異世界で庭師となったダンジョンマスター~ライバル業者にパワハラを受けたので創造してぶっちぎる~

すー

第1話:庭師と転生


「やめてくれ!!」


 屈強な男たちによって芝が踏みつぶされ、木は掘り返されていく。


「爺さんと造った庭が……どうしてこんな……」


 派手さはないが丁寧に造られた美しい庭が破壊されていく様子を、俺は見せつけられていた。


「お前はお払い箱なんだよ」


 これから庭を造るとは思えない白いスーツの男が、俺を見下ろしてあざ笑った。


「こんなクソつまらない庭、時代遅れなんだよ。 お前センスないよ?」


 爺さんから受け継いだ技術を馬鹿にされた気がして腹が立った。


「派手にすりゃいいってもんじゃないだろ! バランスが大事なんだよ!」

「爺臭い庭いじり野郎が一丁前だな……まあ吠えていられるのも今のうちだけだ」

「?」

「人生の先輩として忠告してやろう」


「店を畳んで転職した方しろ。 この町の庭は俺が取り仕切る」


 悔しかった。

 庭師の技術が劣っているとは思わない。 それでも商売人として目の前の男に、今のやり方では敵わないことは理解していた。


 けれど爺さんがコツコツ作り上げた関係、大きな儲けはなくても長年爺さんが守った造園所の看板を汚されていく。


――俺はどうしたら


 考えても名案なんて浮かばない。


『俺は静かな庭好きだ。 時間が緩やかに流れるような庭を眺めれば、日頃の悩みもも鬱憤もほどけてくんだ』


 代わりに爺さんの言葉を想い出した。


『おめえはどんな庭を造りたいんだ?』





「私はダンジョンの神」


「君はこれからダンジョンマスターとして異世界に転生してもらう」


 死後、俺=隠樹創太おきそうたは白い世界で神と対峙していた。


「それで君にはダンジョンの無い世界に行ってもらいたい」


 神の思惑は、俺をダンジョンの無い世界への先遣隊にしたいらしい。

 そこでダンジョンという存在を人々に認知させたところで、後発のダンジョンマスターを送り込んでいく計画。


「いや、俺より経験のある人がいいのでは?」

「そうなんだけどね~。 断られちゃった☆ 他に人もいないしとりあえず君でいいや」


 軽い、そして適当な神だ。

 この神はダンジョンマスターとして生きる俺の上司に当たる存在だろうから、緩い分には仕事がしやすくて助かるけれど。


「はい、これ」


 神に渡された見慣れた四角形。


「スマホ?」

「うん、それで進捗を報告してもらおうかなって。 それと能力に関する説明もそれで確認してね。 細かい指示とかはしないから適当に上手くやってよ」

「はあ」


 この神、やる気を感じない。


 けれど人を殺せとか国を支配しろとか言われるよりはずっといい。


「まあゆっくりやってみます」

「うんよろしく~。 じゃあいってらっしゃーい!」






 そんな適当な感じで俺は異世界に転生した。


「何の情緒もないな」


 瞬きの瞬間に景色が変わった。


 遠くに町が見える丘に俺でしばし立ち尽くしていた。


「とりあえず町に行ってみよう。 ダンジョンは後でいいや」


 正直、俺はダンジョンマスターに興味がなかった。


 だからついつい後回しにしてしまった。


 そしてその町で俺は庭師の爺さんと出会う。

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