第64話「番組のネタ出し~しりとり!?~」

 ………………。

 …………。

 ……。


 ホテル内の高級寿司で決起集会という名の豪華な夕食をとった俺たちは、再び部屋へ戻ってきた。


「しゅーくん、みんなー! さっそくアイディアを出しをしようー! 番組でどんなコーナーをやるか決めようーーー!」


 菜々美は両手をグルグル回しながら俺たちに促す。


 ちなみになんで両手をグルグル回しているかの意味はわからない。テンションが上がっているときの菜々美の行動について考えるだけ無駄というものである。


「みんなー! どんどん意見言ってねー! なんでもいいからー!」


 菜々美の両手の回転がさらに早くなる。

 高速風車(あるいは観覧車)状態である。


「……それなら、まずは瑠莉奈から……」


 まずは瑠莉奈が挙手した。


「はい、瑠莉奈ちゃん! どんなアイディアー!?」


 菜々美は両腕の回転を止めてズビシッ! と両手で瑠莉奈を指差した。


 なんなんだ、この珍妙なポーズは。

 まぁ、いいか。気にしないようにしよう。考えるだけ徒労なんだから。


 ともあれ、瑠莉奈だ。

 どんなアイディアなのか兄としても気になる。


 みんなが注目する中――瑠莉奈は無表情のまま口を開く。


「……しりとり……」


 ……しりとり?


「しりとりって、あの普通のしりとりか?」


 思わず俺が訊き直してしまった。


「……おにぃ……それ以外になにがあるというの……?」


 瑠莉奈は不機嫌そうな表情で(といっても俺にしかわからないぐらいの変化なのだが)、俺を睨んでくる。


「い、いや、すまん」


 しかし、いくらなんでもしりとりっていうのは……。

 そう思う俺であったがて――。


「ナイスアイディア! ナイスアイディアだよ、瑠莉奈ちゃんーーー!」


 菜々美は絶賛していた。

 なんでだ!


「それなら面倒なことなにも考えなくていいし! 時間も消費できるしー! グッドアイデアだよー!」


 いいのか、それで。

 しりとりってシュールすぎだろ。


「……おにぃはもっと妹の意見を尊重すべき……というより妹の存在というのものを尊ぶべき……」


 瑠莉奈から圧力をかけられてしまう。


 この目で見られると、弱い。というか、けっこう怖い。

 クールというか割と目つき悪いからな、瑠莉奈。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る