流火の件の裏で
皇后の決意
それはとても簡単なことだった。
皇后としての価値を失くさせる。それしかあの人を振り向かせることはできないのだから。
それで命を奪われても、その後に来る代わりはいないだろう。
そのくらいの覚悟で私はやってみせる。
彼の寵愛などいらないと、それで一族が路頭に迷うことなく終わらせられるなら、私は本望だ。
誰かが置いて行った
そうして、彼の深淵という闇に根付く。
それでこそ、私という『
だから、お願いだから、私の邪魔をしないでちょうだい! ――きっと睨んだ先には彼の異母弟である永華が宦官に扮してその後宮の中に居た。
目障りな彼は嫌そうな内心を隠してこちらの意図を知りもしないで立っている。
きっと彼が皇后の後を仕方なく継ぐのだろう。
侍女が言っていた。
この後宮の悪を一掃することが今の陛下のお心だと。ならば、自分がそれになるのだろう。
こんなにもあからさまにしているのに誰もそれに気付こうとしない、止めようとしてくれたって良いのに。誰も見てくれない、見てくれそうな彼はそっぽを向きそうで向けずにこちらを一心に見て、こちらが折れるのを待っている。
いつもそうだ、誰も私の真意など解ろうとしない。
ああ、誰か助けて! と言っても、その手を掴んで引っ張り上げる者は現れない。
のうのうと宦官達は貪り続けている、彼に隠れて。
私は
宦官に扮した彼はそのうち、それを聞くことになるのだろう。
私が犯した過ちを。
女は裏切らないと誰が決めたのか。
私は悠々とその時を待てば良い。
さあ、今か今かと――楽しめば良い。
そして、一人寂しく、ここから出て行く。
それでこそ、私が望んだ自由だ。
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