第107話

 アルは放出までの身体強化は使わずに向かってくる相手選手にアルからも向かう


 「やあっ!はっ!せい!」


 相手選手が振り抜いた剣を受け流していく。そうして連続で振る剣を受け流して相手選手の動きを見ていく


 (放出まで出来ても今の俺よりも身体強化は出来ていないみたいだな。それに剣技も俺よりも技量が低いし、こっちからも攻撃していくか)


 受け流していた剣の攻撃を弾きこちらからも攻撃を仕掛けていく。相手選手はこちらの振る剣を同じように受け流そうとするが、受け流せずに攻撃を剣で防ぐしか出来ていない


 そのまま攻撃していても勝てると思うが、使っている剣が痛みそうだったので、アルは戦闘方法を変える


 先ほどまでの間合いを更に詰めて振るう剣を小さく早く振っていく。それに慌てたのか相手選手の動きの繊細さが悪くなり始める


 剣で防いだり回避が間に合わなくなってきた相手選手に、更に詰めより剣を弾くと剣を持っていた手首を掴んで捻りあげ、剣を落とさせると相手選手を地面に押し倒して剣を突き付ける


 「……参りました」


 「勝者一年一組アル!」


 相手選手に突き付けた剣を鞘に戻すと未だに倒れている相手選手に手を差し伸べる


 「ありがとう。私もまだまだですね」


 「いや、それなりに強かったよ」


 「それなりですか……それは悔しいですね。次は私も貴方の本気を少しは引き出して戦えるくらいに強くなります」


 負けたのに瞳に宿る闘志には陰りがない真っ直ぐな闘志をアルに向ける


 そうして試合会場から出たアルは、午前の試合相手とは違い午後の試合相手の一年二組のソフィの名前を覚える程度には少しは戦いを楽しめた


 そして午後に行なわれる他の試合の見学に向かった。クラスメイトたちの試合を見ることが出来たが、今の所の試合では闘気や魔力を放出までは使って戦っているが、纏いまで身体強化を使えるかで、明日以降にあるクラスメイトたちとの戦い方も変えた方が良さそうだ


 すべての試合が終わり生徒会室に向かい、生徒会の仕事をしていると、今日の試合に関して生徒会メンバーから感想を聞いた


 戦闘事態は良かった様だが、ソフィを押し倒して降参させたのはからかわれてしまった



 

 翌日になり、午前の第三試合が行なわれる。試合相手は一年二組の生徒で、更に武闘術の授業でも戦ったことがあるヤムンが相手だ


 「武闘術の授業ではお前に負けたが闘気もあれば放出も出来ないお前に俺が負けるわけが無い!」


 いきなり試合の舞台に上がったアルを睨み付けながら、ヤムンはアルに向かい怒鳴り声をあげる


 (これから試合なのに怒鳴って言うことなのか?それになんでこいつはこんなに興奮しているんだ?)


 そう思っていると次にヤムンが言った言葉で何となくわかった


 「俺のソフィを押し倒しやがって!」


 どうやらこのヤムンと前日の午後に戦った相手選手のソフィは恋人同士か好きな相手なのだろう


 でもやはりそんなことをこの様な場所で大声で言っているヤムンはおかしい人だろう


 そしてそんなことを言っているヤムンは、審判に注意されたが怒気をアルに向けて、その身体から闘気が溢れ出して放出している


 闘気の放出を見る限りヤムンは、そこそこの身体強化が出来ているのはわかったが、満たしている魔力の圧縮率を上げれば放出までしなくても勝てる程度の相手だろうことがわかる


 「両者、準備はいいですか?」


 「大丈夫です」


 「大丈夫だから早くしろ!」


 準備が出来たか審判が聞いてくると、アルは普通に答えるがヤムンは高圧的な物言いで審判に言う


 よく冒険者で纏いくらいの身体強化を使えそうな、相手にそんな物言いが出来るなと思っていると審判はヤムンに対してイラついたのか顔を顰めている


 「はぁ……試合を開始する!」


 「うおおぉぉおおお!!!!!!!」


 試合開始と共にヤムンは更に身体からより多くの闘気を放出してアルに向かい突撃してくる




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る