私が好きになった人は・・だった そして、親友の女の子とも・・

すんのはじめ

第1章

1-1

 修学旅行2日目、京都では見学先がグループ毎に別れていたので、私達のグループはみさき紗英さえ紅紗あかさと私、舟留美海ふなどめみみの4人で、紫式部が源氏物語を書いたという大津の先にある石山寺を選んでいた。


 お寺を拝観したあと、帰りの電車で岬がせっかく来たのに琵琶湖を近くで見ようよと言い出して、浜大津の駅で途中下車しようとなった。私達のグループが京都から少し離れたところだったので、旅行社の添乗員の人も同行していて


「君達 集合時間に遅れるし 予定外の行動は困るよ」と、添乗員の一倉いちくらさんが


「いいじゃん 寄り道じゃぁないしー 途中下車だよー せっかくここまで来たのに、琵琶湖見せないなんておかしくない? ネッ 添乗員さん お願い チョットだけだよー」


「うーん しよーがないな 30分以内な でないと集合時間に遅れてしまうからな」


 私は、この人を最初に見たときは、何でもなかったんだけど、拝観するのに一緒に居てくれているうちに、感じのいい人と思えるようになっていた。


 私達は改札を出て、琵琶湖が見えて、歩道橋を走って降りたものだから、私、滑って踏み外してしまって・・「キャァー」っと、ずりおちそうになって、その時、添乗員さんが隣りで私を受け止めてくれた。だけど、スカートもめくれてしまって無様な恰好で・・。


「あっ ありがとうございます」


「いや 大丈夫かなー 走っちゃーあぶないよ」


「ごめんなさい 大丈夫と思うけど・・あのー 今ね 私のお尻ささえてくれたのって パンツの上から直接じゃあなかったの?」


「あっ ごめん ごめん いや咄嗟だったもんで」


 下に降りて、歩き出したら、右脚首が少し痛かった。さっき、少し捻ったみたいだ。それを見ていた岬が


「ミミ 大丈夫? 歩ける?」


「うーん ゆっくりならね 先に行ってー あとから行くから あそこに見えてるとこでしょ」


「ウン だけどね 肩貸すよー あー 添乗員さん お願い ミミのこと さっきも抱きかかえてくれたでしょ! 見たよ 親切だもんね」


「そう そう 助けてあげてよー」と、他のみんなも半分面白がってはやし立てていた。添乗員さんも最初は困ったようだったが、結局、私の腕を肩に回してくれたのだ。固い肩だった。それを見て、「じゃー 添乗員さん ミミのことお願いネ」と皆は先に行ってしまった。


「ごめんなさい 私 そそっかしいものだから・・」


「いや 僕も そんなこともあるよ それより、痛くないかい? 向こうについたら、足 見ようね 腫れてないか」


「そんなにひどくないと思うけど・・ あのさー・・さっき、ついでに見えちゃったよねー?」


「うー 何のことかなー?」


 とぼけてくれてるんならいいや と、私は、思ってそれ以上突っ込まなかったのだけど、絶対に見られてしまったのだ。就学旅行だからと、私は白地なんだけど、全体に薄いグリーンのクローバーの刺繍のしてあるものを、可愛いと思って選んでいた。


 琵琶湖が見渡せる小高い芝生の丘の上まで連れてきてもらって


「足 見せてみな」と、私を芝生に座らせた。私が、靴と靴下を脱いで見せると


「ふーん 腫れてはいないみたいだなー でも、一応湿布しておいた方がいいかなー あとで、買ってくるよ 集合したら、看護師さんがいるはずだから、また、見てもらおうネ」と、気を使ってくれたけど、続けて


「可愛いの穿いているんだな」と、私は、さっきの・・ショーツのことかと一瞬勘違いしたんだけど・・私の靴下を見ていたから・・私の思い違いなんだと顔が熱くなるのを感じていた。


「でしょ 私達のグループはお嬢様を気取ってるんだー だから、皆でー ねぇ 気付いた 自由行動で私達、髪の毛留めてないでしょ みんな髪の毛長いんだけど、裾のほうは軽くカールかけてんだー 本当は学校で禁止なんだけど、普段は後ろで留めて馬の尻尾にしてるからね」そして、私達は、普通のスクールソックスでなく、短い靴下で上の部分がレースの飾りが付いているもの、靴も先がまぁるくなって1本のベルト留めるストラップパンプスでお嬢様風に揃えていたのだ。


 私達の学校は関東の県立の女子高なんだけれど、優秀な子ばっかり集まる進学校で真面目な人ばっかり。そのせいか部活動は文科系はそこそこなんだけれど運動系は弱くてだめなんだ。その中で私達のグループはお嬢様ごっこの真似ごとで遊んでいた。


 皆は、「大きいネ」「わー 観光船も大きいよねー」と、私達の地元には海がないから、はしゃいでいたけど、私は、添乗員の一倉さんの横顔をしみじみと見ていた。よく見ると日焼けしていて、眉も濃く、割と良い男なんだと感じ始めていた。そして、戻ろうかってなって、私は、帰り道も一倉さんの肩辺りに掴まって歩いていた。筋肉が盛り上がった腕。すごく、逞しく思えていた。そして、途中で


「これっ さっき 見つけたんだ 四つ葉のクローバー あげるよ 可愛らしくて君に似合うよ」と、私に・・


「わっ ありがとう」と、言ったものの・・クローバー やっぱり、こいつ さっき見たんだと、又、勝手に顔を熱くしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る