第163話 叔父さんへの秘密の共有・その4

「──アレックス、控えるんだ。」

 のんびりと話していた僕に、叔父さんが最敬礼を取って、僕にも同じようにするよう、うながしてくる。


「おそれおおくも8柱もの神々に拝謁たまわりましたこと、感激致しております。

 私は女神アジャリべさまの敬虔なるしもべたる、セオドア・ラウマンと申します。」


「同じく、アーロン・キャベンディッシュが子、アレックスと申します。」

 僕も叔父さんにならって最敬礼をした。


 僕より年長者が口上をのべた場合、同じ言葉を繰り返すとクドくなるから、同じく、で省略して名を名乗るのが慣例だ。


「よいよい、アレックスは女神アジャリべに特別に愛された子ども。我々と同じく女神アジャリべの子どもなのだ。子にそのようにかしこまられたい親はいないであろう?」


 知性と発展の神、レスタトさまがそう言ってくれる。レスタトさまを主神として信仰している国も多いよね。


 でも神さまたちからすれば、それもアジャリべさま信仰の派生になるってことなんだよね。結局はどの神さまも、アジャリべさまが生み出した神さまたちだから。

 

 レスタトさまにそう言われて、かしこまりながらも、叔父さんは最敬礼をといた。僕もそれにならって最敬礼をとく。


【“もともとは、他にも神はたくさんいたんだけどなあ。魔族のほうを守護しちまったから、今ここにはいないんだ。

 紹介出来なくて悪りーな。”


 “純粋な欲を持つものの方が、一心不乱に努力をする、だったかな。

 分からなくもないけどね。”


 “今の人間たちは、正直奪い合うばかりで努力とは程遠いものねえ……。”


 “その中にあって、セオドア、あなたは類まれなる努力にて、スキルの変化の仕組みにたどり着くことが出来たのです。これはとても素晴らしいことですよ。”


 “お前を神の使徒とすべき意見もあった程だ。誇るが良い。セオドアよ。”】


「はっ。恐れ多きお言葉。恐悦至極に存じます。俺には努力……、それしかありませんでしたので、それを磨いたまでのことです。」


【“スキルとともに、変化する方法を授けたものの、誰一人正解にたどり着くことがなくって、もどかしいったらなかったよね!

 セオドアでようやく1人目だよ!”】


 健康と結婚の神マルグスさまのお言葉に、僕と叔父さんはキョトンとする。

 えっ?どういうこと?


【“我々の力が大き過ぎて、そちらの世界に干渉することはとても難しいのです。

 出来ることがらが限られるのですよ。”】

 女神アジャリべさまが教えてくれる。


【“うーん、要するにだなあ。

 お前からすると、虫って小さいだろ?

 俺たちからすれば、お前たち人間は虫サイズってこったな。”】


 神さまから見た僕らが、僕らから見た虫サイズなんだとしたら、神さまって巨人族よりも大きな存在ってことだね!


【“まあ、概念としての大きさだけどな。

 お前がジョウロで流した水でも、自然に降った雨でも、虫からしたら大災害なわけだ。

 それくらい、俺たちとお前たち人間では出来ることも、力の強さも違うのさ。”


 “だけどねえ……。次元が異なるから、強い力なら力ほど、直接は手を貸すことは出来ないのよ。だから祝福としてスキルを授けることで、おのおの人の子らに頑張って貰おうとしたのだけれど。”


 “実は元々、人の子らにスキルを付与し始めた頃より、スキルの変化をさせる方法はあったのだよ。そこなお主の叔父上が、初めて見つけたというだけの話でのう。”】


 え。そうなの?


【“1000年もあれば、誰か見つけるだろうと思っていたんだけど、セオドア以外だーれも見つけなかったんだよね!アハハ!”】

 いや、アハハって……。


【“魔王の力が高まるまでに、自分たちで英雄を誕生させることが出来ずに、結果として救済措置として、異世界から勇者と聖女になれる人間を呼び寄せたり、その当代に生まれし子の中から、最も可能性のある子どもを、無理やり目覚めさせる他なかったのです。”


 “ですがそれは、ことわりを無理やり歪めた結果の所業。本来自ら生まれる筈の英雄たちを、神の力で生み出す。このようなことをいつまでも続けられる筈がないのですよ。”


 “我らは人の子にばかり干渉をし過ぎた。

 これ以上直接手出しをすることは、この世界の崩壊をもおこしかねんのじゃよ。”


 “だからこの先、人の子が努力する姿を見せ続けない限りは、バランスが崩れるから、新しく手を貸すことが出来なくなる、が正解だな。その為の方法を、アレックス、お前に世界中に広めて欲しいと言うわけさ。”】


 ぼ、僕の責任が重大だってことには、なにも変わりがないような……。

 けど、神さまたちな、手を貸したくないっていうより、貸せなくなるが本音なんだね。


【“いや、貸したくないのも本音だぜ。”】


 ──え。

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