第210話 武器のユニークスキル
「鬼は弱点がさまざまなのにゃ。火に弱いのも多いにゃりけど、見た目で分からないのも多いのにゃ。その場合完全耐性を持っているから、見極めが大切にゃりね。」
完全耐性……!属性攻撃を放つ魔法使いにとっては、天敵みたいな相手だなあ。僕のスキルも属性でいうと水だから、水に完全耐性のあるオニだと、攻撃が通らないのかな?
「僕の武器のユニークスキルは属性攻撃じゃないから、そこはまったく問題がないかな。
むしろ鬼に最適の武器だと思うよ!」
と、ノーベルさんが自信タップリに言う。
「初見の魔物相手に油断し過ぎなのにゃ!
あんまり武器を過信しては駄目なのにゃ。
武器は自分の実力ではないのにゃ。」
まるで初心者の冒険者に説明するかのように、エルシィさんがノーベルさんに言う。
僕のスキルも僕の実力とは言い難いしな。
過信し過ぎないように気を付けないと。
「ここのダンジョンは、扉の向こう側が鬼の住処になってるのにゃ。広さは固定の部屋とランダムの部屋があるにゃ。部屋と言ってもほら穴みたいな感じにゃりけどね。」
アントの巣みたく、巣穴が分岐してて、その向こうにオニがそれぞれ住んでるような感じなのかな?つまり、ダンジョンかつ、オニの集落ってことなのか。
扉は昼間は開かなくて、夜行性のオニたちが、夜は自由に徘徊してるんだとか。だから扉から突然出てくることもあるみたい。
基本はオニしかいないけど、たまにそれ以外の魔物も出ることがあって、それはオニが使役してる魔物なんだそうだ。
魔物が魔物を使役するだなんて……!
それだけでオニが相当強いってことが分かる。階層が下になるほど、偉くて強いオニが住んでいて、オニ自身も自由に行き来は出来ないらしく、ヒエラルキーが存在するんだ。
「だから無理に下に行こうとはせずに、自分の身の丈にあった階層で戦うことが大切なのにゃ。さあ、そろそろにゃりよ。」
松明で明るくなった通路の1番奥に、木で出来た引き戸があった。
「──構えるにゃ!」
エルシィさんがそう言って扉を開けた。
扉を開けた瞬間、通路を歩いていた棍棒をかついだオニ、扉の中から出てきたオニたちが、ぐるっとこちらを一斉に振り返る。
青色、赤色、黄色、茶色と、いろんな体色をしていて、下顎から上に向いた牙がはえていて、目はまっ暗く塗りつぶされたみたい。
腰にボロボロの布をまとっただけのがオスで、胸のところまで布を巻いているのがたぶんメスなんだろう。メスの数は少なかった。
「──先手必勝!いっくよー!!」
ノーベルさんが、言うが早いか、エルシィさんの背後から武器を構えて飛び出した!
ガキン!!ノーベルさんが殴りかかった瞬間、オスのオニがそれを棍棒で受け止めた。
石かなにかで出来てる先の太い棍棒は、ノーベルさんの攻撃をもろともしない。
ノーベルさんがニヤリと笑った。
「──ユニークスキル、攻撃力二乗倍化!」
ノーベルさんが連続で石の棍棒に攻撃を加え続けてる。そして何度目かの時だった。
ビキビキ……バキャアッ!!
ノーベルさんの攻撃を受け続けていたオニの棍棒に、小さくヒビが入ったかと思うと、突然真っ二つに砕け散った!!
「この武器のユニークスキルは、攻撃を繰り返すたびに威力が増すんだよ!受け続けたらいつかは武器の耐性をこえる。僕の攻撃を受け止めずにかわさなきゃ武器が壊れるよ?」
つまりは、もとの攻撃力が低くても、連続で攻撃を繰り返し続けるたびに、攻撃力が上がっていくんだ!もちろん上限はあるんだろうけど、これがユニークスキル武器の効果!
だけどこんな狭い通路にたくさん集まられたら、逃げるのも攻撃するのもやり辛いよ!
「ならば次はそれがしが。
──ユニークスキル、剣の舞い!!」
ノーベルさんの背中を飛び越えたギギルさんが、剣を鞘から抜いてひと振りした。
「クギャアッ!?」
狭い通路に我先にと押しかけていた、5体のオニたちが、1度に切り捨てられる。──なんで!?1回しか攻撃してないよね!?
「この武器のユニークスキルは、1度の攻撃が5回分に相当するのですぞ。そんな風に集まっていては、スキルのよい的ですな。」
ギギルさんがパチンと剣を鞘におさめる。
「えーい!ですぅ!」
ヒナさんが鎖鎌の鎖を、オニの武器に巻き付けた。
「ユニークスキル、脱力!!」
武器に鎖をからめられたオニが、ヘナヘナとその場にへたり込んでしまう。
そのまま鎌の餌食となった。
「この武器にぃ、捕まったが最後ぉ、力が抜けてしまうんですぅ。戦えないならぁ、武器なんてないもおんなじですよねぇ。」
体に直接触れなくても、効果が発動するユニークスキルなんて!下手に近付けないよ!
「──!!ヒナさん!あぶない!」
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