第73話「埼玉しりとり!?」

「さあ、次はしりとりのコーナーだよー!」


 いきなり、しりとり!

 どういう番組構成だ。


「菜々美ちゃんから始めるねー! じゃー、最初はー……「埼玉古墳さきたまこふん」!」


 しかも、さっそく『ん』がついてる!


「……菜々美ちゃんの負け……」

「終わっちゃいましたねっ……」

「しまったーー! 埼玉への愛が暴走してしまったーーー!」


 しかし、なぜ埼玉古墳。埼玉なら大丈夫だったのに。なぜ古墳をつけてしまったのか。ハニワの呪いなのか?


「このままじゃ終われないー! リベンジターイム!」


 ズビシッと天を指差して、菜々美は仕切り直した。


「今度は、埼玉ー!」


 埼玉からは離れられないらしい。


「あ、できるだけ埼玉ネタでしりとりしてねー! 地名とか人名とか! わたしたち埼玉出身アイドルだし! それじゃ、次は瑠莉奈ちゃんー! 『ま』だよ埼玉の『ま』ー!」


 アドリブで難易度とローカル度を上げる菜々美。

 無茶ぶりである。


「……松伏まつぶし……」


 そんな状況でも瑠莉奈は冷静に応えていた。

 ちなみに松伏は埼玉の町である。

 ローカルすぎる。これ、視聴者ついていけるのか?


 ともあれ次は、二三香。


「し……志木しきっ!」


 今度は埼玉の市である。これまたマイナーだが、東京に近いだけ知名度はあるか。

 再び菜々美。


騎西きさい!」


 さらにマイナーというかマニアックになった!

 かつて埼玉には騎西町という自治体があったのだ。

 上杉謙信に攻め落とされた騎西城があった。今は加須市と合併している。


「……伊奈いな……」


 再び瑠莉奈は埼玉の町を答える。これもマイナーだが、江戸時代に関東郡代を勤め利根川東遷事業など治水事業で活躍した伊奈忠次の陣屋があったことが町名由来だ。やっぱりマニアックな部類か。


 次は「な」。埼玉縛りとなると、これは難しいかもしれない。


「な、な……」


 二三香は焦ったようだ。


 というか、これはあとになればなるほど難易度が跳ね上がるしマイナーかつマニアックになっていく気がする。

 ある意味、埼玉愛と埼玉知識が試される。


「制限時間は十秒ねー!」


 菜々美から新たなルールが決められる。

 って、最初から決めておくべきことだと思うが。自由すぎる。


「な、な、な……」


 二三香、思い浮かばないか?


 『な』なら、岩畳で有名な長瀞ながとろとか飯能はんのう市にある名栗なぐり渓谷とかあるが、焦っていると浮かばないのかもしれない。


「秒読みはこちらでやります~。五秒前~」


 神寄さんが秒読みを開始する。


「……三、二、一」


 なぜか将棋の秒読みとまったく同じである。

 万事休すかと思われたが――。

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