使いの者
子供の頃に見た光景をまだ覚えている。
愛し合う男女。
憎くて憎くてたまらない。
可哀想なのは私? いいえ、あなた達の方よ!
彼女はその二人を呪った。
自分にはない幸せを噛み締める二人が許せなくて。
それはまさに嫉妬だ。
関係ない者を巻き込んで、自分の良いようにはできないのにそうして――。
四苦八苦してかわいそうに――とその人は言った。
いや、その人は人ではない。
仙女だ。
仙薬を飲んで仙女になったわけではないと言うが、その人は自分にとって近しい存在だった。
嘘を言ってはいないのに、その出所を疑われてしまうとは。
哀れなり……で済まされる話ではないのだ。
時、同じくして、旭の内密なお願いを手に持った紅運は旭の前に先帝に仕えていた元宦官である
彼は四十代くらいで細身であり、威厳の為か杖を手に持ち、家の前に一人立っていた。
「これはこれは、紅運殿」
「お久しぶりでございます、構堂様」
彼らは知り合いだった。
旭を今のような宦官にしたのは構堂であり、その時の権力を使い、いろいろな事を当時はしていた。
もちろん、永華の事も知っており、今の皇帝が小さかった時の事さえ知っているし、その母親達の事も知っている。
彼に聞けば一通りの事が解った。
その彼に紅運は手に持っていた物を渡す。
そしてまた後宮へと戻って行った。
いよいよか……と構堂は思う。
嘘は誰も言っていない、ただ事実が伝わってないだけ。
未だ本人はその相手を見つけたと言われない。望まれていないのは明らかだが、そろそろ永華様の嫁候補を探してほしいか……、それは難しい話だ。
あの永華様はご自分で見つける気満々なのに、そうなったのも皇太后様が関わっているからか。
少しでも自分の子の血を残したい! というのがない。
今あるのはその血を絶やしてはいけない! というのだけだろう。
それにしても紅運は大きく、立派になった。
それと繋がりがあるのでは? と疑われてもおかしくないほど、赤い物を常々身に付けているのに何も言われないのか。
まあ、自分も冴えないこの顔でそうなのだから一緒か。
私の代わりにあの旭が育てただけあって、何とも真面目に育った。
「なあ? そう思わないかい?」
誰に言うのか、彼の背後にはその家があるだけだ。
だが、その中は――ずっと探し求める者達へ送る多くの倒流香炉が眠っている。
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