奴隷解放会議③

 「安心してください父上。まずはこちらの装置を見てください。お願いミリア。」

 

 ミリアがにとある装置を持ってこさせる。


 「皆さんこちらの装置は2つで一組となっています。まず、こちらの装置にあるボタンを押してみてください。押すともう片方の装置のボタンのようになっている部分が下に落ちることボタンが押されたことを知ることが出来ます。」

 「しかしこれがなんだというのだね?ボタンを押されているのが分かったところで何ともならないだろう?」

 

 商人の一人が疑問を投げかけてきた。


 まぁ有線電信の知識がなければ疑問に思うのも当然だろう。


「このボタンの押し方を長押しと一瞬押したもので区別し、その組み合わせに応じて文字を割り当て文章とすることが出来ます。それにこの装置はどれだけ離れていても瞬時にボタンを押しているか知ることが出来る。つまりこの装置で瞬時に情報のやり取りができるのです。」

 「「おお」」

 

 商人たちのどよめきが起こる。商人にとって情報は命だ。もし何かを買ってもそれを別の町に持っていき売ったとしても、その街で商品の価値が低かったら損をすることになってしまうからな。


 「しかし、この装置を使うためには二つの装置の間をこの電線と呼ばれる金属の糸で結ぶ必要があり、その工事費用は我が家では残念ながら捻出不可能だ。そこでカブ商会にこの技術を売り代わりにやってもらおうと思う。そうすれば工事によって大量雇用が生まれ奴隷の雇用問題も解決するでしょう。カブ商会のカブさん、よろしいですか?」


 

 カブ商会は昔からある王都を拠点とする大きな商会で近年は衰退の傾向にあった。ちなみに代々商会長はカブを名乗っており今のカブさんは15代目である。今回の会議に関係はないが重要な話があると言って強引に頼み込んできてもらったのである。


 衰退気味とはいえその保有資産はすさまじい。とはいえ...


 「無理だ。さすがにこれだけの工事費用を負担するのはうちだけじゃ無理だよ。」

 「やはりそうですか。では今ここにいる他の商会と共同でやるのはどうですか?ここにいる商会に資金のみを提供してもらうのです。勿論その分、完成した後の利益の一部を資金を提供してくれた商会に対して支払うという形にはなりますが。」

 「それならいいだろう。」

 「ほかの商会の方々でこれに賛成してくれる方はいますか?いるならば挙手をお願いします。」


 すると資金に余裕のある商会のほとんどが手を挙げた。まあ少ない資金、少ないリスクで長期的に収益を得られるのだ。ほとんどの商会はこれに協力するだろう。


 「では最後に奴隷解放に反対の人がいたら挙手を。」


 当然誰の手も上がらない。


 こうして奴隷解放は達成された。


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一応補足説明ですが

・磁石を探していたのは有線電信のため。

・「異世界のルーズベルト」というのはケインズが考え出した国の裕福さは総生産に依存するみたいな感じの理論を取り入れてニューディール政策を行ったのがルーズベルトのため。

・磁石と同じタイミングで言ってた「加工が出来なくてごみ扱いされている宝石」はダイヤモンドのことで「ダイヤモンドはダイヤモンドでしか加工不可、この方法が見つかるまでは安かった。」みたいな話を聞いたことがあったので登場させようか悩みましたが、今後の展開に悪影響が出そうだったのでお蔵入りさせました。

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