第二章
新しい商品
第170話 新たな商売のタネ
「店におろす魚を、毎日お前が届けるのか?
時空の扉があるとはいえ、もしもお前が病気になったり、なにがしかが原因で商品が届けられなくなった場合、営業出来ないだろ。
その時はどうするつもりだ?」
──あ。そっか。僕の店は、僕がスキルで魚を出してるから安いんだものね。よそからでも仕入れれば、僕がいなくても店はやれるけど、それだとよそと差別化が出来ない。
その時のことを考えないと。
もしそうなったらどうしようかな?
「うーん、とりあえずは、全部の店に奴隷を置いて、マジックバッグを預けるとか?」
「確かに奴隷なら、契約印があるから、裏切って持ち出すことは出来ないだろうが、奴隷をさらって脅して出させる人間がいないとも限らないぞ。大きく儲けるなら尚更だ。」
うーん、市場の中には冒険者ギルドも、商人ギルドもあるから、店に直接手出しはしてこないだろうけど、マジックバッグを持ってる奴隷が、1人になる時は分からないよね。
奴隷商人の管理する家に住むことになるとはいえ、警備が万全かっていうと、ただ管理をしているっていうだけの、普通の家みたいだし。かと言って護衛をつけるのもなあ。
僕から仕入れが出来なくなれば、他から仕入れることになるけど、そうすると人件費や家賃を引いたら、当然赤字になっちゃう。
他の店は、在庫や売り上げ金の管理を、どうしてるんだろうな?いちいち持って帰ったり、どこかに保存したりしてるのかな?
「明日、他のお店はどうしているのか、商人ギルドに聞いてみるよ。
それを参考にしようと思うんだ。」
「そうだな、それがいいだろう。」
叔父さんもうなずいてくれた。僕はカナンをしまう為に、叔父さんに先に時空の海から出てもらうことにした。
出す時もしまう時も、いっつも妙にもだえてるから、あんまり見られたくはないしね。
特に叔父さんの前だと、なんか気まずい。今もなんとなく、チラチラ見られてるしね。
叔父さんがお祖父さまのアイテムボックスから出て行くと、僕は後ろから僕の首に手を回して、僕に抱きついていたカナンに、また必要な時に呼び出すからね、と言った。
コクコクと笑顔でうなずくカナンは、僕が宝石をこすった途端に、またもや突然もだえだし、宝石の中へと吸い込まれていった。
僕もお祖父さまのアイテムボックスの中から出ると、「──あ、痛たっ!」
入口のところで、僕のアゴが、見えないなにか硬いものにぶつかった。
──???
目の前には何もない空間が広がってるだけだった。僕はアゴをさすりながら思わず首をかしげる。
あ!そうか!レンジアだ!時空の海の中に入れる人間を制限したから、中に入れなくて入口の前で待ってたってことかあ。
さっきの硬いものはレンジアの頭ってことだね。レンジアにもそのうち獣神になって欲しいってお願いしないとだけど、彼女の秘密を僕が知ってるってこと、どう説明しよう。
これってヒルデに勇者になって欲しいと頼むことより難しい問題だよ。僕が神さまの使徒だってこと以外にも、レンジアに説明しなくちゃならないことが多過ぎるもの。
ましてやレンジアは王家の影だ。オフィーリア嬢つきとは言え、そこからリシャーラ王国にバレないとも限らないものね。
……まずは先にオフィーリア嬢に話をしないとだなあ。話はそれからだ。
「レンジア、ただいま、いきなりぶつかっちゃってごめんね?」
僕は見えないレンジアにお詫びを言った。
「……問題ない。」
見えない空間から声だけがする。
急にアイテムボックスの海に入れなくなったことを、レンジアはどう思ってるんだろうね?このことを話すかどうか悩むなあ。
その日は疲れたのでそのまま寝た。久し振りに母さまの夢を見たような気がする。赤ちゃんの僕を抱えて微笑む叔父さんと、日傘をさしている母さま。
僕にそんな、記憶はない筈なんだけどね。
なんだか幸せな気持ちで目が覚めて、叔父さんと朝食を食べた。
叔父さんに市場まで馬車で送って貰って、僕はルーベンさんとコナーさんに海産物の入ったマジックバッグを預けると、早速商人ギルドに立ち寄ることにした。
「──あっ!アレックス!見つけたわ!」
そこにヒルデが僕を見つけて駆け寄って来る。……なんかめっちゃツヤツヤしてない?
「どうしたの?そんなに慌てて。」
「アレックス!あの水なんなの!?」
「──水?」
水がどうしたんだろう?
「あの時あんたが私にシャワー代わりに出してくれた水よ!あれを浴びてから、ずっと肌がプルップルなんだけど、これってどういうことなの!?あの水いったいなんなのよ?」
えええ!?
ぼ、僕知らないよ!?
僕が出した水がなんだっていうの!?
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ついに魚以外の商品が登場します(*^_^*)
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