第294話 気持ちが筒抜け

 え?神の祝福が授けられる人間の条件は、神さまに特別に愛されてる人のことだよね?

 ミーニャは誰に祝福をもらったの?


【オニイチャンですよ。】


 え!?ぼ、僕!?


【オニイチャン自身が神だと忘れてますか?

 オニイチャン、つまり創生神に特別に愛されているミーニャさんに、祝福が与えられるのは当然のことです。】


 しゅ、祝福って、与えようとして与えるものなんじゃないの?“選ばれしもの”は人間の中で唯一祝福を授けられるけど、その人の幸福を願って授けるものだと聞いたんだけど?

 

【それは神聖力を使っているからです。

 神聖力とは、神の力を借りたもの。

 自分の物でない力を借りて使うから、使いたいと考えないと使えないものになります。


 もちろん神は与えようとして祝福を授けることもあります。スキルがそうですね。

 ですが本来は、神に特別に愛された存在に自動的に付与されるものなんです。


 魔族を守護している神は、等価交換を好むため、対価を貰って力を貸しますが、祝福を授けることも当然あります。


 今現在、オニイチャンにもっとも祝福を授けられているのがミーニャさんですから、彼女の成長速度が早いのも当然のことです。】


 待って。ちょっと今の言葉が引っかかったんだけど、僕にもっとも祝福を授けられているのがミーニャってことは、僕は誰か他の人にも祝福を授けているの?知らないうちに?


【はい。現在オニイチャンが祝福を授けているのは5人。まずミーニャさん。そしてセオドア・ラウマン、つまりお父さんですね。


 そしてリアム・キャベンディッシュさん。

 オニイチャンの弟ですね。

 あとはオフィーリア・オーウェンズさん、そしてレンジアさんです。】


 叔父さんとリアムはわかるけど、なんでオフィーリア嬢とレンジアが?

 それって、えと……。


【オニイチャンが特別に気に入ってるから、祝福が与えられています。オニイチャンはミーニャさんの他に、オフィーリアさんとレンジアさんのことを特別に思ってるんです。】


 え……。

 えええー!?????

 え!?そういうことなの!?

 ぼ、僕って、浮気者だったの!?


 というより、自分の気持ちが祝福で筒抜けだなんて、は、恥ずかしい!!

 僕ってそんなに2人のことが気になってたんだ……。確かに特別だと思ってるけど。


【ミーニャさんほどではありませんが、気になっている存在ということですね。

 オニイチャンに特別に愛されることが、英雄になる為の近道だということです。


 今後オニイチャンが誰を好きになるのかによって、早く英雄になれる人たちがますます増えることでしょうね。それは神としての役割なので別段おかしいことではありません。


 むしろオニイチャンは、これからもっとたくさんの人間を愛して、1人1人に祝福を授けることが必要だとも言えるでしょうね。

 英雄を育てることが役目なわけですし。


 ですが個人的には、オニイチャンに近付く女が増えるので、面白くはありませんが。

 祝福で英雄になる存在、すなわちオニイチャンにとっての特別な存在ですから。】


 特別なのは私1人でいいんです、と、キリカはなにやら不穏な言葉をつぶやいている。

 嫉妬のディダさまほどじゃなくても、僕の妹はしっかりヤキモチ焼きだと思う。


【英雄になりたい人たちは、この先オニイチャンに気に入られたくて必死になることもあるでしょう。神の祝福は能力向上、成長速度が上がると同時に死ににくくもなります。


 お父さんはお母さまから強い加護をもともと得ていますから、既に死ににくいんですけどね。オニイチャンとお父さんがスウォン皇国で襲われた時に、お父さんが助かった理由が、お母さまの祝福によるものです。】


 叔父さん、2柱もの神の祝福を得てるってことになるんだ……。そりゃ強いよね。

 やっぱり叔父さんが、もっとも勇者に近い存在かも知れないな。


【オニイチャンがこの先好きになる人たちが増えれば、経験値を配布せずとも、予想よりも早く英雄になれることでしょうね。


 経験値の配布は本来のステータスが基準になりますから、レンジアさんやエルシィさんの種族特性のほうが優先されます。


 祝福が通じるのは、自分で稼いだ経験値のほうが効果を発揮しますね。ミーニャさんはオニイチャンについて行ってもだいじょうぶなように、頑張ったみたいですね。】


 ミーニャ……。そうだったんだ。僕の為に、そんなに頑張ってくれてたんだね。

 僕は思わずドキドキした。


【あ、今また祝福の量が増えましたね。】


 ──!!は、恥ずかしい……。

 妹に、僕の気持ちが筒抜けなんて。

 いちいち教えてくれなくていいから!

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