第二話
加藤茂がさいたま司教区会で出したアイデアは喝采を受けた。司教区はさっそく空き家を改造して宿坊として簡易宿泊免許を取った。こうすれば空き家の解体費用を低減することが出来るし、隣のペット霊園にお参りに来る人の宿泊施設にもなる。ペット霊園管理者の寮としても活用できる。二戸のうち一戸は宿坊用に改造し、もう一戸はペット霊園兼宿坊管理者の寮となった。入寮を希望しない人の場合は霊園事務所のみの機能となる。
宿坊は一泊二五〇〇円素泊まり全八部屋と格安だ。宿坊を住居目的で使用することを防ぐため同一人物が四連続以上の宿泊を禁止することとした。風呂はなく、トイレは共同だ。といってもこの値段はとても評判がよく、主にカトリック教国の外国人から次々予約が来た。これなら利益も出る上に墓守の住居も無料で確保できる。墓守へ給与として「月収手取二〇万」も宿坊の売り上げを経由して出せるようになった。宿泊予約はネット完結でチェックイン、チェックアウトと部屋の掃除、ベッドメイキングだけであった。余った時間で一日数か所の墓を守る。
民泊施設は一年中稼働させることが出来ない。だが簡易宿泊所の宿坊ならば1年中稼働させることも可能だ。こうして「ボッチ、陰キャ、コミュ障大歓迎。一人で黙々とできる簡単な作業です。ニート・フリーター大歓迎。もちろん正社員。月収二〇万。一日六時間勤務。洗礼の有無は問わないし宗教不問」の求人広告に人が殺到した。それだけではなかった。パート主婦も生活していく年金額が足りない老夫婦も次々応募した。
今や日本は観光立国。こうして次々と簡易宿泊所の宿坊が誕生した。仏教系の宿坊も無人仏閣を活用する形で次々誕生した。神道がこれに続き神社の中に宿坊施設を作った。
それだけではなかった。外国の教会も次々真似た。外国は日本の比じゃないほど失業率が高い。ゆえに雇用の受け皿となるのは非常にありがたいことなのだ。
社会の変化はそれだけではなかった。次に大量のコンビニフランチャイジーが廃業しお寺の管理兼宿坊管理職に転職した。彼ら曰くコンビニフランチャイズ事業というのは年中無休で働いても年収二百万程度と言う激務、薄給であった。つまり宿坊兼住職の方がはるかに人間的な生活が送れるのであった。こうしてコンビニがどんどん街の中から消えていき、宗教施設が復権していったのであった。人手不足などという報道はデマだったことも判明した。人手不足なら手取り月収二〇万程度の仕事に殺到するわけがないからだ。こうして宿坊が全国に普及した。
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