第五話

 日本のペット霊園はやがてキリスト教式が主流となって行った。檀家制度もなく葬式の華やかさも普及の手助けとなった。当然ペットへの葬儀なので自分や家族が仏教徒であっても改宗する必要性は全く無かった。なにより、キリスト教式のペット葬儀の場合はお悔やみの言葉が無いのだ。永代使用料(もう一回言うが目安としてペット霊園の永代使用料は二五万ぐらいだ!)が無いのに、災害等で墓が壊れない限り墓は半永久的に使用可能という点がなによりの魅力であった。

 葬式の際は聖書を朗読し、一人が聖歌を歌い、聖歌を歌い終えた後に聖職者が引導を引き渡してから骨壺を墓に納め、墓の周りに白い花がそえられて葬式は終了する。キリスト教式は花を多数用いるのが特徴だ。

 キリスト教式ペット霊園普及のおかげで生花店が繁盛するようになった。生花店が繁盛するということは園芸農業が盛んになるということを意味した。波及効果は石材業だけではないのだ。墓石にペットの写真データや十字をメッキでプリントするため表面化学業界も潤った。またお線香などの需要も増えた。

キリスト教式と言えども墓参りの時期はお盆とお彼岸に集中した。それでも宿坊は簡易宿泊免許を持っている関係で早い者勝ちとなるため外国人観光客が予約済みで墓参りに来た客は予約が取れないという事もしばしばであった。

 宿坊価格比較サイトなるものも出来た。ホテルや旅館がサイトによって同じ料金ではないのと同じく、なぜか宿坊でも同じ料金とは限らないのであった。IT産業にも思わぬ波及効果をもたらした。

 ペット霊園の墓は高さが低いことを挙げた。ということは地震に強いという意味でもあった。大地震が起きたときも墓石が倒れたりする危険性が大変少ない。

 ペット保険の普及は葬儀代込の保険が増え、葬儀したくても出来ないという事態を避ける事にも役立った。つまり損害保険会社にも恩恵が行ったことも見逃せない。ペット保険は損害保険の管轄である。

 ペット霊園の普及に伴いペット専用の火葬業者も増えた。人間の死と異なり、ペットの場合は自治体が対応してくれない。もっともペット火葬は悪徳業者が問題となっている部分なので現在自治体によるペット火葬が行えるようを法改正するようである。火葬料金もペット保険対応となりスムーズに行えるようになった。

 こうしてさまざまな産業に恩恵をもたらしたキリスト教式ペット霊園であるが、いよいよその本領発揮の時がやってきた。AI社会の到来である。

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