第293話 神の祝福
「何よりアレックスさまの商品を、最優先に卸していただき加工したいと思っています。
貴族の推薦に心当たりはございますか?」
「そちらはちょっとないですね。」
「そうですか、でしたらこの純金で、王室御用達を狙いましょう。もしも貴族の推薦がなかったとしても、王室御用達の商品を持つ商人は、王族の推薦を得たも同じです。」
え!?そうなの?そっか、そう言われれば王室御用達は、確かに王族が保証をしているから、推薦しているようなものだよね。
「あの、王室御用達の商品なら、実は既にあるのです。金塊とサンゴではないですが。」
「なんと!?他にも商品があるのですか?」
「魚と化粧品を売っています。化粧品は先日王室御用達をいただけることとなりました。
ペルトン工房で全国的に作っていただいています。こちらではいかがでしょうか?」
「じゅうぶん過ぎる程ですよ……。ペルトン工房も30年以上の商会を運営しています。
ペルトン工房長は、ペルトン商会の会頭でもいらっしゃいます。」
「そうなんですか!?」
「あちらは店舗をあまり持ちませんので、商会よりも工房として有名なようですがね。ペルトン商会会頭にもお願いしてみては?」
全国的に展開し、かつ王室御用達の商品を作れる商人であれば、実績としてもじゅうぶんだとタイラーさんは言った。
「始めてまだそんなに経たないのですが、それでもなれるものなのですか?」
「本来であれば無理でしょう。ですが大商人でもないのに王室御用達を得たのです。」
そのことに対する商人としての信用度と実績は、10年以上商人を続けている商会よりも高いものなのだとタイラーさんは言う。
「なにより、侯爵家を追い出されて、たった1人で奮闘されているアレックスさまに感動致しました。ぜひお力にならせて下さい。」
「タイラーさん……。」
ヤバい。血の繋がらない人に優しくされたら、なんか泣きそうになってくる。
僕、卸商人になれるんだ。
堂々と、リアムにも会いに行かれる!!
ペルトン工房長には改めて時間を取っていただいてお願いすることにした。
サンゴオークションは、サンゴをアザルド商会に委託しておこなうものだというので、売れたらお金を受け取ることになっている。
純金は価値をつけるのが難しいので、値段を協議する為にしばらく預けて欲しいと言われてそうすることにした。
タイラーさんに別れを告げ、アザルド商会を出ると、僕はそのままミーニャの家に向かうことをミルドレッドさんに告げた。
「おぬし、やけに嬉しそうじゃのう。例の2番目に会いに行くのかの?わらわも1番目として、ぜひ顔を拝んでやろうぞ!」
ぼ、僕、そんなに顔に出てたのかな?
だって、久し振りにミーニャに会えるし、通信具を渡したら、毎日だって会話が出来るんだもの、そりゃ嬉しいよ。
というか、ミーニャが2番目って……。ミルドレッドさんは、完全に僕の奥さんのつもりでいるんだ。うう……。ミーニャに誤解されちゃうから、待ってて欲しいんだけど。
「ミーニャ!!」
今まさに家に帰ろうとしているミーニャを見かけて、僕は彼女を呼び止めた。
ウサギを狩っていたのか、背中に叔父さんから貰った石弓をかついでる。狩りの帰りみたいだ。ミーニャはくるりと振り返ると、
「アレックス!!」
嬉しそうに微笑んで、僕のところに駆け寄って来てくれる。ああ、ミーニャかあいい。するとミーニャが不思議そうに首を傾げた。
「クエスト発動……?」
え!?英雄のクエストが、ミーニャに発動したの!?ミーニャはまだレベルも低い筈なのに……。僕の持ってるクリスタルドラゴンの鱗が近付くと、全員発動しちゃうのかな?
【回答、ミーニャ・ロットマンの現在のレベルは28です。現在冒険者ギルドに所属し、そのランクはBとなります。
Bランクの中でも上位に入ると言えるでしょう。Aランクにも近々手の届く存在です。
神の祝福により、成長速度が大幅に上がっています。この分だと、ひと月以内にSランク到達も夢ではないでしょう。】
え!?どういうこと!?
最近中級片手剣使いに上がったヒルデが、今16レベルで、ようやくBランクに挑戦しようってところなんだよ?
なんで最近スキルを授かったばかりのミーニャが、既にBランクになってるのさ!
それに冒険者になったなんて聞いてない!
ミーニャはクエストの内容を反芻するかのように、何ごとか考えながら空中を見つめている。まさか、受けるつもりなのかな?
【オニイチャン、神の祝福が彼女にはあると言いましたよね?神の祝福とは、どういう人間に授けられるものだと思いますか?】
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