美女が野獣
@chauchau
第1話
あるところに二つの国がありました。
ヒトが治める国と、ケモノが治める国は、長い長い年月を争い続けておりました。途方にもないほどの時が経過して、争いの原因が何だったのかもはや知るものがいなくなった今となっても、両国の関係は変わることはありませんでした。
終わらぬ戦争に少しずつ、ですが確実に両国の力はすり減っていく。そんな折に、ヒトの国からケモノの国へと一つの提案が投げかけられたのです。
――我が国の姫を妻として迎え入れてはくれまいか。
停戦を求める提案だけでも驚くべき内容でありましたが、なによりケモノの国を大いに混乱させたのは、書状とともに件の姫が送られてきたから。
最低限の護衛だけを連れて届けられた姫に、ケモノの国のものたちは敵国の姫ながらに同情を覚えます。もとより受け入れられないことが前提とされた提案の、どうあろうが殺されることが決定付けられた、戦いの理由付けとして捨てられた命。王族であることが本当であろうとも、彼女の地位は底辺に等しいのだと、皆が理解しておりました。
提案を断り、姫を丁重に国へ帰そうとも彼女は確実に殺されることでしょう。それをもって、戦い続ける兵士の士気をあげるために。だとすれば、このまま自分たちの手でせめて苦しまないように殺してやることことがせめてもの救いとなるだろうか。
ケモノの国の大臣たちが、飲み込みたくもない決定を下そうとしたのを止めたのは、彼らが王と仰ぐ青年の言葉だったのです。
大臣たちの会議をただ黙って聞き続けていた王が、たった一言申されました。
「姫を、我が妃とする」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます