偽装スキルで異世界最強?!【ステータス詐欺から始まる異世界無双 〜ハズレだと思っていた偽装スキルは、実はとんでもない壊れスキルでした〜】
千の風
第一部 パーティー結成編
プロローグ 怪しい都市伝説
怪しい都市伝説
知らないゲームアプリを開くと人間が消える。
そんな都市伝説を聞いたのは一週間ほど前のことだった。
暇つぶしに調べてみると、怪奇現象のサイトでは結構有名になっていた。ゲームの名前は『勇者募集中!』というらしい。
アホらしい。
アプリを開いた人間が消えてしまうなら、その報告をしたのは誰だ?
つまり、体験しても消えなかった人間が絶対にいるはずだ。
みんなが消えてしまえば、最初からウワサになることもない。それこそが、これがガセネタだっていう証拠だろう。
「うわっ、これ……」
突然、隣を歩いている委員長の足が止まった。
ゴム底の上履きがキュッと音を立てる。
同時に白いシャツの下で窮屈そうにしている胸が揺れた。
ウワサだとDカップはあるらしい。女子はどうしてこんなに重たい物をつけて平気で歩けるんだろう。
「ちょっと。いま、私の胸、見てたでしょう」
委員長は腕でサッと胸を隠した。手には携帯電話を持っている。
「ば、ばか。違うよ。そんなわけあるか」
「ふぅん、どうでしょうね……。でもまあ、いいわ。それよりこれ見て。ほら、これ。例のヤツじゃない」
委員長は俺に突き出すようにして、スマホの画面を見せた。
『勇者募集中!』確かにそう表示されている。
「どうせ誰かのイタズラだろう。グラフィックも雑だし、こんなのプログラムに詳しい奴なら誰でも作れるぜ」
「でも、佐野クン。それならむしろ確かめてみるべきじゃない。都市伝説の正体をネットに書きこんでやるのよ。私たち以外にもこのアプリを見ている人がいるはずよ。他人を怖がらせて喜ぶ連中なんて最低だわ」
クラス委員長……山口詩織は、クラスでもナンバーワンの美人だった。成績優秀でスポーツ万能。真面目でオマケに正義感が強い。
俺は副委員長として彼女を補佐する立場だった。まあ、簡単に言えば雑用係だ。
今も文化祭の準備で教室を移動している途中だった。夕方に近いせいか、廊下に他の生徒の姿はない。
その時、俺のポケットから音がした。
「佐野クン、ほら。私と同じかもよ。確かめてみて」
「まさか、続けてとかあるワケないだろう」
俺は自分のスマホを見た瞬間、ビクッとして落としそうになった。
『勇者募集中!』。委員長と全く同じ画面だ。
タイトルの横には、剣を持った勇者のイラストが表示されていた。動画ではなく静止画だ。その下に説明文がある。
『我々は最強の勇者を求めています。凶悪な敵を倒し、あなたの手で世界を救っていただけませんか。こちらの世界に来ていただければ、十分な報酬と最高の名誉をお約束します。資格審査に進む方は、ここをタップしてください』
「なお、これはゲームではありません……か」
「タップして次を見てみよう。佐野クンもいいよね」
「ちょっと待てよ。変なウィルスとかに感染したらどうするんだ」
「まさか怖いの? ウィルスを仕込むなら、もっと怪しくないようにするわよ。別のサイトに誘導されたら、そこで電源を切ればいいわ。まあどうせ、びっくり箱みたいに驚かせて終わりだと思うけど……」
「わかったよ」
気は進まなかったが、臆病者だと思われるのもシャクだ。
「じゃあ同時に行くわよ。3、2、1、ゼロ!」
タップと同時に画面が切り替わり、何種類かの数字が表示された。
「なんだこれ……『【異世界の戦士】、レベル1。体力1523、攻撃力1993、魔力2633。最大レベル9999』
もしかして、壊れてるんじゃないか。これならレベル上げなんかしなくても、最初からゲームをクリアできるぜ」
「えっと、私は体力350、攻撃力253、魔力522か。佐野クンと比べたら、大人と子どもみたいだけど。総合ランキング2位だから、これでもまあまあなのかな」
「そうすると俺がランキング1位ってことか」
よく見ると、右下に小さく総合ランキングが表示されている。5位まで記載されているが、3位からはヒトケタ以上違う。
俺のステータスは、まさしく『ぶっち切り』だ。
「それはそれで悪い気はしないけど。どうせ全員、1位か2位なんでしょう。抽選に当選しましたってのと同じよ。とりあえず合格だから次に進めるらしいわよ」
「でもレベル1か……何度かやり直したら、レベル100とか出るかな?」
「それだけあれば、もう十分でしょ。それにほら、次の指示が出た。
読むわよ。『おめでとうございます。あなたは勇者候補生として認められました。召喚に応じていただける場合は表示されたボタンをタップしてください。さあ、今こそ選択の時です。巨万の富と栄光の未来があなたを待っています』……だってさ」
今の内容は、もちろん俺の携帯にもそのまま表示されている。
動画なし、効果音なし。手作り感満載のアプリだ。ここまで来ればもう、イタズラで確定だろう。
でもいつの間にか、俺は自分の意思でこの先を知りたくなっていた。
ステータス画面を見たせいかもしれない。委員長が2位で俺が1位。どんな場面だって、俺みたいなモブキャラがヒロインに勝つのは気持ちがいい。
「どうする。ここでやめる?」
「まさか。ここまで来たら、ゲームが始まるまでは進めようぜ」
「へえ……やる気になったんだ。もちろん私も付き合うわ。総合ランキング1位の佐野クン、頼りにしてるわよ」
「ああ、任せとけ」
【召喚に応じる】or【冒険をあきらめる】
目の前に、ふたつのボタンが表示されている。
「ゲームスタートだ。このヘボアプリ、頼むから少しくらいは楽しませてくれよ」
そして意気揚々と【召喚に応じる】をタップした瞬間。
スマホの小さな画面だけでなく、全ての世界がブラックアウトした。
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