第433話 僕の強い奥さん
「それって、私とは別れて、ってこと?」
「ううんそうじゃなくて、ミーニャを第1夫人に、ヒルデを第2夫人にってことなんだ。
だからミーニャの許可が欲しくて。」
僕は慌ててそう言った。
「ずいぶんと唐突だね……。そう思った理由はなんなのか聞いてもいい?」
「うん、少し長くなるんだけど……。」
僕はヒルデがルーデンス王太子たちに狙われているということ、平民のヒルデには後ろ盾がないこと。
だからこそ狙われていて、後ろ盾があることを公表すれば、狙われなくなるのだということ、他の女の子たちも守る為に、証拠を手に入れられるよう動いていることを話した。
「なるほどね……。」
ミーニャは眉間にシワを寄せて、怒ったように考え込んでいた。僕はそれを見て思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
ヒルデを守る為とはいえ、ミーニャを裏切る行為でもあるわけだから、面白くなく思って当然だよね。だけどミーニャの言葉は、僕の思っていたものと違った。
「……貴族の中にはそういうことを自由に楽しんでいる人たちが多いと聞いたことはあるけど、無理やりだなんて、平民や下位貴族なら黙らせられると思っているからだなんて、どれだけ国民を馬鹿にしてるのかしら。」
ミーニャはルーデンス王太子たちの考え方や行動に怒っていたみたいだ。
「──ヒルデさんは、もう了承してるの?」
「ううん、まだ話してないよ。断られるかも知れないけど、提案するにしてもまずはミーニャに了承を得てからと思って。」
「そう。話してくれて良かったわ。私もヒルデさんに話す時に立ち会わせてくれない?
私が了承してるって、私が直接言わないと納得してくれないかも知れないし。」
「ほんと?怒ってない?」
「どうして怒るの?アレックスは浮気をしたわけじゃないんでしょ?」
「それはもちろんだよ!」
「まあでも、私は私が1番なら、2番、3番は気にしないけどね。」
「え?」
「もともとアレックスには、オフィーリアさまがいたもの。アレックスと結婚なんて、出来る筈もないと思っていたし。」
「ミーニャ……。」
「アレックスは世界を救わなくちゃならないんでしょ?そんな使命のある人なら、それこそたくさん奥さんを作ることだって、世間は認めてくれるものよ。昔の勇者さまだってそうだったじゃない?」
「それはそうだけど……。」
過去の勇者さまには、そういう人もいるんだよね。世界を救ったあとに、たくさんの人と結婚したって伝説があるんだ。
「でも僕はそういうつもりはないよ?
ミーニャだけがいてくれればいいんだ。」
「アレックス……。」
ミーニャは嬉しそうに頬を染めたあとで、
「でもね、アレックスはこれからもたくさんの人から好かれる人だと思う。」
「そうかな?」
「そうよ。それに、話を聞く限りでは、私はそのヒルデさんって、アレックスのことを好きなんじゃないかなって思ってるの。」
「ええ?ヒルデが?そんなことあるかな。」
「アレックスは鈍いものね。オフィーリアさまの気持ちにも気付かなかったんでしょ?」
「う、まあ……それはそうなんだけど。」
本人に言われるまで気付かなかったしな。
「だからきっと、嬉しい筈よ。
それに今はなんとも思ってなくても、一緒にいるうちに気持ちを向けられてることがわかったら、アレックスだってヒルデさんを好きになる日がくる筈だわ。私はそう思う。」
「そんなこと……。」
ない、とは言えないかも知れない。
だってオフィーリア嬢のことをちょっと意識しているし、レンジアのことだって大切に思っているわけだし。
僕の加護が、1番はミーニャでも、レンジアにも向いてるってことは、僕がレンジアのことも憎からず思っているからってことなのは、キリカに言われた通りなんだと思う。
「でも、私はそれでいいと思ってる。だってアレックスが大切に思う人が増えるってことは、その人たちが少しでも早く英雄になれるってことでもあるし。アレックスの使命の為には必要なことでしょ?」
「ミーニャ……。」
いたずらっぽい笑顔で、上目遣いで覗き込んでくる可愛いミーニャ。
僕の使命に理解を示して、その為には僕が他の人を好きになることがあってもいいと言ってくれる。僕の奥さんは、なんて強い人なんだろう。改めて惚れ直しちゃったよ。
「そもそもアレックスをひとりじめ出来るだなんて思っていないから。けど、1番は私だってこと、忘れないでね?」
「それはもちろんだよ!
ミーニャは僕にとって、ずっとずっと特別な人なんだから!」
「嬉しい……。」
うっすら目に涙を浮かべて微笑むミーニャを抱きしめたくなって、どうしてもキスしたくなって近付いたら、
「だーめ、結婚してからね。」
とミーニャにたしなめられてしまった。
早く結婚したい……。
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もともと産休で1人減ったところに、1人有給消化でやめることになって、仕事から帰ると頭が働かなく、文章書くどころではない日々が続いております。
というか、何も出来ずに寝てしまうことも多々ある状態です。
今日明日でなんとか上げられなかったところまで追いつけるよう頑張るつもりですが、落ち着くまでは毎日更新が厳しい可能性が高いです。
休みにまとめて何話かアップされると思いますのでよろしくお願い致します。
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