第205話 そこは触らないでください!

 でも、エルシィさんも、知ってるなら先に教えてあげたら良かったのに。叔父さんも叔父さんだよ!ここのお風呂に入ったことがあるんなら、教えてくれればいいのに!


 僕だけが知らなかったなんて……。

 ただでさえ訝しがられてるのに、こんなことでルルゥさんに嫌われたくないなあ。


 そんな僕の気持ちをよそに、エルシィさんとルルゥさんは言い合いをしている。

 なぜに教えてくれなかったのだ!と。


「──私はもうあがる!」

「あっ、そんなに急に動いたら危ないにゃ!

 ここの湯船は岩場をくり抜いてあるから、ゆっくり歩かないと、結構すべるにゃ!」


 どうやらルルゥさんは、メガネがないせいで距離感がよく掴めていないのか、そのまま僕に近付いて来て、真横を通り過ぎようとして──そのままツルッとコケた。


「危ない!」

「えっ。」

 僕はルルゥさんを抱きとめようとして、そのままもつれるように尻もちをついた。


 柔らかいものが顔に押し付けられて……。

 い、息ができないよ!!

「〜〜〜!!どけ!早く!」

 乗っかってるのはルルゥさんだよ!


 手探りで手をついて、体を起こそうとしたルルゥさんは、──ムニッ。

「ル、ルルゥさん……そこは……!」

「ん?なんだこれは。」


「つ、掴まないで!そこは、その……!」

 形を確かめるみたいに、あんまり手を動かさないでぇ!!

 僕の顔がどんどん真っ赤になっていく。


「あっ、そこは男の子の大事なところにゃりよ?乱暴に扱っては駄目なのにゃ!」

 とエルシィさんがルルゥさんに言う。


 一瞬キョトンとしたルルゥさんは、それが何なのか分かったらしく、カーッと頬を赤く染めて、恥ずかしかったのか、


「だ、大体貴様がこんなところになぞ、いるから悪いのだ!」

 と、ギュッと感情のまま掴んでくる。


「ごめんなさい!!混浴と知らずに入ってしまった僕が悪いです!だからもう許して下さい……。お願いだから手を離して……。」


 消え入りそうな声でそう言うと、ルルゥさんは慌ててパッと手を離してくれた。

 敏感なところを人前で乱暴に扱われて、僕はもう可能なら消え入りたかった。


 ルルゥさんは真っ赤になりながら僕を睨みつけると、僕にだけ聞こえる声で言った。

 ──この変態が。


 ええええ〜。

 ふ、不可抗力ですよ。大体僕を押し倒してきたのも、僕の大事なところを掴んで乱暴に触れてきたのも、ルルゥさんなのに……!


「ぼ、僕が先に上がりますね!」

 僕はそう言って、前を隠しながら、滑りそうになるのを気を付けつつ、急いで脱衣所へと向かって行く。


 慌てた様子の僕の姿を見た、ギギルさん、ノーベルさん、ヒナさん、叔父さんが、

「いかがなされた?そんなに慌てて。」

「風呂の中で走ると危ないよ?」


「ちゃんとぉ、ゆっくりぃ、温まれたのぉ?

 肩までつからないとぉ、駄目だよぉ?」

「アレックス、本当にどうした。」

 と僕に声をかけてくる。


「お、お風呂の中に女の人がいます!」

 僕がそう言うと、一瞬間があって、

「「「「ええぇ!?」」」」

 とみんなが一斉に叫んだ。


「ど、どういうことぉ?

 王宮のお風呂ってぇ、混浴なのぉ?」

「知らない!聞いてないよ!」

「は、早く上がりましょうぞ!」


 と、みんなで慌てて脱衣所へと向かう。

「他にも王宮には浴場があるから、てっきりそちらに行ったかと思っていたのに!」

「そうなの?叔父さん。」


「ああ。内風呂の大浴場がな。今は見えないが、向こう側に山があってな。そこから覗きをする奴が現れて以来、女性は内風呂を使うようになったと聞いていたんだ。」


 そ、そうなんだ……。困った人もいたもんだね。外のお風呂は気持ちがいいし、今なら暗くて見えないだろうから、露天風呂のほうに入ることにしたのかも。


 着替えようと脱衣籠に手を伸ばすと、ふ、服がない!?代わりに見慣れない服が入ってるよ。まさか、王宮なのに盗まれた!?


「洗濯してくれているんだろう。

 王宮で風呂を借りると、いつも着替えを用意してくれているからな。」

 と叔父さんが教えてくれる。


 服はキモノだったけど、下着は普通にパンツだったよ……良かった……。ギギルさんみたく、なんか長い布1枚を腰に巻くタイプだったらどうしようかと思ったよ。


 ちなみにあれはフンドシと言って、昔ながらのこの国の、男性用の下着なんだって。

 最近はパンツを履いている人も結構いるみたいで、ノーベルさんはパンツだった。


 脱衣所で手早く着替えていると、

「……それで?見たの?」

「え?」

 ノーベルさんが聞いてくる。


「だからあ!みなまで言わせないでよ。

 見たんでしょ?どっち?」

「え?え?え?」


「エルシィさんと、ルリさんが中にいたんでしょ?どっちのを見たの?」

 ルルゥさん、ルリって名乗ってるのか。

 本名は知られたらまずいみたいだしね。


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期待されてる方がいるみたいなので、ラッキースケベ2割増しでのお届け。

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