第194話 81番目の扉。料理人(料理あり)。
「バイデン伯爵令息は、英雄候補者の1人だったよ、叔父さん。
──それも弓神で7%だった。
叔父さん以外だと、最も高い数値だよ。」
「そうか。バイデン伯爵とその娘さんたちにはお会いしたことがあるが、ご子息がおられたのか。跡取りが出来ないと嘆いていたが。
協力はして貰えそうな方なのか?」
叔父さんも昔、キャベンディッシュ侯爵令息として、この国に来た時にお会いしたことがあるのかな?
その時既に爵位を引き継いでいたんだね。
遅くに出来たお子さんだとかで、かなり可愛がっている様子だったしなあ。お姉さんが3人いるんだけど、僕が会った時点で既に3人とも嫁いだっておっしゃってたし。
「バイデン伯爵令息の性格からして、ノリノリで協力してくれるとは……思うけど。
ノリノリで人に話す気もするんだ。」
僕は思わず眉を下げて目線を落とした。
「なるほどな。確かにそれはまずいな。」
「今はまだ話されると困っちゃうから、そこをどうにかしてからだよねえ……。」
「そうだな。そのほうがいいと思う。」
僕としては、戦う意思のある人にやって欲しいと思っているから、そういう意味ではピッタリな人なんだけどね。
己を誇示するのが大好きな方だからさ。
「そこは他の候補者も探してみてから考えることにするよ。先に他の扉を確認しよう?」
「そうだな、そうしようか。」
僕と叔父さんは、次の扉の向こうを確認することにした。その次の扉は、81番・料理人(料理あり)とメモした部屋だ。
お祖父さまくらいの大きさの部屋で、丁寧に手入れされている調理器具や、その人が作ったとおぼしき料理が、所狭しと並んでる。
「……どこかで見たことのある料理だな?
どこの郷土料理だったか……。」
叔父さんが首を傾げている。叔父さんはここにある料理に見覚えがあるみたいだね。
「とりあえず、行ってみよう。」
心の中で時空の扉!と唱えて、出てきた扉を開けると、林のすぐ近くに煙の出ている煙突のある、小さなレストランが見えた。
可愛らしいデザインの建物で、2階建てのクリーム色の壁に、赤っぽい茶色の屋根、周囲には花の鉢植えやら植物やらが、置いてあったり植えられたりしていた。
お昼の時間じゃないからか、お客さんらしき人の姿も、店員さんの姿も、ここからは確認出来なかった。周囲に他の家がなくて、独立した建物だけど、お客さん来るのかな?
少し高い丘の上にあるから、店の窓からの見晴らしは良さそうかも。
このレストランの持ち主が、アイテムボックスの持ち主の子孫かも知れないな。
僕らは林の中でいったん、時空の扉を消すと、人に見られていないことを確認しながら周囲を散策する。すると、遠くに海があるのが目で確認出来た。どこなんだろ?ここ。
「ここは……。そうか!ドッパーナ王国だ!あれはドッパーナ王国の郷土料理だったんだ!卵をふんだんに使った独特のパイは、ドッパーナ王国でしか作られていないからな。」
と叔父さんが言った。
……ドッパーナ王国!!
リシャーラ王国の敵対国じゃないか!
地図でいうとリシャーラ王国の下。
リシャーラ王国との間に他の国がいくつか存在していて、過去の塩戦争の時に、戦争をしかけてきた国の1つだよ。
戦争が終わって、塩に関する協定が世界各国で結ばれた際に、自分たちの条件を飲まなかった、海のない国を恨みに思っているとかなんとかで、未だに仲が悪いままなんだ。
交流も殆どないし、僕も歴史でしか知らない。ドッパーナ王国人に会ったことのある、リシャーラ王国人は少ないと思うし、それはドッパーナ王国側もそうなんじゃないかな。
敵対国の人に協力を頼むとか、候補者がいたとしても難しそうだなあ……。
でも、一応探してみないとだよね。
むしろ、どうかいませんように。
情報の海さん!候補者がいたら教えて?
【回答、勇者、聖女、賢神、闘神、弓神、獣神、龍神に変化出来うる候補者について。
現時点で勇者に変化する可能性のある者について。
●セオドア・ラウマン。
勇者に変化する可能性、16.8%。
現時点で聖女に変化する可能性のある者について。
半径20リオ以内に該当者がいません。
現時点で賢神に変化する可能性のある者について。
半径20リオ以内に該当者がいません。
現時点で闘神に変化する可能性のある者について。
●カワシー・チュムラ。
闘神に変化する可能性、3%。
現時点で弓神に変化する可能性のある者について。
半径20リオ以内に該当者がいません。
現時点で獣神に変化する可能性のある者について。
半径20リオ以内に該当者がいません。
現時点で龍神に変化する可能性のある者について。
半径20リオ以内に該当者がいません。
以上です。】
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