第431話

 二十階層のボス部屋の前で一夜を明かしたアルたちは、早朝から二十階層のボス戦に挑戦しようと門を潜って行った。


 ボス部屋の環境は十一階層から二十階層までと違いはなく、膝下まで水に浸かるマングローブの森だが、そんなマングローブの森の真ん中に何もない無人の広場があり、その広場に巨大なボスモンスターを召喚する為の魔法陣が現れる。


 その巨大な魔法陣から召喚されたのは大殻ヤドカリを巨大化させた大きなヤドカリだ。


 背負う貝殻にはフジツボの様な突起が幾つもあり、貝殻を天に向けて立たせ、威嚇の為かハサミをカチカチと鳴らしてアルたちに威圧を掛ける。


 だが、そんな巨大なヤドカリのモンスターに向かってアルたちは攻撃を仕掛けた。


 「全員、放てぇ!!!」


 召喚される前から事前に準備をしていたアルたちの攻撃が、巨大なヤドカリに命中する。


 アルとラティアの魔闘気の斬撃が飛び、ユキが暴風を纏う魔闘気弾を放ち、シェーレのハサミから繰り出された斬撃波が飛んで、サフィの圧縮して更に収束させた水砲が放たれ、カナリの極太の雷撃が降り注ぎ、クウの熱閃が巨大なヤドカリに直撃した。


 しかし、巨大なヤドカリに直撃する瞬間に巨大なヤドカリは自身が背負う巨大な貝殻に籠ってしまう。


 膨大な魔闘気を纏った巨大な貝殻に隠れた巨大なヤドカリの本体には直撃しなかったが、背負っていた巨大な貝殻の表面に大きなヒビが入っていく。


 そして、その巨大な貝殻のヒビはどんどん大きくなって行き、ヤドカリの本体が姿を見せる前に巨大な貝殻は割れてしまう。


 「なっ!?」


 そうして巨大なヤドカリの本体が現れると思っていたら、破壊した巨大な貝殻から一回り小さな貝殻が現れた。


 一体どう言う事なのかとアルは鑑定系魔法を複数同時に思考を加速させながら発動して調べていく。


 そして分かった事はこのモンスターは城砦ヤドカリという名前のモンスターだそうで、背負っていた貝殻は噴出大貝というモンスターの殻で殻が大きくなればなるほど内側の殻の方が硬くなるという性質があるそうだ。


 その為、一番外側の殻は内部の殻よりも柔らかくて、アルたちの一斉攻撃で破壊されたのだろう。


 内部の硬い貝殻から顔を出した城砦ヤドカリはアルたちの元へと動き出した。


 一歩一歩動く度に振動が発生するなか、アルたちも動き出す。


 上空を飛んで移動する事が可能なユキ、サフィ、ラティア、クウは上空から城砦ヤドカリに攻撃をする様に指示を出し、残りのアルたちは城砦ヤドカリを迎え撃つ。


 「城砦ヤドカリをシェーレが抑えるんだ!」


 『分かりました。』


 「シェーレが抑えている間に、俺とカナリで城砦ヤドカリの足を壊して回るぞ。」


 『了解だメー!』


 「じゃあ行くぞ!!」


 纏っている魔闘気の密度を上げると、アルとシェーレにカナリは迫る城砦ヤドカリへと向かって移動を開始した。


 上空からの攻撃を器用に背負っている貝殻を動かして防ぐ為に動きを止めた城砦ヤドカリへと、アルたちは向かって行く。


 それに城砦ヤドカリももちろん気が付いており、シェーレを威嚇しながら大殻ヤドカリの様に水魔法を発動して来た。


 口元や開いたハサミから放たれる水の砲弾を、シェーレは分厚いハサミに魔闘気を集中させ盾の代わりにする事で防ぎ、城砦ヤドカリとの距離を詰めていく。


 そんなシェーレの背後で守られながら移動していたアルとカナリは、ここでシェーレの背後から出て城砦ヤドカリへと向かって走り出した。


 膝下まである水を蹴り上げながら激しく水音を立てて移動するアルとカナリは目立っており、そんなアルとカナリにも城砦ヤドカリからの攻撃は行なわれる。


 一発のサイズが二メートルを超える水の砲弾に対して、アルは魔闘気の斬撃を飛ばして切り裂き両断して対処し、カナリは雷撃を放って水の砲弾を蒸発させ水蒸気爆発を起こして破壊した。

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