第22話「愛の猛攻」

「……ほら、菜々美。俺の体を洗うんだろ? いいぞ、俺の腹と腕と脚をゴシゴシしても。いつでもウェルカムだ」

「むうう……なんかしゅーくん手ごわくなった気がするよう……」


 悟りを開いた俺に対して、菜々美はたじろぐ。

 初めて菜々美に対して主導権をとれたかもしれない。


「でも、菜々美ちゃん、負けないもん! 絶対にしゅーくんをわたしにメロメロにさせてみせるもーん!」


 決意と覚悟を新たにした菜々美はボディソープをシュコシュコしまくってタオルに大量に放出する。


「よーし! しゅーくんをアワアワにしてあげるからねー!」


 タオルを激しくこすって泡立てる菜々美。

 ……これは、俺も覚悟を決めないといけなさそうだな。


 今回の攻撃は悟りを開いた俺ですら耐えられるかわからない。

 これから襲ってくるであろう気持ちよさを想像して武者震いしてしまう。

 もってくれ、俺の理性。


「……いつでも不健全ポイントを加算する準備はできている……」


 瑠莉奈から向けられる視線もどんどん冷たくなっていく。

 妹から蔑まれながらアイドルからご奉仕されるという高度な羞恥プレイか……。


 思えば、俺の人生なにがなんだかよくわからないことになったな……。

 どうしてこうなった。


「いくよぉ、しゅーくん! 覚悟ぉ~!」


 菜々美はタオルを手に襲いかかってきた。

 まずは、首すじ。


「ひあああああああああ!」


 いきなりウィークポイント!


「次は胸とお腹! おへそもー!」

「うにゃあああああああああああ!」


 攻撃に迷いがない。

 菜々美の決意と覚悟のほどが感じられる。


 これでは毘盧遮那仏るしゃなぶつのようなポーカーフェイスを保てない。

 ちなみに奈良の東大寺にある大仏は毘盧遮那仏。鎌倉の高徳院にある大仏は阿弥陀如来あみだにょらい。テストに出るかもしれないので覚えておくといいだろう。


「……不健全ポイント1つ、2つ……」


 俺が仏像について思いを馳せているうちにも瑠莉奈から不健全ポイントをカウントされていってしまう。やはり悟りの境地に達しても、煩悩に打ち勝つのは難しい。


「しゅーくんっ! まだまだこれからだよっ! わたしのしゅーくんへの愛はこんなもんじゃないからねーーー!」


 完全にバーサーカーモードになった菜々美は、攻撃の手を緩めない。

 こんな極楽モードが続いたら往生してしまいそうだ。


「しゅーくん! 覚悟ぉーーー! ごしごしごしーーー!」

「いやああああああああああああーーー! もうやめてぇーー!」

「……不健全ポイント……3,4,5……ふぅ……もう数えることに疲れた……」


 浴室はカオスな状態になってしまった。

 高級ホテルでなにしてるんだろう、俺たち。

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