第264話 バイツウェル3世への提案
「この国は島国ですから、届けるだけでも時間がかかりましょう。それがよいとわたくしも思います。国民を安心させ、万全の体制で“選ばれしもの”を迎い入れましょう。」
カミーザさんの言葉に、バイツウェル3世がカミーザさんの顔を見てうなずく。
「無限国庫に魚を出してくれるか?それと商人だったな、代金はきっちり支払う。」
「え!?いいですよ、こんな時ですし。」
「そうもいかん。この国を失われた大地から解放してくれた恩人だ。そのくらいはさせて欲しい。と言ってもこの国の通貨だがな。」
他の国で使えないんだっけね。バイツウェル3世はそれを気にしているみたいだ。
別にこの国では使えるんだし、もともとある程度は出そうと思っていたからね。
もちろんオンスさんたちの商売のこともあるから、ずっとは無理だけど、商売を始めたばかりで伝のないオンスさんたちだけじゃ、国全体に行き渡らせるのは不可能だからね。
今すぐ国全体の食料事情をどうにかしようと思ったら、国か大商人の力が必要になるよね。今回は緊急事態だから、大商人の協力を仰ぐにしても、国の助力は必要不可欠だ。
「貴族たちからも供出させ、国全体に行き渡らせよう。魔物の被害が酷い地域は、食料不足で商人の店や倉庫に対する焼き討ちなどもあると聞いておる。早々に手配せねば。」
騎士団も派遣して鎮圧にあたらせよう、とバイツウェル3世が言った。うわあ、だいぶ深刻な事態になってたんだな。
今までは各地の貴族の自治に任せていたんだね。まあ、それが普通だけど、“選ばれしもの”が訪問してくるとなれば、あんまり国が荒れているところは見せられないものね。
迎え入れるどころか、下手すりゃ回れ右されちゃうもの。荒れた国民たちが、せっかく訪問してくれた“選ばれしもの”に、危害を加えないとも限らないからね。
商人の次は貴族の屋敷、貴族の次は王宮が襲われる。飢餓が起きた国の歴史を家庭教師に学んだけど、どこもそんな感じだったし。
「分かりました。無限国庫に案内してください。魚の指定があれば教えてください。
なんでも出せるので。」
「魚の種類はよく分からんのでな。料理人たちを呼ぼう。料理人たちは皆平民出身だからな、国民が必要とするものにも詳しい筈だ。
彼らの要求を聞いてくれ。」
バイツウェル3世の言葉に、僕は分かりましたとうなずいた。カミーザさんが外の侍従に、料理人を呼ぶよう伝えに行った。
「……ところで、大変不躾なご相談ですが、実は他にも1つ提案があるのですが。
この国の為になることです。」
叔父さんが神妙な面持ちでそう言った。
「なんだ?ここまで世話になっておるのだ、おぬしらが悪い提案を持ちかけるとはよもや思ってはおらぬ。なんなりと申してみよ。」
「ありがとうございます。その前に、アレックスのスキルの秘密にもかかわることなので、それを現時点では外に口外しないとお約束いただけませんでしょうか。」
叔父さんはきっと、僕の使命をバイツウェル3世にも話すつもりなんだ。それを聞いたバイツウェル3世はニコリと笑って、
「何だ、そんなことか?まったくもって問題ない。もちろん約束しよう。なんなら魔法の誓約書を交わそうではないか。」
「いえ、そこまでは……。」
「よいよい。信頼の証と思ってくれていい。
それくらい、おぬしらには感謝しておるのだ。──カミーザ!」
「はい、なんでしょう?」
侍従に伝言を終えたカミーザさんが、不思議そうに首をかしげながら戻って来る。
「魔法の誓約書を作ってくれ。これから話すアレックスの秘密を、決して口外しないというな。カミーザ、お前も署名をしてくれ。」
「かしこまりました。」
カミーザさんは、魔法の誓約書が作れる人なんだ!これは作れる人の限られるものなんだよね。たがえると罰を受けるもので、商人の取引にはよく使われるものだ。
だけど作れる人が限られていることから、頼んでから出来るのに、本来なら時間のかかるものなんだよね。順番待ちがあるからね。
カミーザさんが呪文を唱えると、青い炎の中が集約し、2枚の紙の形になって現れた。
ここに署名して双方に血判を押したら、魔法の誓約書が発動する仕組みだ。
バイツウェル3世が、カミーザさんから受け取ったペンで、サラサラとそこに署名をして、カミーザさんに渡すと、カミーザさんも署名をして、指に傷をつけて血判を押す。
バイツウェル3世も、カミーザさんから受け取った針で指に傷をつけて血判を押した。
「さあ、確認してくれ。問題がなければそちらも署名血印して欲しい。」
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Q.世界一どうでもいいクイズ
感想から動画を当てて下さい。
全員スッピンになってからの勢いが凄い笑
元気になるから繰り返し見てしまうんだ。
フライングゲットの歌ってみた動画の中で1番好きだ。
──正解は明日☆
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