第300話

 スモールミニベビードラゴンのクウと召喚契約をしてから五日が過ぎ、クウは経った五日で魔力と闘気を共に纏うことが出来るようになっていた。


 幾らドラゴン系モンスターと言ってもここまで技術の取得が出来るとは思わず驚いたが、クウもかなり頑張ったのだろう。


 そしてここからは、クウの成長の為にもモンスターと戦って貰う必要がある。その為、アルたちは今ダンジョンに来ていた。


 この冒険者育成校の敷地にある下級ダンジョンの一階層なら、今のクウでも戦えるだろう。


 「こっちだな。クウ、モンスターと遭遇したら好きに戦って良いからな。」


 『うん!でもわたし、かてるかな?』


 『クウなら問題ないのです!!自信を持つのです!!』


 『そうですね。クウなら倒せますよ。』


 不安そうにしていたクウにユキやシェーレだけじゃなく、他の三匹もクウに自信を持つように言う。


 「みんなが言うようにクウなら勝てるよ。ここのモンスターは弱いからね。もしクウが苦戦しても助けるから大丈夫だよ。もうそろそろ見えて来るぞ。」


 『あれとたたかうの?』


 「そうだ。あれはオオネズミだな。」


 『よわいね!あれならわたしでもたおせるよ!!いってくるね!』


 そう言って、パタパタと羽ばたいているクウは発見したオオネズミへと向かって飛んで行く。


 そんなクウを見て逃げずに敵意を抜き出しにしてオオネズミはクウへと向かって飛び掛かる。


 『くらえーー!!!』


 ボワッと口から範囲が小さい火のブレスをオオネズミに向かってクウは放つと、飛び掛かり空中にいるオオネズミは避けることも出来ずに火のブレスを受けて黒焦げへと変わっていく。


 『やったー!たおせたよ!』


 尻尾をブンブンと犬のように振りながらクウはアルたちの元へと戻って来るくる。


 「よくやったぞ、クウ。」


 『えへへへ。わたしすごかった?』


 「一撃で倒せたからな。凄かったぞ。でも油断は禁物だぞ。格下でも油断して負けることはあるんだからな。」


 『うん!わかった!!』


 アルがクウを褒め終わり、ユキたちもクウを褒めながら進んだ先で再度オオネズミと遭遇する。


 「クウ、今度はオオネズミからの攻撃を三回避けてからオオネズミを倒すんだ。出来るか?」


 『うん、できるよ!いってくるね!』


 そうしてクウはオオネズミへと向かう。


 そして、アルの言った通りにオオネズミが行なう攻撃を楽しそうに三回避けると、クウは闘気を纏う尻尾を振るう。


 魔力や闘気で身体強化を行なえていないオオネズミでは、クウの一撃に少しも耐えられずに吹き飛ばされてダンジョンの壁に衝突すると、そのままオオネズミは動かなくなり灰へと変わる。


 それからもアルたちはダンジョンを探索しモンスターを倒して階層を進めて行く。


 やはり纏いまでの身体強化を行なえるクウの敵ではなく、一階層から十階層までのモンスターでは簡単に倒せている。


 そして、順番待ちしている冒険者育成校の生徒たちの列が少なくなるのを待ち、ようやくアルたちの番になった。


 だが、十階層のボスモンスターでもクウの相手にはならず、一撃でボス部屋のモンスターを倒してしまう。


 そのままアルたちはクウに遭遇するモンスターと戦闘をして貰うが、クウは一度に遭遇するモンスターの数が多くなると回避に必死になり始めた。


 ここまで一度も休むことなくダンジョンを進んでいるのもあるが、一度の攻撃にしようする魔力や闘気の使用量にも問題があるからだろう。


 戦闘でのペース配分を間違えたクウだったが、それでも二十階層のボス部屋の前まで無傷でたどり着くと、この日最後の戦いが始まった。


 ボスモンスターのビックプラントからの絶え間ない攻撃を、クウはヒラリヒラリと躱して爪や牙で蔦を引き裂き噛み砕く。


 そして、ビックプラントの咲き誇る大きな花にたどり着くと、クウはその花の真ん中に火のブレスを放ち、これが決め手になりクウがビックプラントに勝利するのだった。

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