第232話 ななつをすべしものを狙う男たち

 四方八方から、鞭、モーニングスター、長剣、短剣、双剣、大剣、棍、ナックル、鎖鎌の攻撃が、僕に向かって飛んで来た。


「──血の海、固定ダメージ。」

「ぐわっ!?」

「ギャアッ!!」


 1人を除いて全員が近接職の彼らは、近付かないと僕に攻撃が出来ない。唯一多少遠距離が可能な鎖鎌ですら、僕に鎖を巻き付けているせいで、近付かないと攻撃が出来ない。


 彼らは血の海で一網打尽になった。

 だけど、スピード3倍は伊達じゃないみたいで、一撃をくらっただけで飛び退いた。


「なんだ!?こいつ、変な技を使いやがる!

 これが“ななつをすべしもの”の特別な力ってやつか!?」


「何かが吸い取られるような感じがしたぞ!

 おい、回復しろ!」

「あ、ああ……。」


 杖の男は回復職だったみたいで、みんなのHPを回復してる。

「もう一度だ!俺たちはリャリャクさまから特別な力をいただいた!負けるものか!」


 ──リャリャクさま?

 その人が、彼らにこんなことをさせた犯人なんだね。


 懲りずに四方八方から、鞭、モーニングスター、長剣、短剣、双剣、大剣、棍、ナックル、鎖鎌の攻撃が僕に向かって飛んで来た。

「──血の海、固定ダメージ。」


「ぐっ……!」

「回復だ!回復し続けろ……!」

 攻撃が当たる前に血の海に吸われて、力の抜けた拳も剣も、僕には当たらない。


 ダメージを受けると同時に、HPは回復出来るかも知れない。──けどね。

 MPがゼロになれば気絶する。魔法使いを目指すなら、子どもでも知っていることだ。


 僕はこの為に生命の海で真水を抽出して、MPを吸えるようになるまで、スキルをレベルアップさせたんだ!


 近接職はスキルを使う為にSPを使うことはあっても、MPを使うことは殆どない。MPを使うのはせいぜい魔法剣士くらいだ。


 叔父さんもヒルデも、普段からポーション類や毒消しやスタミナ回復アイテムしか持ち歩かない。使わないから必要がないからね。


 だから杖の男以外MP回復アイテムは持っていないとふんだんだ。能力でMP回復は、特殊なスキル持ち以外には出来ないしね。


 MPを吸われ切った瞬間、男たちの体がグラリと一斉に前のめりに地面に倒れ込んだ。

「──そこの人。」

 唯一立っている杖の男がビクリとする。


「マジックバッグをこちらへ。」

 鎖鎌の男が持っていたマジックバッグを、こちらに渡すように要求する。


「中の女の子を出して下さい。」

「し、知ってるだろう?使用者登録したマジックバッグは、持ち主しか中身は取り出せないんだ!そこの鎖鎌の男しか出せねえよ!」


 確かにそれはどうしようもなかった。持ち主の意識がないと、手に持たせても使用者登録したマジックバッグは開けることが出来ない。鎖鎌の男は気絶している。どうしよう。


 情報の海さん、僕のアイテムボックスに入れたアイテムは、リスト化されるよね?

 たとえば、マジックバッグに入っている物も、管轄下に置くことは可能かな?


【回答、時空の海は時空間魔法に干渉出来るスキルです。マジックバッグ程度であれば、たとえ使用者が生存していたとしても、干渉することが可能です。】


 良かった!

「時空の海!吸引!マジックバッグ!!」

 時空の海の鉄の扉が僕の頭の上に現れて、マジックバッグを吸い込んだ。


 頭の中に、マジックバッグ、ミルキィ、空き瓶、とリスト化される。あの女の子以外は空き瓶しか入れてなかったんだ。ゴミを捨てないなんて、変なとこ生真面目なんだな。


「血の海!HP回復!」

 僕はみんなのHPを、吸い取ったHPで回復した。叔父さんたちが目をさます。ポーションと同じで、傷もちゃんと治るみたいだ。


「──敵は1人を除いて全部倒したよ、叔父さん。あとはあいつだけだ。」

 そう言って杖の男を見た瞬間、杖の男は懐から何かを取り出した。──通信具だ!!


 杖の男は通信具で何やら信号を発したみたいだ。すると空中に突然水の渦みたいのが浮かび上がったかと思うと、その大量の水がまるで手のひらみたいに、男たちを掴んだ!


 そしてそのまま空中に持ち上げると、気絶した男たちと、杖の男とともに、再び空中に姿を消してしまった。──逃げられた!!


「なんだったの、さっきの……。」

 まるで巨大な魔物みたいな。少なくとも悪しき存在であることには違いなかった。


 空中から現れた水の手が彼らを掴もうと近寄った瞬間、得体の知れない恐怖というか、背筋が寒くなる感じがしたんだ。


 あいつらは僕を。ななつをすべしものを狙ってた。しかも僕がこの国にいることを分かってやって来たんだ。優秀な占い師が近くにいるか、千里眼持ちがいるに違いないよ。

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