第17話 遊びは他所でやってくれ

 ダンジョンから帰ってきたら、新しいクラスメイトがいた件。

 新しく編入してきた人達かとカマをかけたら違うと即答された。

 そして何やら揉めたあと、突然自己紹介が始まった。


「あーしは犬飼真希、関西二年Aクラスの首席をやっとる。よろしゅう!」


 ちょっとヤンキーの入ったギャルが名乗る。

 なんで他校の生徒がここに?

 しかも二年生だ。トップなら何しても良いってのか?

 優遇制度ここに極まれりだな。

 そしてもう一人。


「知っているでしょうけど、わたくしは御堂凛華。貴方と同じ学年の首席をやらせてもらっています」


 知ってはいる。

 けど面識はない。

 とても上からくる相手というのは今の紹介で分かった。

 良くも悪くも長い付き合いをする相手ではないな。

 それで自己紹介できてるつもりなのかよ、と思わなくもない。


「犬飼さんに御堂さんですね。お噂は予々。俺はFクラス生の唯一の生き残り、六濃海斗と申します。六つのに、濃霧警報の、のうで六濃。才能がいつまで経っても覚醒しないもんだからみんなからはの方で呼ばれてるよ、よろしく」

「六濃君ね」

「でもアンタ、TPランキングじゃトップなんやろ?」

「何のことですか? たった一人しかいないFクラス生。ダンジョンだって一人きり。どうやって学年首席の御堂さんを追い抜けると?」


 この犬飼さん、どこで俺がランキングトップだって気がついたんだ?

 何にせよ、ここでシラを切ることにシフトする。


「わたくしもずっと不思議に思っていました。でも貴方は既に才能を開花させている。違いありませんね?」


 学年首席にバレてるのは分からんでもない。

 なんせ自分より上がいるんだからな。

 ただどうして、俺だってバレたのか? そこが謎である。


 他にもたくさんいるんじゃないの?

 それとも消去法で俺の所に来たか?

 どちらにせよ、バレてるなら開き直るしかない。

 そこから先は向こう次第。


「その件についてはここではお話しできません。その前に、俺の生徒手帳をご確認くだされば納得がいくと思います」

「またTP総額が増えています」

「やっぱりお前が犯人やったんか!」

「でも、おかしいです。才能の記載場所に何一つ書かれておりません。取得スキルもです!」

「ほんまや! やっぱりアンタは無能なんか?」

「それが俺の一番困っているところでもあります。ではダンジョンに移りましょう。そこで俺の才能をお見せします」


 二人を誘ってダンジョンへ。

 再び手帳を二人へ見せる。


「ダンジョンテイマー?」

「突然現れたぞ?」

「これが六濃君が学園から才能の覚醒がされてないと認定されてる理由なんですね?」


 御堂さんはようやく不信感を拭い去った様な顔をした。

 俺がキチンと才能の覚醒をしていたと知れたのが良かったのだろう。

 それだけを確認したかった様だ。

 しかしもう一人は違う。

 増えていくスキル欄に興味津々だ。

 スキルと言っても俺の書き込んだ考察とモンスターデータ。

 攻略法、etc、etc。


「ちょいちょいちょいちょい、凛華ちゃん、これを見てみい!」

「誰が凛華ちゃんですか。どれどれ、使役モンスターリスト? 嘘、Aクラスのブラックドラゴンまで?」

「中にも学園じゃ見たこともないモンスターまで多数いるわ。六濃君、これは一体?」

「それは俺が討伐してきたモンスターの一覧ですよ。一見して有能に見えるダンジョンテイマーですが、俺の血と涙、苦労の結晶です。誰かのために使おうなんては思いませんね」

「は? 使役可能するモンスターは一度討伐する必要があるんか? ちゅー事はこのブラックドラゴンも?」

「倒すのに一週間かかったけど、まあ。なんせ手持ちはDやCばかり。犬飼さんは二年生の首席と聞きます。五階層のボスはどのランクのモンスターが出ました?」

「あーしの時か? ウチは6人パーティやったから、それでもBランクのキマイラやったな」

「なるほど、パーティなら出現ボスのランクが下がるんですね?」


 良いこと聞いた。

 むしろソロの方がランクが上がるのか。

 じゃあ別のダンジョンに潜る際はソロの方が出現モンスターが出る可能性が出る場合があるのか?


「六濃君、その言い振りだと踏破したと聞こえるのだけど、もしかしてブラックドラゴンは初回到達時のボスだったりする?」


 御堂さんには見透かされてるか。

 なら本当のことを語ろう。


「そうですね、かれこれ25回くらいは。俺の後にクリアする方には申し訳ないですが、討伐してもゴミみたいな報酬とドロップですよ。クリアしすぎてCランクにまで下がってしまいました。なので、今の俺の稼ぎ場所は五階層ではなく、四階層になります」

「アッハ! アンタやばいなー。才能を聞いた時に強いかどうかは微妙やと思っとったのに、ソロでの踏破回数が常識を逸しとるわ! Fで5000万行くだけあるな!」

「能力は何事も使いようですよ? ですよね、御堂さん」

「え、ええ……」


 御堂さんの額から汗がたらりと流れる。

 おや? 学年首席というからてっきり踏破くらいはしてると思って話しかけてるのに実は違ったか?


「あれー? 凛華ちゃんまだ五階層踏破しとらんかったんじゃ?」

「ちょ、真希さん。それは言わない約束です!」

「にゃはは、凛華ちゃんは嘘がつけへん性格やなー」

「だいたい、一年生の二学期で踏破してるのがおかしいんです!」

「いや、踏破したのは一年の一学期だよ。俺の能力はパーティプレイに向かないからね。クラスメイトを全員上のクラスに追い上げて、それからだよ」

「つまり、貴方がダンジョンに潜るために自分以外のクラスメイトを上位クラスに押し上げて居た? それは何の為に?」

「──俺はなるべくなら早く大金を稼がなくてはならない」

「何故ですか?」

「妹の治療費を稼ぐ為だ」

「そう、妹さんがいるの。でもそれだったらみんなに協力して貰ったらもっと早く貯まるのではないですか?

「その金額が一億と莫大でも?」

「……一億!? 治療費が、ですか?」

「待って、凛華ちゃん。あーしその病名に心当たりあるかも。もしかして六濃君の妹さんの病名って?」

「“魔石病”。担当医からは持ってあと二年だと言われてる。俺が焦ってる理由はお分かりいただけたかな? 俺にとって妹は唯一の肉親。幼い頃に両親を亡くした俺たちは、親戚の家を転々としてきた。その時に妹は魔石病にかかり、お金がないからと病院にモルモット同然にベッドに繋がれている」

「「…………」」


 さっきまで言い淀んでいた御堂さんに犬飼さん。

 俺の最優先順位は変わらない。

 妹の病からの解放。

 その為の手伝いを誰かに任せるつもりはなかった。


「だから御堂さんや犬飼さんには悪いけど、俺は君たちと遊んでいる暇はないんだ。成績順の優劣差なんかに構っている暇はないから、そういうのはよそでやってくれないかな?」


 それだけ言って、俺は二人を置いてダンジョンを出た。

 その場に残された二人は、すぐに俺に向けてなんか吠えていたが、無視するに限る。

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