第513話 こうして僕らは始まった

「え……!?アレックス!?」

 目が覚めると、僕の頭を愛おしげに撫でていたヒルデがバッと僕から上半身を離した。


 僕もヒルデに巻き付いていた体を離して、2人して赤くした顔を見合わせる。

「な、なんでヒルデ、ドレスを脱いでるの?

 なんで僕まで服を着てないんだろう。」


「アレックスが脱げって言ったんじゃない!シワになっちゃうからって!アレックスの服もシワになっちゃうから、それで私が寝ているアレックスの服を脱がせて置いたのよ。」


「いや、言ってないよ!」

「言ったわよ!覚えてないの?

 どうせ寝ぼけてたんでしょ!

 もー、アレックスの馬鹿。──エッチ。」


「え!?エッチ!?なんで!?」

「アレックス、寝ながら私を抱きしめたり、あっちこっち撫でたり揉んだりしてたのよ。

 ──それも覚えてないんでしょ。」


「えええええ……。」

 僕は思わず絶句する。確かにヒルデの体に巻き付くように抱きしめてはいたけど……。

 ぜ、全然覚えてない……。


 レースのドレスみたいな下着を身に着けたヒルデは、とってもセクシーで、こんな状態のヒルデを一晩中、触ったり揉んだり抱きしめたりしてたなんて!?嘘でしょ!?


 レースの下着越しに見える、ヒルデの女の子らしいシルエットをマジマジと見つめる。

 ど、どこを触ってたんだろうか……。


「抱きすくめられて身動き取れないし、アレックスは寝ぼけてて引き剥がせないしで、大変だったんだから。」

「ご、ごめんなさい……。」


「特にオシリに執着してたわよね。

 なに、あんた、オシリ好きなの?」

「そ、そうかも知れない、です……。」

 キリカにも散々言われたしなあ……。


「いいけどね、もう夫婦なんだし。いずれそういうことも……するんだし。だけど今度はちゃんと起きてる時にしてよね?あれだけしといて覚えてないとか、ありえないから。」


「わ、わかりました……。」

 覚えてないとか、僕も残念過ぎるし。

 手に感触すら残っていない気がする。


「ちょっとは私にドキドキした?」

 そう言ってイタズラっぽく笑うヒルデが、可愛くてたまらなかった。正直、ヒルデに惹かれ始めている自分に気が付いていた。


「うん……、ドキドキした。」

「そ、そう……。」

 思わず敬語も忘れて答えると、今度はヒルデが黙る番だった。


「うん。だから確かめさせて。」

 僕は素直に認めて、もう一度ヒルデを抱きしめる。今度こそ、ちゃんとヒルデの感触を覚えていられるように。


 ……いや、オシリは触らなかったけどね!さすがにね!するとヒルデのほうが慌てだして、僕の腕の中から抜け出そうとしてくる。


「嫌?」

「い、嫌っていうか……。どうしたのよ急に、あんたってそんな大胆だったっけ?」

「自分に正直になろうと思って。」


「しょ、正直にって……。」

「ちょっとはだけたレースの下着が、とってもセクシーでドキドキした。僕今、ヒルデのこと、……凄く意識してるよ。」


「え! ちゃんと見てたの?」

 ヒルデが目を丸くして驚いて、その反応に僕が逆に驚いた。


「そりゃ見るよ!そんなセクシーな格好で、ずっと抱きつかれていたんだもの。なのに全然覚えてないとか……。今度こそ、ちゃんと覚えておきたいなって思って。」


「だ、だからって、こんな朝っぱらっから、まさかこのまま始めるつもりなの!?

 待って、まだ心の準備が……。」


「ち、違うよ!だた、抱きしめたいなって。

 僕の奥さんになったんだなあって、実感したいって思ったっていうか……。」

「そ、そのくらいなら、いいけど……。」


「ヒルデだって僕を抱きしめながら頭を撫でてたじゃない。僕に触りたかったんでしょ?

 撫でたかったら撫でてくれてもいいよ?」

 そう言って頭を差し出す。


「あ、あれは、だって……、その……。アレックスが寝てるって思ってたから……。寝てるアレックスがかわいいなって思って……。」


 そう言って恥ずかしそうに、モジモジしているヒルデが可愛い。いきなり予定外に結婚することになっちゃったけど、僕らは案外、夫婦としてうまくいきそうだ。


「僕らは交際0日婚だったけどさ、案外うまくいきそうだなって、僕は昨日と今日のことで確信したよ。ヒルデはどう?僕のお嫁さんとして生活することに、自信ない?」


「ま、まあ、お互い歩み寄っていけそうかなとは、思った、かな……。アレックスが私を女の子として意識してくれるのなら、夫婦としてうまくやっていける気がする。」


 僕はクスリと微笑んだ。

「変な始まりだったけど、これから末永くよろしくね、奥さん。」

「こちらこそ。旦那さま。」


 ヒルデもクスリと微笑んだ。

「そう言えばヒルデは子どもは何人欲しい?

 そういう話はしなかったよね、昨日。」

 覚悟の決まった僕はそう尋ねた。


「こ、子ども!?そ、そうね、男女1人ずつは欲しいかな……。」

「そっか、僕、頑張るよ。」

「頑張る!?頑張るって何を!?」


 混乱したような表情で、ヒルデの視線があっちに行ったりこっちに行ったりしている。まだまだそういう関係になるには、お互い時間がかかりそうだなあ、と思ったのだった。


────────────────────


やはり尻神さまは尻神さまじゃった。

とっぺんぱらりのぷう。


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