第327話 母さまとの再会

 僕の部屋の中じゃさすがに8人の大人がいると狭いからね。時空の扉を出して、お祖父さまのアイテムボックスの中に、母さまたちに似せた人造人間を出して置いた。


 母さま!兄さまたちに姉さまたち!ようやくみんなの体が出来ましたよ!さっそく人造人間と意識をつないでみて下さい!


 僕が念話でそう言うと、みんなを模して作った人造人間たちが、一斉にうっすらと目を開けてゆく。そして8人が僕のことを見た。


「アレックス……。なぜだ。」

「え?」

 な、なんでディダ姉さまは、不機嫌そうに僕のことを睨んでいるの!?


「なぜ私の体を作ったのが、1番最後だったのだ。私にそんなに会いたくなかったのか。

 どうなのだ?答えよ!」


「え?え?え?僕は皆さんの体を、まとめてつなげてもらいましたよ?誰が先ってこともないように一斉に……。」


 だって、揉めそうだからね。

 ディダ姉さまほどじゃないにしても、僕の兄弟はみんな嫉妬深いんだもの。


「つないだのは確かに全員まとめてだが、実際に作ったのは、ガレシアが先だったであろう!なぜ私が1番最後だったのかと聞いている!なぜだ!なぜなのだ!」


 えええ……。確かに1体ずつしか作れないから、そういう意味では順番に作ったけど。

「特に意味なんて……。強いて言うなら、母さまが兄さまたちを作った順番かなあ。」


「私が!私が1番アレックスに会いたがっていたのに!あんまりだ!ううっ……。」

「そ、そんな……。そんなつもりは……。」

 え?そんなに?泣くほど!?


「アレックスが生まれた時から、会いたがっていたのは僕らだって同じだよ。キリカだけが、役割の為とはいえ、1番最初にアレックスと話すのが、羨ましかったからねえ。」


 マルグス兄さまが、僕に抱きついてきて、ギュッと僕を抱きしめてくれる。

「マルグス兄さま!僕も皆さんのことを知ってから、ずっとお会いしたかったです。」


「仮の姿とはいえ、ようやく会えたな、我が弟よ!実に楽しみにしておったぞ!」

 レスタト兄さまが、マルグス兄さまに抱きしめられている僕の肩に手を置いて微笑む。


「レスタト兄さま!僕も嬉しいです!」

「マルグスばかりずるいよ、僕もアレックスに会いたかったんだからね。

 そろそろ、そこを代わってくれないか。」


 僕に抱きついているマルグス兄さまのことを、スローン兄さまが引き剥がそうと、軽くマルグス兄さまの体を押している。

「チェッ。まあいいけどさ。」


 そう言ってマルグス兄さまが僕から離れた途端、スローン兄さまが抱きついてくる。

 神さまって、揃いも揃って兄弟に抱き付くのが好きなのかなあ?


 それとも、僕とは生き別れたようなものだからなのかな?確かにリアムと生き別れて久しぶりの再会だったら、僕もリアムのことを思いっきり抱きしめたくなるだろうからね。


 僕を抱きしめているスローン兄さまの後ろで、まるで順番待ちでもするみたいに、がレシア兄さまが腕組みしながら待っている。


 えと……。これって、僕を抱きしめる順番の列だったりするの?エリシア姉さまと、ミボルフィア姉さままで!?


 実の姉とはいえ、女の人はさすがに恥ずかしいなあ……。そう思っていたら、レスタト兄さままで列の最後尾に並びだした。


 それを見た母さまが、ニコニコしながら列の最後に並んでいる。ちょ、ちょっと待ってよ、これってほんとにそういう列なの?


 僕は順番に兄さまや姉さまたちに抱きしめられて、最後に母さまに抱きしめられた。

「会いたかったですよ、アレックス。」

「僕もです……。母さま……。」


 母さまに抱きしめられるのは、初めて会った兄弟たちとは、また違った恥ずかしさがあった。小さい頃を思い出すような嬉しさと、大きいから今更恥ずかしいという気持ちと。


 だけど、仮の体とはいえ、もう二度と会えないと思っていた母さまに会えた、嬉しい気持ちのほうが勝って、僕は思わず泣きそうになるのをぐっと我慢した。


「これからは、会いたい時に会えますね、アレックス。」

 ニッコリと微笑んでくれる母さま。

「はい、母さま。」


 あれ?そういえば、順番待ちの列にディダ姉さまがいない。全員もれなく僕のことを抱きしめてくれたのに。ふと見ると、アイテムボックスの端っこでふてくされている。


「どうしたんですか?ディダ姉さま。」

「アレックスは私に会いたかったよな?」

「はい、もちろん会いたかったですよ。」

「ならアレックスのほうから来てくれ。」


「僕のほうから……?神の世界にですか?

 それは無理というものですよ、僕、半分は人間ですし。皆さんの仮の体を作ってお会いするのが精一杯というか……。」


「そうではない!」

 そうじゃない?ならどうして欲しいの?

 ぷいっとそっぽを向くディダ姉さまの気持ちがわからなくて、僕は困ってしまった。

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