第6章

6-1

 9月になって、コウがインターシップを終えたというので、私も休みをもらって家に帰ることにしていた。コウのマンションのある駅で待ち合わせをして


「コウ 淋しかったんだよーぉ」と、コウの手を握って振りながら・・


「あぁ すんまなー でも、仕方ないよー 今日は可愛がるからー」


 部屋に入ると直ぐに、服を脱がされ、二人でシャワーを浴びることにした。その間も、時々コウはあの部分に刺激を与えてきていて、私は、その度に崩れるようにしがみついていた。そのまま、ベッドに連れて行ってもらって、愛し合って、夕方までそのまま過ごしたのだ。次の日、一緒にコウの実家に戻る約束をしていた。


 家に帰ると、碧がお米を研いでいて


「うむー 感心じゃん」


「ミィ姉 あのさー ミィ姉が居なくなってから お母さんがご飯ぐらい炊いておきなさいネって うるさいんだよー 早く、帰ってきてくれよな」


「だって 男の子でも、それっくらいしなきゃーダメよ 彼女もつくれないよ」


「そうだ あのさー 8月の末に県民体育大会があってさー それで・・彼女に会えたんだー」


「彼女って 碧が好きだって言ってた子?」


「好きだなんて言ったかなーぁ 気になるとは言ったと思うけど」


「どっちでもいいわよー それで どうしたの? ねぇ、声掛けたの?」


「うん ちょうど一人だけの時をみはからってネ」


「そう なんて?  ねぇ ねぇ どうした? むこうは?」


「あぁ 彼女 準々決勝であと一歩のところで負けたからネ 床を見つめて、少し、涙ぐんでいたみたいで・・・惜しかったネ もう少しだったのにネ って声掛けたんだ むこうはキョトンとして、俺の顔を見てて、何にも言わず、反応無かったんだ」


「そう それで?」


「俺 名前 名乗ってさー 今度 一緒にバドミントンしない? って言ったらさー 何にも言わないで、慌てて、ラケットとかバッグを抱えて、逃げるように走って行った」


「あーあ そんなのあったり前じゃぁない びっくりするわよー バッカじゃないの いきなりぃ 知らない男の人から、そんなこと言われたらー まだ 中学生なんでしょ 相手のこと考えなさいよー」


「そうかなー でも 声掛けなきゃって思ってさー 馬の尻尾みたいな髪の毛可愛かったなぁー」


「でもネ ナンパじゃぁないんだからー よく、先生とかに言いつけられなかったわよー 不審者としてネ あんたがそんな不器用で無神経だと思わなかったワ」


「じゃーぁ どうすればよかったんだよー」


「慰めて、声掛けて、名乗るぐらいはよかったワヨ その後 いきなり、誘うなんてー 警戒するに決まってるじゃぁない もう、少し、試合のこととかバドミントンのこと話すとかさー 向こうが反応してきて、受け答えするようになって打ち解けるようになって心許してきたら、誘ってみるのも良いかもネ」


「そうかー 焦りすぎかなー もう ダメだなー 俺 嫌われたカナー 不審者かぁー」


「まぁ 成功率0.1% ねっ もう会うことも無いだろうけど」


 その夜は、焼肉を用意してくれていた。私も、久々のお肉だった。


「美海 ちゃんと食べてる? 不自由ないの?」と、お母さんが相変わらず心配していた。


「大丈夫だって! 野菜が多くって、碧だったら文句たらたらだろうけどネ」


「そうネ 碧 もっと 食べなさいよー あなた 最近 食欲ないのネ 元気ないし お姉ちゃんが居ないからかしら」


「そんなんじゃぁないよ ちょっと運動不足のせいカナ ご馳走様 先に風呂入っていいかなー」と、消えて行った。


「どう? なんか 元気ないよねー どこか悪いんだろかー 美海 どう思う?」


「えぇー そんな風には見えないけどー 心配いらないよ あの年頃だと 色々不安定な時ってよくあることよ それに、この前の大会 うまくいかなかったんじゃぁない 自分から言わないものー」


 夕食後、洗い物を手伝って、お風呂に入った時、私は、あの毛の処理も丁寧にしていた。明日はコウのマンションに午前中に行くことになっていたから、きっと抱き合うに決まっているからと、甘えるんだと期待していたのだ。そして、部屋に戻ると直ぐに、碧が待っていたかのように顔を出して


「ミィ姉 入っていいか?」


「うん なによー いいけど 声ぐらい掛けなさいよ いきなり顔を出してサー」


「あぁー そうかー」と、入ってきたけど


「碧 なんなのー パンツだけでー 姉弟でも・・ なんなのーよ」


「でも 暑いから・・普段こんなもんだよー」と、コウもこんなこと言ってたなと、思い出していた。


「それで なにー?」


「あのさー 全国大会って、今年は、中止なんだよ だから予選も無いだろー」


「だから なによ しょうがないじゃない」


「だからー 予選会も無いってことは・・もう 会えないんだよー」


「・・・だからー もう 会うことも無いって言ってるじゃぁない」私は、少し、イライラしてきていた。明日の下着を選ぼうと思っていたから・・。


「あのさー 彼女の学校 行ってみようと思うんだけどー」


「えぇー ちょっと 待ってよー あんた 何言ってるわかってるのー それじゃー ストーカーじゃぁない 私は犯罪者の姉になるの嫌だからネ!」


「だよなー ・・・」


「碧の女の子を好きって気持ちもわかるわよ だけど、結ばれる運命だったら、又、どこかで会えるチャンスがきっと来るわよ それより灯ちゃんとは どうしたの?」


「あぁ 今でも、土曜の朝だけ走ってるよ」


「ふーん いいじゃぁない 灯ちゃん 贅沢よ あんな良い子と付き合わないなんて」


「どうも あいつは苦手だよ 合わない」


「ふーん そんなもんかねー だけど 絶対にもうその子の近くに無理やり行こうなんて思わないでよ 嫌われるよ 自然にやってくるチャンスを待つんだよ わかったぁー」


「うーん 辛いなぁー」


「しょうがないよ あんたが焦ったからよ チャンス無いんだったら、諦めろ 運命だよ グヂグチすんなよ 男らしくない そんな碧見てんのって 嫌だよ しっかりしろよ 私の弟だろー」 

 

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