第346話 加護の得られる店の秘密・その1
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レグリオ王国でも、リシャーラ王国に加護を授ける料理を作れる店があることが評判になった頃、レグリオ王国内にも同様の店があることが、王宮にも伝わっていた。
「リシャーラ王国だけでなく、我が国にも加護を授けられる料理人が現れるとは。」
「神に特別に愛されている料理人ということでしょうな。」
大臣たちを含む国王アイビス・ドゥ・マッカラン主催の会議で、大臣たちが思い思いに意見をかわす。
「それで、いったいどのような加護が与えられるのだ?」
国王アイビス・ドゥ・マッカランが、調査を命じた大臣にたずねる。
「はい、料理によって異なるのですが、まず攻撃力と素早さの上がる料理があります。
これは特筆すべき事柄ですが、鍛冶職人が食べると、作成した武器や防具のレアリティが、通常よりも高いものが出来やすい傾向にあるとの報告を受けております。」
「おお……、狩りと鍛冶のガレシアさまの加護を与えられているようだな。」
国王アイビス・ドゥ・マッカランと同様に、大臣たちも嘆ぜきをもらす。
「ただし長い時間続くわけではありません。効果はおよそ数時間程です。その為同じ料理を食べ続けないと、製作完了までにその効果が切れ、レアリティの高いものが作れる確率もその分下がるとの報告をうけています。」
「1日でレアリティの高い武器を作ることは難しいからな……。作り終えるまで、同じ料理を食べ続ける必要があるというわけか。」
防衛大臣が独り言のようにうなずく。
「他にはどのような効果があるのだ?」
「食べると作物が育ちやすくなる料理があります。また、土壌を耕すと、普段よりもよい土が作れる傾向にあるようです。」
「そちらは大地と豊穣のミボルフィアさまの加護のようだな。」
「食べると美肌効果があり、他者から魅力的に映る料理もあります。」
「美と愛のエリシアさまの加護だな。」
「怪我や病気が快癒、または快癒傾向になる料理もございます。」
「健康と結婚のマルグスさまの加護か。」
「いくら飲んでも酒に酔わない、また吟遊詩人に新曲が降りてきやすくなるという料理がございます。」
「酒と音楽のスローンさまの加護か。」
「知能が上昇する料理もございます。魔法使いに好まれておりますね。またこちらの料理を食べた人間が多い地域では、錬金術師や魔道具職人が、過去に開発された商品を安価で提供する方法を編み出し、地域が豊かに発展する傾向にあるようです。」
「知性と発展のレスタトさまの加護であろうな……。本当に何が起きているのだ。」
国王アイビス・ドゥ・マッカランは、報告が進むにつれ驚愕していく。
「媚薬の効果のある料理もございますね。
またこちらの料理は、魔物に対して挑発の効果もあるようで、タンクが好んで食べております。催淫効果を受けた状態で戦闘に挑みますので、戦闘後は必ずそういう店に立ち寄る必要もあるようですが。」
「ま、まあ……それはよい。
おそらく嫉妬と誘惑のディダさまの加護であろうな。」
「そしてHPやMPの上限値を一時的に引き上げ、自動回復の数値までもが高まる料理がございます。経験値も本来のものより入りやすいと、冒険者より報告があるようですね。
また、危険がその身に迫った時、勘が働くという効果もあるようです。」
「生命と予言のアジャリべさまの加護がそれであろうな。まったく……。8柱もの神の加護を与える料理人など……。王宮に召し抱えるしかないではないか。市井の者たちに気軽に食べさせて良いものではないであろう。」
「それともうひとつ、どちらの神の加護であるのかわからないのですが、諜報部隊がその料理を口にしたところ……。」
「それはプライベートなのか、それとも調査の為であるのか。」
「どちらものようですね。」
「……まあよい、それで?」
「通常よりも情報を手に入れられやすく索敵しやすい気がする、と。こちらは証明が難しい分野である為、あくまでも諜報部隊の感覚による報告のみになりますが。
こちらを含めて9つの加護が確認出来ました。ただし料理は特定のものだけ。
食材が同じでも、その指定された料理でなければ、加護が得られないようです。」
「ふむ……。それはいったいどういうことなのだろうか。料理人そのものではなく、料理に加護が与えられているということか?」
「諜報部隊が調べてきた結果を、お手元の資料にまとめてございます。」
国王アイビス・ドゥ・マッカランは、その資料をパラパラとめくってじっくりと読む。
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