春の音

遠藤 円

第1話始まりの季節

 四月五日

 

 

 私はいつもの日常がどれ程大切か今分かった。

 

 今日は出なくては行けない用事があったが……とても行く気にはなれなかった。

 

 全ての事がどうでも良く感じてしまった。

 

 鳴り止まない携帯がとても煩わしく感じてしまい、川に投げ捨てしまった。

 

「桜の咲く春が嫌いになりそうだよ……」

 

 この日から私は今迄一番好きだったものが、見たくもない程嫌いになった。


 

 ***

 

 

 四月四日

 

 

 もう絶対に顔を合わせる事が無いと思っていた、メンバーが集まっていた。

 今日呼び出された時から嫌な感じはしていた。

 

「皆集まってくれてありがとう」

 

 彼女からの連絡で、来ない奴はこの中には誰一人として居ないだろう。

 

「今日連絡したのは……今日だったら絶対皆が来てくれると思ったから」

 

 去年から四月四日の予定はもう決まっている。

 俺以外の他の皆もそうだろう。

 

「私と一緒にバンドして下さい」

 

 頭が真っ白になった。

 何を言っているんだと思ったが、考えるよりも先に言葉が出てしまった。

 

「バンドしよう」

 

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