第207話 王家管理のレアドロップダンジョン
ルルゥさんがザブトンに座ると、ようやくオゼンに乗った料理が運ばれて来る。
もともとルルゥさんが遅れる予定だったから、料理を出すのを遅らせたってことか。
確かにオゼンがあって人の座っていない席が他にないんだから、よく考えたらルルゥさんが座る席はここしかないわけだ。
「その……、なんだ……。
先程はすまなかった。私ともあろう者が、動揺してしまって取り乱してしまった。」
ルルゥさんが正面を向いたまま、独り言のようにそう言ってくる。
「貴兄も知らぬことであったのだろう?
貴兄のせいではないというのに。」
「いえ、僕はだいじょうぶです。
不可抗力とはいえ、女性に失礼を働いたのは事実ですから。
申し訳ありませんでした。」
誤解が解けたみたいで良かったよ!
これから一緒にやっていく仲間なのに、気まずいままだったら困っちゃうもんね。
「貴兄は……、大人なのだな。」
ルルゥさんが頬を染めながら、何ごとかをつぶやいている。
「え?今なにかおっしゃいましたか?」
「いや、なんでもない。これは貴兄の供出品なのだろう?とても美味しい。
こんなものを食べられる日が来るとは思わなかった。今日はいい日だ。」
上手にセイザをして綺麗な所作で食事をするルルゥさんはなんだかとっても魅力的で、僕は裸を見た時以上にドキドキしていた。
「アレックスに貰ってばかりも、なんだか申し訳ないにゃね。ここは英雄としての結果を出すことで、お返しがしたいところにゃ!」
「確かに、そうですなあ!」
「うんうん、僕もそう思ってたところだよ!
良かったらみんなでこの後、ダンジョンに潜って経験値を上げない?
夜しかわかない魔物のいるところ!」
夜しかわかない魔物なんていうのもいるんだあ。夜は魔物がただでさえ活発になるっていうのに、すっごく強そうだなあ……。
「それぇ、とってもぉ、いいと思いますぅ。
新しい武器もぉ、試したいですしぃ。」
「実は早く使ってみたいんだよね!」
ノーベルさんが、えへへ、と頭をかく。
みんなの意見が一致して、夜のダンジョンに潜るということになった。
夜のダンジョン……初めての経験だよ。
「ほう?そういうことであれば、わしも協力せねばならんの。王家管理のダンジョンを開放してやろうぞ。うまくすれば、良いものが手に入るやも知れんぞ?」
「お、王家管理のダンジョンにゃ……?
クローディアさま、あそこは初心者向きではないにゃあ……。いくらにゃんでも。」
エルシィさんが難色を示す。
「経験値もドロップアイテムも美味いではないか。全ステータス10万を目指そうとする者たちが、何を尻込みしておるのじゃ?」
クローディアさまはあくまで楽しそうだ。
「いったいどんなところなんですか?
この国の王家管理のダンジョンって。」
「──鬼の住処よ。」
「オニ?」
「そうじゃ。知性の有る者も一部おるが、大抵はそうではないの。だが、それでもかなり強い。知性のある者は更に強い。
どうじゃ?面白そうじゃろう?」
オニ……。知性のある魔物かあ。
いったいどんな魔物なんだろう。魔物ってそもそも大抵知性がないとされているから、それだけで手ごわそうな感じがするね。
「特別な武器や、スクロールがドロップする場所じゃ。昼間は入口が閉じている。
そもそも夜しか入れんのじゃよ。」
昼間は入口が閉じているダンジョンか。
特別な条件が揃わないと出てこないダンジョンっていうのはたくさんある。
一般に時間わきダンジョンや、ランダムダンジョンと言われるものだ。
村や町や冒険者ギルドが管理しているところは、常設ダンジョン。常にあるところだ。
それに対して時間わきダンジョンは、一定の期間で入口が閉じるから、まさにタイムアタック。時間内に出ないといけないんだ。
ランダムダンジョンは、場所もわく時間もランダムで、特定することの出来ない場所。
その分手強い魔物が出るとされている。
スタンピードが起こりやすい場所でもあるから、ランダムダンジョンがわいたら、すぐに冒険者ギルドか、その土地の領主に報告する義務のあるものなんだ。
ランダムダンジョンは、1度ダンジョンボスを倒すと、常設ダンジョンに変わることも多いんだよね。それが、村や町や冒険者ギルドが管理している常設ダンジョンてわけ。
その上で、本来は冒険者ギルドや村や町が管理するところを、国が管理しているということは、それが国益につながるほどのポテンシャルを持っているからに他ならないんだ。
つまりは王家の管理ダンジョンは、1度誰かに攻略されたもの。そういう意味では難易度もわかっているし、攻略不可能じゃない。おまけにレアドロップ確定ってことなんだ!
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