぁ〜?」
クレーターに気を取られていると近くの建物から誰かのやけに高いトーンの声が聞こえてきた。
「誰だお前、子供?」
建物の屋根を見ると黒いフードで頭から爪先まで隠れている小柄の人物がいた。ボールスから見ても「子供」にしか見えなかったのでつい口に出してしまう。
「ハァ、ボクが子供?――ハハっ! 可笑しいね。本当に可笑しい…子供な訳ないだろ」
「子供」と言われた謎の人物はクスクスと不気味に笑った後。いきなり冷気を放つような言葉と共に威圧を放つ。
「――ッ」
こいつ、何者だ。今まで会ってきた魔物達なんて比べもんにならねぇぐらい恐ろしい威圧をあててきやがる。それにこいつが言った言葉。「可愛い魔物」だぁ? 今回の騒動の犯人はこいつで確定か?
色々と考えていると謎の人物が語り出す。
「どうした。怖くなっちゃったかい? まあ無理もない。君のような雑魚とボクは比べるのすら烏滸がましい」
「は、なら見逃してくれよ。俺もお前みたいな強いやつ(笑)とは戦いたくないからな」
相手が煽ってくる中身を引こうと決めた。正直な話実力云々で俺は勝てないと悟った。
さっきの攻撃はまぐれで避けれたみたいなものだ。そんな得体の知れない攻撃を行う人物とタイマンなんてやってられない。
今はどうにか見逃して貰って誰か――聖女か聖堂騎士又はギルドに頼るのが得策だ…と思っていても、無理だろうな。
一歩でも動いたら殺られるという緊張感があった。
「あぁダメダメ。ダメだね。君はボクの可愛い可愛い魔物達を殺しすぎた。邪魔をしたんだ。そんな君の未来は「死」しかありえない。報いを受けろ」
「チッ!」
それだけ言うと自分に向けて右手を翳してくる。
「死ね」
「っう、があっ!?」
気づいたら突然の痛みに声を漏らしていた。
ぐっ! な、何をされた?
不可視のナニかに左肩を貫かれた感覚がした。痛みよりもジクジクとした熱さが左肩から伝わってくる。
体がよろめく中倒れることを両足で耐え。呻きながら右手で肩を押さえると左肩から少なくない血が流れていた。
「ヘェ〜いまので確実に左腕を飛ばしたと思ったんだけど。君、案外タフだねぇ」
「はっ。タフさが売りなもんでな」
少し関心したような謎の人物の言葉にへらず口を叩くが内心は焦っていた。
やばい、やばい。マジでやばい。【
考えても考えても良い案など出るはずが無く嫌な冷や汗だけが背中を伝う。
謎の人物はニターっと笑う。もしかしたら自分の「痩せ我慢」を見透かされているのかもしれない。
「ま、タフな分には好都合だよ。ボクの大事な魔物達を殺したんだ。簡単に死ねると思うなよ。嬲り殺しにしてあげるよ」
「やれるもんならやってみろや。俺もタダで終わると思うなよ」
逃げれないと悟った俺はちっぽけな威勢を張り左肩の痛みに顔を顰めながら右手で棍棒を構える。
「ハハ! そんな屑木だけで対抗できると思っているのかよ。片腹痛いわ!」
「やってみなくちゃわかんねぇだろうが――【スイング】!!」
相手の攻撃のタイミングが掴めないので棍棒を振るい唯一使える攻撃スキルの【スイング】を放つ。
【スイング】は『
パシッ
【スイング】から発生した『
「…は? 君はいま何をした…。まさか…いや、ありえない…」
さっきまであんなにも余裕を見せていた謎の人物はここにきて初めて動揺を見せる。今も何かをブツブツと呟いている。
恐らくボールスが放った【スイング】から発生した刃。『
隙をつくための対抗策として使ったが、何か違和感を感じるな…気のせいか? ルルやエレノアに見られた時も驚かれたからな。なんでも【棍棒術】は人間が覚えられない技らしい。俺はゴブリンから【強奪】したから使えるだけだが。
ボールスの言う通り【棍棒術】はゴブリン固有のスキルらしく人間では覚えられないとか。それも【棍棒術】で覚えられる【スイング】から発生する『
本来ならゴブリン自身も使えるのだがそんな知恵を持たないこと。ゴブリンが棍棒だけを使うわけではないこと。そもそも【棍棒術】のレベルが上がりにくいことの全てが重なり【スイング】を使えるゴブリンは天文学的にいないに等しいと思われる。
ルルとエレノアには「棍棒を振っていたらある日覚えていた」と伝えている。その時に訝しんだ目で見られたのは懐かしい。
「それが人に物を頼む態度かタコ助。まずはテメェのスキルを教えてから言ってみろや
今は目の前の戦闘に集中する為に返しの言葉と続け様に【スイング】を放つ。
「ぐっ!」
真紅の刃が自分の迫ってきたことで謎の人物が急いで右手を振るう。
パシッ
さっきと同じ両者の攻撃が四散した音が鳴る。
相手の攻撃のタイミングは「声」か「腕を振るう」こと。恐らく【無詠唱】って奴だろう。攻撃は俺の【スイング】で相殺できる。ただ見えないし俺も魔力がそこまで残っている訳じゃねえ。
小言で「ステータス」と唱える。
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ボールス・エルバンス 29歳 男
L v.38→42
種族:人種
ジョブ:性技
サブジョブ:戦士
魔力:2568→4946(1160)
筋力:850→1050
防御力:469→621
魔防御力:245→320
素早さ:960→1350
運:50
※()内は現在の数値。
加護:なし
スキル: 剣術lv.2 体術lv.2 身体強化lv.5 氷魔法lv.0(開花してない)性技lv.7 絶倫lv.9 性欲lv.10(MAX) 棍棒術lv.4 繁殖 悪食
ユニークスキル:強奪lv.4
属性:氷・無
状態異常:性○
持ち物:なし
所持金: 45万ベル
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これまでの生活や謎の人物と会う前に倒した魔物達を倒したことで「ステータス」は上がっている。それでもこれまでの連戦したことによる魔力、気力の消耗は激しい。
【スイング】の魔力が一回につき「30」は助かるがそれも何度も打てるわけではないし。【
「……」
【スイング】から生成された真紅の刃を相殺したきり俯いて動かなくなってしまった謎の人物に油断なく棍棒を向ける。
「――三下が」
「――ッ!――【スイング】!!」
謎の人物は小言で一言。その言葉を聞いた瞬間ゾクリと嫌な感覚を覚えた俺は問答無用で謎の人物に向けて【スイング】を放つ。
パシッ
「ぐ、があっ!」
相殺した音は聞こえたが何発か自分の体に当たった痛みが伝わってくる。感覚から脇腹と左足の太腿に謎の攻撃を受けてしまったようだ。
痛みから片膝をついてしまう。その時謎の人物が顔を上げてこちらを見てくる。
「いいだろう。君が雑魚ではないことを認めよう。だがこれだけは覚えておけ。ボクの名前はシノ、ただのシノ。君を殺す者の名だ」
「シノ」と名乗った人物は片膝をつくボールスに向けて右手を振るい不可視の攻撃を無慈悲に放つ。
「――ッ。まず、避けられ――!!」
ズドドドドドドッ
初めの時の様な銃撃のような音が連続で周囲に響き渡る。
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