第244話 王宮からの呼び出し
他の国が手助けすれば、乗り切れる筈なのに、この国にはそれを得る手段がないから、こんなことになっているんだよね。
これも僕がいずれ解決しなくちゃならない事柄の1つだね。でも何はともかく、目の前の食料だな。野菜なんかも仕入れることを考えないと。さあ!まずは開店だ!
「本日開店の魚屋です!毎日新鮮な魚をお届けしますよ!売り切れても明日も明後日も魚が届きます!慌てないで、今日食べきれる分だけを購入してくださいね!」
声を張り上げると、死んだ目をして市場をうろついていた人たちが、一斉に、ハッ、と顔を上げてこちらを向いた。ちょっと怖いと思うくらい、目がギラついているよ。
我先に魚を買おうと、一斉に押し寄せようとする人たちを、叔父さんがうまいこといなしてくれる。明日もありますと言われても、パニックになる可能性を想定した用心棒だ。
「店を荒らすなら入店はお断りします。
順番に5人ずつお入り下さい。」
50人以上の人を押し返した叔父さんの力を見て、みんなようやく並んでくれた。
「魚だ……!!たくさんある!
こんなに……!!」
「ほ、本当に明日も来るんだろうな!?」
「はい、市場がある日は毎日来ますよ。」
「しかも安いぞ……こんなに新鮮なのに。」
「はい、無駄遣いしないで、安心して買い物してくださいね。明日も明後日もあるんですから、お金は大切ですよ。」
それでも手持ちのお金の分だけ買おうとするお客さんたちによって、飛ぶように魚が売れていく。どこかから聞きつけたのか、どんどんと人が集まってきて更に増えていった。
用意した20種類100個ずつが、かなり減ってきたところで、いったん補充します!と伝えてお店をしめて、すぐに補充してお店を再開する。うわあ、目が回るよ!
順番にお客さんをさばいていく。叔父さんのおかげで混乱もなく、順調に販売を続けてたんだけど、突然憲兵みたいな格好の人たちが、人垣を押しのけて店に入って来た。
え?なに?この人たち。
「──ここの店主はどの者か。」
「店長は俺だが、店は彼のものだ。」
ドーザさんが僕を指さした。
「国王さまがお呼びだ。
城まで一緒に来て貰おう。」
えっ!?どういうこと?密入国でも疑われてるの?確かに国交のない国から来たけど!
でも密入国なら国王の管轄下じゃ本来ないよね。各領地の貴族か、そうでなくても騎士団の担当の筈なのに、この国は違うのかな?
「──待ってくれ。」
僕の二の腕を掴んで無理やり引きたてようとする憲兵に、叔父さんが待ったをかける。
「なんだ貴様は。」
「この子の保護者だ。連れて行くなら俺も同行させて貰おう。」
憲兵の人たちは何事か話し合ったあとで、
「いいだろう。貴様もこい。」
と叔父さんの腕も掴んだ。
「──すみません!すぐ戻ります!」
そう言って、店をドーザさんとオンスさんたちに任せて、僕らは馬車に乗せられた。
赤い絨毯の上で、僕と叔父さんはこうべをたれて王族を迎える態度を取っていた。
特に拘束とかはされてないけど、武器を持った近衛兵たちが両サイドに立っている。
この国のマナーは分からないけど、王族が出てくるところを、見てはいけないのが、一般的な決まりごとだからね。
「──ゴザ・ケイオス・バイツウェル3世のおなりでございます。」
王さまが玉座に腰掛けた音がする。
「おもてを上げよ。」
えらく高い声が響いて顔を上げると、杖を手にして玉座に腰掛けていたのは、まだリアムと同じ年齢くらいの可愛い女の子だった。
プラチナブロンドに、まるで猫のような印象を受ける大きくて丸い青い目、大きめの緩やかなウエーブのかかった肩までの髪。
──この子がこの国の王さまなの!?
「その前にまず問おう。近衛騎士団長よ、なぜ客人をあのような、まるで罪人を連れて来たかのような扱いをしておるのだ。」
問われた近衛騎士団長と、僕たちの周囲で警戒をしていた近衛兵が困惑している。
「は……。王はこの者を、引っ立て、我が前に連れて参れと申されたのでは?」
私はそのように聞いておりますが、と、大臣らしき人の顔色を伺っている。
「誰がそのようなことを申した!この国の救世主たる御仁じゃ!すぐに兵を下げよ!」
はっ!と姿勢を正すと、僕たちの周囲で武器を構えていた近衛兵たちに合図を送った。
すぐに近衛兵たちは僕たちのそばから離れて、入口近くに立ち直した。
「我が国の人間が大変失礼をした。このたびそのほうらを呼び寄せた理由は、王家直属の占い師の予言によるものなのだ。この国の惨状を救う救世主が現れるという、な。」
そう言って、バイツウェル3世がちらりと右側に視線をやった先に、肩の出た白いロングドレスをまとった、黒髪ロングの三白眼気味のキレイな女の子が立っていた。
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魚の紹介が長くなってしまい、1つの話がほぼそれになってしまったので、本日は2話分公開とさせていただきます。
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