第126話 奴隷の契約の仕方

「あんた……変わってるな。ああ、リシャーラ王国の人だったか。あそこはまともな魚を食べないものな。ちなみにランド魚なんて、生で食べたほうがうまい魚なんだぜ?」


「そうなんですね!ぜひ食べてみたいな!」

 僕はニッコリと微笑んだ。

 生魚は、僕の店の売りになるぞ!

 僕の店でしか買えない特別商品だ!


「賃金は、解体職人さんはひと月、中金貨3枚と職人ギルドで聞きました。それで早くご自分の身分を買えるといいですね。」

 僕がそう言うと、

 

「賃金……?奴隷に賃金だって?

 あんた、金を払うつもりなのか?

 奴隷は買ったらそこで終わりだぞ?」

 黒髪の男性が僕にたずねる。


「はい、元々職人ギルドで紹介して貰うつもりでいたんですが、今はベテランがいないとのことだったのでここに。雇うつもりで来ているので、賃金は支払いますよ?」


 黒髪の男性と茶色の髪の男性は、互いに顔を見合わせた。2人がツバを飲み込む。

「それで、どちらになさいますか?」

 店員さんがそうたずねてくる。


「うーん……。解体ショーが出来るのも気になるんですけど、料理人のスキル持ちっていうのと、生魚を食べさせられる技術っていうのが気に入りました。彼にします。」


「そんな!?俺の、俺の解体ショーは客を呼べます!どうか俺を買って下さい!!」

 黒髪の男性が慌てて叫んだ。


「本来1人の予定なのでごめんなさい。1人で経験が足りなそうなら2人と考えていたのですが、彼1人でだいじょうぶそうなので。いずれまた新しい店を開く時にでも……。」


「い、嫌だあぁ!!ここで買われなかったら俺は性奴隷なんだ!性奴隷は嫌だあぁ!!」

 性奴隷?ああ、ちょっとモテそうな見た目だからかな?ひょっとしてさっきのって。


「あの。さっきのあれって、その……。」

 僕は恐る恐る店員さんにたずねる。

「はい。この2人だったので、性奴隷をお求めかと勘違いをしておりました。」


 店員さんがシレッとそう言った。

 僕が男の人を買うと思ったの!?

 確かに貴族の中にはそういう人もいるし、僕も昔誘われたことがあるけど!!


「そ、そうでしたか……。」

「このままお持ち帰りになりますか?国の奴隷商人を通じて、お届けも出来ますが。」


「あ、でしたらそれで。」

 馬車でリシャーラ王国まで帰ったら、とんでもなく時間がかかるからね。今日も昼からお店があるし。早く帰らないとね。


 茶色の髪の男性の代金は、小白金貨2枚だったよ。見た目がいいことが関係してるのかな?それとも彼が犯罪奴隷だからなのかな。

 奴隷のお値段は差があるというしね。


 これじゃ普通の奴隷としては、なかなか買い手がつかないだろうね。もちろん、命の値段と考えたら、安すぎるくらいだけどさ。


 おかげで僕は彼が売れ残ってて助かったけど。普通に働ければ、何年かすれば、すぐに自分を買い戻せる金額だけど、これを稼ぐのが奴隷には難しいと言うし。


 彼の家族にも周りの人にも、お金が払えなかったのかも知れない。それか犯罪者である彼を、そもそも助けるつもりがなかったか。


 僕はお金を支払って所有者契約書にサインをした。無属性魔法使いが作成した、違えると双方にペナルティが発生する特別仕様だ。


 ちなみに双方とは、この場合店と僕に対するもので、僕の奴隷を店側が無理やり奴隷に戻したりは出来ないという契約だ。


 後からもっと高く買う客が現れたりなんかして、惜しくなって取り戻そうとしても、それは不可能っていう契約書になるよ。


 店員さんが、何やら冒険者ギルドでクエスト受付時に押す、スタンプのような物を持って来て、それを茶色の髪の男性の服の胸を開かせて押した。花のツルの刻印が刻まれる。


「お客さま、こちらにかざしてください。」

 そううながされて、茶色の髪の男性の胸元の、花のツルの刻印に手をかざすと、刻印が光って、スッとそれが消えた。


「これで契約は結ばれました。解除の際はお近くの奴隷商人であれば、手数料、中金貨2枚を支払えば、どこでも解除が可能です。」


 解除もいいお値段がするねえ……。

 まあ、専門技術職のスキルが必要だから、それなりってことなのかもね。


「奴隷は奴隷商人の館で暮らしますが、主人を持てば主人の家で暮らすことは可能です。それ以外のところで暮らすには、特別な許可が必要となります。いかがなさいますか?」


「そうですね……。僕の家は困るので、宿を借りようかと思っていたのですが……。

 特別な許可とはちなみに?」


「奴隷商人の監視下のもと、指定された宿で生活をする。または主人が定めた家でのみ暮らす。その場合、奴隷商人ギルドに、規定の料金を支払って許可を取ります。」

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