第45話 ドライアドの強化先
正直仮テイムでの攻略は難しいので路線変更。
適当にマンドラゴラをテイムして下位モンスターを乱獲した後ダンジョンテイマーとしての本領を発揮だ。
今ままで稼ぎ優先でドライアドの先を見たことはなかったが、ドライアドを10匹魔封じの瓶に詰めて、11匹目の強化後テイムを解除、討伐してテイム対象に。それを9回繰り返して0/10にしてからいよいよ本番。
魔封じの瓶に詰めたドライアドを解放して即テイム、強化を選ぶ。
ドロップ品は勿論拾うが、強化後は全く違う見た目になるので驚いた。
Bランク*Ⅷのユグドラシルという巨木になった。
モンスターですらないのかよ!
内心で突っ込むが、これこそがダンジョンテイマーの力だと思えばこれほど心強いものもない。
ただこいつの面白い点は動かずとも枠内のモンスターを回復し続けるサポーターとなる。
能力の『世界樹の雫』はHP、MPの全回復。
『世界樹の葉』は消滅したテイムモンスターを蘇生するとんでも効果である。
動けないので階層は跨げないが、モンスターを補充する手間が省けるので最高だ。
移動の際は魔封じの瓶に入れて持ち出そうと思う。
ドロップ以外で美味しいと思ったモンスター(?)は初めてだった。
そして再度アント、コックローチ、センチピードをテイムして軍団を突撃させる。死んでもその場で生き返る様はまさにゾンビアタック!
「おい、これ……」
「ああ、ダンジョン活性の前触れかもな」
「ええい! キリがない!」
斃された内側から突撃&突撃!
仲間呼びで集めた中に一匹強化体を混ぜての進軍だ。
「おい、一匹毛色の違う奴がいるぞ!」
「フレアバーストで燃え尽きない、だと?」
「ランク外って事は亜種か?」
「上に連絡しろ! ここは俺たちだけじゃ持たない!」
「こんなの聞いてないぞ!」
「撤退だ、撤退!」
うまいこと引いてくれたのでそのまま進軍。
四階層は植物系モンスターの宝庫だった。
虫系モンスターとの相性はバッチリ。
相性はバッチリでも格上だから通用しないっていうのもアレなので一度解放してから再テイム。
実はダンジョンから出なくても【枠】を解消するだけで『種族強化/種族枠解放』は再度選び直せる。
これは盲点でもあり手間だと思ったのだが、こういう場所では役に立った。
今回は踏破目的ではないのでやり過ぎない様にしつつ、相手が勝手にダンジョンブレイクの前兆だと思ってくれるのは大きいな。
だがなぜそこに思い至るのか?
そう思える何かを奥でしてるってことかもな。
では、“命の雫”が目的ではない?
もしかして俺はとんでもないことに首を突っ込んでるのではないだろうか?
何はともあれ、このまま進軍するしかない。
俺の格好はコスプレとは言えサンタクロース。
プレゼントするのはモンスターぐらいしかないが、相手が恐怖を覚えてくれたらそれで良い。
その内変な噂が轟きそうだが、なぁに本人バレしなきゃ問題ない。
ガンガンいくぜ!
