第74話「敗北するアイドル~埼玉すぎる~」
「……
時間切れ間際で二三香が叫んだ!
まさかここで埼玉武将の名前が出てくるとは……。
解説すると、難波田憲重は戦国時代の武将で、
扇谷上杉家と
松山城主(埼玉県東松山市にある)なども務め『松山城風流合戦』なんかの逸話でも知られており、和歌も詠める知勇兼備の武将である。なお、河越城の戦いで古井戸に落ちて亡くなったと伝わっている。
世間的にはマイナーかもしれないが、埼玉の戦国時代には欠かせない武将だ。
難波田は『なばた』と読むとも言われる。
……というか、視聴者的にこれ通じるのか!?
あまりにも埼玉すぎないか!? 埼玉でも選ばれた埼玉県民しか知らないのでは?
「あとで解説テロップをつければいいでしょう~」
神寄さんは瞬時に判断していた。って、普通にしゃべっていいのか……。
しかし、地域密着すぎるだろう。テレ玉(埼玉のローカルテレビ局「テレビ埼玉」の略称)じゃあるまいし。というかテレ玉視聴者でも知ってる人限られそう。
「げ、げぇー!?」
そして、再び菜々美に順番が巡ってきたわけだが、これは難易度が高いかもしれない。少なくとも俺はすぐに埼玉的な『げ』を思い浮かばない。
「げ、げ、げー……」
頭を両手で抱えて考える菜々美。
これはピンチか!?
「五秒前~」
神寄さんがニコニコしながら秒読みに入る。
「げ、げー……」
菜々美は両手で頭を抱えたまま、顔を赤くする。
「……三、二、一」
迫るタイムリミット。
「元気いっぱい埼玉県民!」
菜々美は両手をバッと広げて万歳しながら立ち上がる!
「はい、菜々美ちゃん失格です~!」
――ドドーン!
謎の効果音が入り、菜々美の失格が盛大に告げられた。
「わーん! 埼玉愛が暴走しちゃったよぉー!」
というか、そもそもが無理やりすぎる。
地名でもなんでもない。
「……勝利……」
「あ、危なかったっ!」
瑠莉奈と二三香はホッと胸を撫でおろす。
苦しまぎれの難波田憲重だったが、見事に菜々美を打ち破った。戦国武将つよい。
「ううううう~……、難波田憲重のことは生涯忘れないー! おのれーー! 難波田憲重ぇえーーー!」
菜々美にとって難波田憲重が不倶戴天の敵みたいになっている。
ちなみに埼玉県富士見市には難波田城がある。こちらは難波田氏の元々の居城だ。
興味のある人は訪れてみるといいだろう。
「むぅう~……いきなり敗北だなんて、リーダーとして多難なスタートだよぉーー……無念なりーーー!」
本気で悔しがる菜々美。
埼玉愛が強い菜々美にとって、埼玉しりとりに敗れたことはアイデンティティにかかわることなのかもしれない。
ちょっと埼玉すぎたが、まあ、普通にしりとりをするよりは盛りあがった気がするからいいのか……?
ご当地アイドルとしては、それでいいのかもしれない。
ちょっと埼玉度が強すぎる気もするが……。
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