第171話 抽出した水の特性

【回答、スキルにより今回抽出された水は、水深200アガ以深という、非常に深い層に存在する海水より抽出されたものです。


 そのため海面近くの海水とは異なり、産業排水や生活排水の影響を受けにくいため、清浄性の高い純粋な水質を保っているという特徴を持っています。


 純粋な水質である上に、様々な栄養が60種類以上と多く含まれているため、美容や健康への効果が高いことが最大の特徴、かつ香料等を加えると、浸透率の高い良質な化粧水などを作り出すことも可能な水となります。


 また今回抽出された水は、水深が深く日光が届かない環境にあることから、光合成が行われず植物アディンシルが育ちません。


 そのため地域差はありますが、抽出された水は表層と比べると、細菌や病原菌の数が約10分の1から100分の1程度しかいない状態となります。


 ただし赤ん坊には飲ませられません。


 また、魔力を含んでいる為、飲むと魔力が回復し、なおかつMPの基礎ステータス値の上限値を底上げするという効果を持っています。飲みやすく痛みをともないません。】


 ──植物アディンシル?

 植物アディンシルってなに?

 初めて聞く言葉だけど。


【回答、植物アディンシルとは光合成によってエネルギーを生産し、有光層と呼ばれる海や湖の水面で生活する、藻や細菌を餌とする極小の生き物のことです。光合成を通じ、植物アディンシルは二酸化炭素を食べて酸素を産生します。地上の酸素の維持に大きな役割を果たし、植物全体の酸素生産量のおよそ半分を担っています。


 また魚や貝類の主食のひとつで、沖合や沿岸に生息する魚たちの中には、植物アディンシルを主な餌としている種が存在します。餌の取り方は細かいエラで濾し取るタイプと、細い管状の口で吸い込むタイプがいます。


 植物アディンシルは、魚や貝などたくさんの海の生き物達の餌としてゆたかな海を支えています。しかし植物アディンシルの体をつくっている海の栄養分の量やバランスが悪くなると、一転して海の病気を引き起こし、たくさんの魚や貝を殺すこともあります。


 もし海に植物アディンシルがいなくなったら、大気との溶解平衡で溶けうる量しか炭素を吸収しないことになり、現在深海に過剰に存在する無機炭素は、海洋鉛直循環によっていずれは海洋上層に運ばれ、やがて大気に放出されます。そうなると大気中の炭素は現在の2倍程度になると予想され、地上の気温が常時上昇することでしょう。


 また、植物アディンシルを餌とする、動物アディンシルも存在します。動物アディンシルも魚の主な餌となる生き物です。】


 僕の疑問に情報の海さんが答えてくれる。 

 な、なんでそんな特殊な水を出しちゃったの?香料を加えれば化粧水が作れるって、それもう水そのものが化粧水ってことでしょ?


 おまけに浸透率が高いって、凄くない?

 だからヒルデはこんなにプルップルの状態を保ってるってことなんだね。


 普段は日に焼けて傷んでるヒルデの髪が、それこそほんとにどこかの令嬢みたくツヤツヤしてて、凄くなめらかで手触りの良さそうな肌をして……って、つい見ちゃったよ!


 周囲の人たちも、輝くようなヒルデの美しさに見惚れてるみたいで、昨日のドレス姿じゃなく冒険者の格好なのに、さっきからチラチラと、男の人たちがヒルデを見てるね。


 しかもMPの基礎ステータス値の上限値を底上げするって、まるで叔父さんにあげたレアスクロール並の効果だ。


 これって、小さい頃から、毎日MPを限界まで吸われて、気絶を繰り返しながら、ステータスを上げる作業をしなくて良くなるってこと?うわあ、リアムに飲ませたいなあ!


 リアムはMP総量を上げる訓練に使う、魔力を吸う石が体質にあっていないみたいで、いっつも体調を崩しているんだよね。


 それにこれを毎日飲めば、リアムだけじゃなく、すべての魔法使いたちが、その作業から解放されることになるよね。


 ……これは、売れる!売れるよ!

 あとは化粧水や溶剤を作れる職人か錬金術師を探せば、僕の新しい商売が始められる!


 肌によい化粧品と、髪によい溶剤と、MPの基礎ステータス値の上限値を底上げする飲料。一気に商品が3つも増えるよ!


「ヒルデ!ありがとう!

 僕、新しい商売のヒントをもらったよ!」

 僕はヒルデの手を両手でグッと握った。


「え?え?ちょっ、ちょっと、手……。」

「あ、ゴメン。」

 僕は手を握られて真っ赤になっているヒルデから慌てて両手を離した。


 近接職は普通手が硬くなるものだけど、ヒルデの手、剣士の手とは思えないくらい柔らかくてスベッスベで、まさに女の子の手って感じで、気持ちよかったなあ……。


────────────────────


つまりは異世界版海洋深層水。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る