第11話「コスプレ懲罰房」
牢屋の中には菜々美がいたのだが……なぜか体操着姿だ。
しかも……あれは絶滅したと言われるブルマというやつか? 初めて見た。
「……な、菜々美……」
「――っ!? しゅ、しゅーくんっ!」
体操着ブルマ姿の菜々美は俺に気がつくと、鉄格子のところまできてガシッと両手で握り締める。
「神寄さん、これは……」
「はい、
ニコニコしながら訊ねられる。怖い。
「うわーん! しゅーくん、助けてぇー!」
やっぱり芸能界は怖いところだな。
まさか地下牢があるとは……。
「うふふ~。菜々美ちゃんがワガママばかり言うからいけないんですよぉ~? 今回のことで弊社がどれだけ損害をこうむったと思っているんですかぁ~? ふふ、ふふふふ~……ふふふふふ………」
語尾から「♪」が消失している。
恐ろしい笑いだ。身の毛がよだつとはこのことを言うのだろう。
「……芸能界は本当に恐ろしいところ……」
瑠莉奈も恐怖のあまり小刻みに震えている。
「でもっ! でもでもでもぉー! もうわたししゅーくんへの愛をこれ以上抑えられないんだよぉー! しゅーくん助けてぇー!」
菜々美は檻を両手で掴んで訴えかけてくる。
なんでこんなことになってしまったんだ。
「やはりここは、しゅーくんさんにマネージャーの仕事を受けてもらうしかないと思いますね~。わたしとしても菜々美ちゃんを懲罰房に叩きこむのは本意ではないんですよ~」
ニコニコした笑顔で言われても。
微妙に説得力がないが、このままでは菜々美は牢から出られないだろう。
「う~む……」
俺、悩む。
「しゅーくん! 助けてぇー!」
菜々美、叫ぶ。
「……おにぃ……どうするの?」
瑠莉奈、訊ねる。
「弊社と菜々美ちゃんとファンのためにもお願いします~」
神寄さん、頼みこんでくる。
判断は、俺にゆだねられた。
すべては俺次第。
…………ここは……まぁ……受けるべきなのかな。
それが一番周りにとっていいのではないだろうか。
ここで菜々美が無理やりアイドルをやめたら、事務所はとんでもない損害になる。
それに、こんな辞め方をしたらファンも納得しないだろう。
立つ鳥跡を濁しまくってるしな。
「しゅーくん、神寄さんの言うことは聞き流していいからね! わたしもう十分に稼いだんだから! これからは引退してしゅーくんとラブラブするだけの結婚生活を送るぅーーー!」
神寄さんの意見に傾きかけた俺だが、敏感にそれを察知した菜々美は断固阻止とばかりに声を上げた。
しかし、瞬時に神寄さんは視線を菜々美に向ける。
「菜々美ちゃん~……やっぱりちょっとお仕置きが足らないですかねぇ~?」
ニコニコしたまま眼光が鋭くなった。すごい怖い。
「ひぃい!? もうお仕置きはいやぁ!」
菜々美は檻を両手で掴んだまま体だけ勢いよく離れた。
器用な怯え方だ。
やはり芸能界は怖いところだな……。
これで無理やり辞めたら報復されそうなレベル。
ここは俺が犠牲になってでも、菜々美を助けるべきだろう。
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