第211話 ひとつ下のフロアへ
鎖を回収していたヒナさんに、別のオニが襲いかかる。──バチィン!!
「まったく、油断するなと言ってるのにゃ。
その武器は回収する時が弱点にゃりよ?」
エルシィさんがハンマーで、ヒナさんに襲いかかったオニを弾き飛ばす。その一撃でオニは地面にひっくり返ってしまった。
「ユニークスキル、気絶にゃ!!
さあ、どっからでもかかって来いにゃ!」
そこからはもう、みんな無双状態だった。
みんな楽しげにオニと戦ってる。
前に来た時よりも楽なのにゃ〜!とか楽しげに言ってるエルシィさんが、一番油断してる気がしないでもないけど……。
僕と叔父さんの出番、ないや……。
オニのドロップアイテムは、棍棒、魔石、スクロール、オニの革服、などなど。
まだ1階層目だからか、そこまで目ぼしいものはドロップしなかった。
だけどオニの魔石はかなり高値で取引される物らしく、オニの革服も加工職人に人気があるのだとか。たくさん手に入ったにゃ!大金持ちにゃ!とエルシィさんはホクホクだ。
「さ、ここまでは簡単にこれたにゃりけど、ここから下はもっと鬼が強くなるにゃ。
心してかかるのにゃ!」
そう言って、エルシィさんが扉を開いた。
扉を開けるとそこは狭い石の階段で、そこをおっかなびっくり降りていくと、かなり広いスペースに出た。さっきと違って防具のようなものを身に着けているオニたちばかりだ。
まるで天井を支えるみたいに、いくつもの歪な形の石の柱があって、それがかなり上の方まで続いている感じで天井が高かった。
「ガガギャギャ!!」
僕らに気が付いたオニが、警戒音のような声を発した途端、わらわらとオニたちが中央へと集まってくる。
「散らばらないように行くにゃりよ!
かたまってお互いの背後を守るにゃ!」
「承知!」
「了解!」
「はいですぅ〜。」
どんどんと前に進む4人に対して、僕、ルルゥさん、しんがりをつとめる叔父さんは、前方を走りゆく4人を、後ろから攻撃しようと襲い来るオニたちを注視していた。
「ヒナさん!右です!」
僕がそう言った瞬間だった。ヒナさんの背後から、棍棒が振り下ろされる──!
ガキンッ!!オニの棍棒の一撃を受け止めたのは、振り向いたギギルさんだった。
そのままギギルさんがオニを押し返す。
オニがよろけたところで、すかさずノーベルさんが距離を詰めて連打を振るう!
それに怯んだオニを、ギギルさんが横一線でスパッ!と硬い防具ごと切り裂いた!
「助かりましたですぅ〜。」
ヒナさんがのんびりした声でお礼を言う。
ガチッ!突然ノーベルさんのメイスが、オニの棍棒に跳ね返される。
その瞬間、スキルで上乗せしていた攻撃力の効果が消えたのが分かった。どうやら10回までしか上乗せ出来なくて、それを超えると1度リセットされてしまうみたいだ。
ヒュルルルルルル!と、どこからともなく飛んで来た棍棒が、ノーベルさんを襲う!
「はい〜、通じないですよぉ。」
ヒナさんの鎖がそれを絡め取った。
さすがに手にしていないと、スキルの効果は発動されないみたいだ。周囲を見回してみたけど、脱力しているオニはいなかった。
4人とも、近接に特化したユニークスキルみたいだ。それに気が付いたオニたちが、次々と棍棒を投げ出した!!たくさんの棍棒が、一斉に4人に襲いかかる。
攻撃方法を変えるなんて!ここには知性のあるオニはいないんじゃなかったの!?それとも知性があるって会話が出来るレベルで、この程度は知性には入らないのかな?
「──ユニークスキル、自動追尾。」
ルルゥさんが懐から取り出した短銃を連射すると、短銃から飛び出た弾が、目標の棍棒へと軌道を変えて、確実に撃ち落とした!
対象を追いかけて、必ず当てる武器だなんて、これから逃げるのは大変だよ!
ルルゥさんいい武器を選んだなあ!
「助かったのにゃ!」
「かたじけない!」
「ありがとうですぅ〜。」
「凄いね!カッコいい!!」
みんなルルゥさんの勇姿に見惚れてるよ。
双剣を使うのに、なんで短銃を選ぶのかなと思ったけど、この為だったんだね!
「グルゥ!ギャガガガ!」
ルルゥさんをまずは倒すべきだと判断したのか、オニたちがルルゥさんに集まってくるよ!──確かに遠距離武器は間合いをつめられると弱いけど。
ニヤついた顔で近付いて来たオニの体を、ルルゥさんの双剣が突き抜ける。
「……悪いな、近接のほうが得意でな。」
剣を振って血を払うルルゥさん。
御庭番衆次期筆頭のいち面を見た気がするよ。叔父さんとエルシィさんを除けば、たぶん1番実戦経験のある人なんだろうな。
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