第65話「東京生活に疲れたわたしには埼玉のお菓子で心と胃袋を癒す権利があるんだよ!」

「じゃ、次ー! ほかのアイディア大募集ーー!」


 菜々美は再び両手をグルグル回しながら、促す。


「じゃあ、あたしが! はいっ!」


 二三香が勢いよく挙手する。


「はい、二三香ちゃん! ズビシッ!」


 菜々美はさっきのように両手でズビシッと指差しながらで二三香を指差した。


 二三香はアイドルオタクでもあるから、いろいろな番組を見てきている。

 瑠莉奈よりも期待できそうだ。


「ズバリなにかなー!? 二三香ちゃんー!?」

「食レポとかどうかなって思いますっ!」


 食レポ!


 うん、まぁ……確かにタレントとかって食レポとか旅行とかの番組に出ていること多いよな。でも、それってロケが前提じゃないのか?


「それもグッドアイデア! であであー! 美味しいもの食べたいー!」


 菜々美はそれも絶賛していた!

 って、完全に個人的な欲求じゃないのか!


「いやでも、菜々美。動画配信は部屋から放送するんだろ? どうやって……」

「発想が貧困だよ、しゅーくん! 外に行けないのなら部屋で埼玉の食べ物を食べて紹介すればいいんだよー!」


 埼玉限定なのか。


「東京生活に疲れたわたしには埼玉のお菓子で心と胃袋を癒す権利があるんだよ! 心の故郷埼玉! ずっと埼玉に帰りたかったー! 埼玉! 埼玉ぁーーーーーー!」


 菜々美は荒ぶりながら埼玉への愛を叫ぶ。

 菜々美って、こんなに埼玉愛が強かったんだな……。


 まあ、ずっと東京のようなコンクリートジャングルにいたら心が渇くし埼玉に飢えるものなのかもしれない。俺ですら、ちょっと散策しただけで息苦しさを覚えたもんな……。東京は窮屈だ。


「あたしの友達に家で和菓子屋さんやっている子がいるから余ってるものないか頼んでみますっ!」

「わあ、素晴らしいよー! 持つべきものは埼玉の友達だねー! 賞味期限直前とか過ぎててもぜんぜんオッケーだからねーーー!」


 完全に菜々美の個人的な欲求を満たすための番組になっている気がする!

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