◇◆◇◆
その頃Dランクダンジョン深部では。
「何? ダンジョンブレイクの前兆が起きている?」
連絡を受け取ったウロボロスのマスター獅童朱音が眉を顰めた。
これを雇用主にどう伝えようか迷ったが、メンバーには各自対応せよと伝えた上で通話を切った。
「どうした、獅童君?」
「あ、いえ。うちの馬鹿どもがちょっと強いのが現れたくらいで連絡を入れてきまして。御堂総帥のお気にされることではありませんわ」
「ダンジョンブレイクと聞こえたが? 見張りの探索者が数名命を落としたことなんかは?」
「あり得ません。仮にも彼らはBランク。Dで遅れを取るのは怠慢からくる無駄打ちが原因でしょう」
「ならば問題はないな。ダンジョン内でブレイクが起きるのはあくまで探索者の死が原因。それ未満がいくら死のうとそうそう起こるまい」
「10年前の出来事をまだ……」
「君は聡いが、察しが良すぎるのはあまり良くないな。思っていても口にするものではない。どこに地雷が隠れているかわかったものではないのだぞ?」
御堂グループ総帥、御堂明はにこやかに。だが圧のかかった笑顔で答える。朱音は踏み込み過ぎたかと頭を下げた。
「も、申し訳ありません!」
「まぁ良い。人形作りに君たちは非常に役に立ってくれてるよ」
「恐縮です。総帥が我々の素行を見逃してくれてる賜物ですわ」
「あまりやり過ぎないことだ。今回は役に立ったが、これ以上は庇いきれないぞ?」
いつでも首を切るのは簡単だ。今回役に立とうと、足を引っ張るのであれば例外はないと氷の様に冷たい視線が朱音の肢体を貫いた。
「旦那様、お戯はそこまでにしておいてください」
「静香か。ちょっとした雑談だ。何かあったか?」
「来ます。数にして500。これはダンジョンブレイクと見て間違い無いでしょう」
「ほう、原因はなんだろう?」
たかだかDランクダンジョンのブレイク。
特Aクラスの御堂明や鏡堂静香の敵ではない。
が、それが姿を現した時あまりの異質さに声を出せずにいた。
「獅童君、ここはDランクだった筈だね?」
「はい、間違いなくDランクダンジョンですわ」
「歳のせいか幻覚が見えるらしい。私の目にはBランクモンスター亜種のベヒーモスが見えるのだが?」
「私の目にもそう見えますね」
Dランクダンジョンの最下層ボスでさえCランク亜種。
Bに至ることはまずない。
それが野良で出るなんてダンジョンが活性している以外の何者でもない。
「私が対処しますわ、旦那様」
「頼むぞ、静香。獅童君は人形の確保を。芹那、ゲートホールを開け。我々だけでも転送撤退するぞ。獅童君も撤退したまえ。静香の戦闘に巻き込まれると厄介だ」
「お気遣いありがとうございます」
「朱音さん、後は頼みますよ?」
「はい、叔母さま」
獅童芹那は朱音の叔母であり、御堂明の三番目の妻でもあった。
しかし契約によって結ばれた結婚は、人形としての運用以外の何者でもない。
極力縛った自由意志。わずかに残る記憶。
明に使われることが至上の喜びと思い込まされている。
「旦那様、ご用意が出来ました」
「宜しい。人形の運び込みは任せる」
「なり損ないはどう致されましょう?」
「いずれ来る厄災にはなんの足しにもならん命だ。どのみち長生きできぬのならここで捨てても問題あるまい」
明はあくまでも自分の手駒を増やす以外に用途の無い人間には興味がない。
ただでさえ才能覚醒者に掌を返し、石を投げた人類。
自分こそが世界を見据えて行動している尊い存在だ。
だから命をどう取り扱おうと勝手である。
そう思い込むことによって非道の道を歩んでいる。
更には扱う人形から自由意志さえ奪う懐の狭さを見せていた。
手駒に手駒以上の運用を認めない。
それは人間を人形扱いする異常性。
御堂明は自ら悪の道を進むことで人類を統括しようと試みた。
その結果は本人しかわからない。
「お供しますわ、御堂様」
「朱音さんですか、無理はしない様。私と違い、貴女には回数制限があるのですから」
【ドッペルゲンガー】鏡堂静香、【百烈鞭】獅童朱音が並び立つ。
見据える先に数を増やしつつあるベヒーモス。マンティコア、キマイラ。もうDランクダンジョンの脅威だと思わないほうがいい。
「この数を相手取るのは初めてです」
「でしょうね、学園ではボスクラス。それがこうも群れて現れる。これが地上に出たらと考えたらゾッとします」
口火を切ったのはモンスター側からだった。
『Merry’Christmas!!!』
ボイスチェンジャーで変えられた音声を皮切りにサンタルックの不審者が指揮を取る。その異形がこの群れのボスか。
二人は期節を前倒しして現れたあわてんぼうのサンタクロースを見据えて武器を構えた。
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