店舗運営はじめます

第114話 店舗運営と卸問屋に必要なこと

 だけど、いずれは、ばれるんだろうなあ。

 僕は稼いだお金で、大きなお店を借りようと思っているんだ。


 ここは人に任せて、時空の扉で別の町や国に行って、そこでも商売をしたいと思っているからね。この市場の店は、ラナおばさんに任せられないかなって思っているんだ。


 僕はそのことを叔父さんに相談した。まあいいんじゃないか、やってみろ、と叔父さんは言ってくれた。


 商人ギルドに行って相談をすると、場所をいくつか紹介してくれた。いい人が雇えなければ当然店なんて無理だから、まだ借りずに先にラナおばさんに相談する予定だ。


 さすがにミアちゃんとルークくんには、大きな店を丸ごと任せるなんてこと、無理だからね。頼れる大人がいないと無理だよ。


 僕が悩んでいたら、人を紹介することも出来ますよ、と商人ギルドの人が声をかけてくれた。お金の精算や税務申告を任せられる人を、有料で紹介する仕組みがあるんだって。


 冒険者ギルドだけじゃなく、商人ギルドもそんな取り組みをしているんだね。

 確かに税務申告を任せられるのは大きい。


 僕はまったくの初心者だし、その人に店長さんになって貰って、ラナおばさんたちにはその下で働いて貰うというのはどうかな。


 うん、なんか店舗運営が具体的になってきた気がする。まるっと運営のすべてを任せる場合は、月に中金貨4枚必要らしい。


 冒険者の護衛並の値段だあ……!

 でもこれも必要経費ってものだよね。

 僕は他の従業員候補の人たちと話をつけたら、改めてお願いに来ますと告げた。


 本当はあちこち行かなくとも、卸問屋とかになれたらいいんだけど、その立場につける人って、商人の中でもひと握りなんだって。


 僕が卸問屋になるには、まだまだ商人ギルドのレベルが足らないから、なることは難しいですと言われてしまった。


 それに、昔からいる一部の商人が利権を握っていて、新規が介入することが難しい、とても狭い世界なんだそうだ。


 後ろ盾になってくれる協力者がいないと、現時点では不可能な話なんだって。

 商人の世界も厳しいんだなあ……。


 僕が叔父さんと別れて、魚屋の準備をする為に市場の奥に向かおうとした時、冒険者ギルドの階段を降りてくる人と目が合った。


「あら、アレックスさま。」

 冒険者ギルドから出て来たのは──魔法使いのローブを身に着けたオフィーリア嬢!?


 それに家令補佐のジャックさんと、侍女のグレースさんも一緒にいた。全員装備を身に着けていて、冒険者スタイルだった。


「まさか……、冒険者デビューなされたのですか?オフィーリア嬢。」

「はい、ジャックに教わりながらですが。」

 オフィーリア嬢がニッコリと微笑む。


「ジャックさんに教わりながら?」

「私は魔法剣士ですので。一応中級程度まででしたら、魔法を教えることは可能です。」

 そうなんだ!魔法剣士!カッコいい!!


 魔法使いでもない、剣士でもない魔法剣士は、かなり貴重な存在なんだよね。剣士よりも剣術としては劣るから、どっちつかずの中途半端なんて揶揄する人も中にはいるけど。


 極めると遠距離からでも、近距離からでも攻撃可能な、オールマイティな存在になれるから、デバフの使えない弓使いよりは、魔法剣士のほうがパーティーにいるとありがたい存在って言われてもいるんだよね。


 グレースさんの武器、遠目に見た時は、剣の先に盾がついたものだと思っていたけど、近くで見ると、あれ、斧だね。変形する斧が武器だなんて、カッコいいなあ。


 というか、実際盾にもなりそうなデザインだよね。前衛のグレースさん、前衛も中衛も後衛も出来るジャックさん、火魔法と土魔法の2属性持ちのオフィーリア嬢。


 なかなか強力なパーティーだ。

 この2人がついていてくれるなら、そんなに心配することもないのかな?

 あ、そうだ!


「あの、これ、良かったら……。」

 僕はダンジョンでドロップした、最高(エピック)クラスの灼熱の長剣を、マジックバッグから出してジャックさんに手渡した。


「これは?」

「ダンジョンでドロップしたんです。

 ジャックさん長剣使いだからと思って。

 僕には使えないものだから……。」


 ジャックさんは灼熱の長剣をひと通り眺めると、それを僕にかえしてきた。

「申し訳ありません。

 私には使えないもののようです。」


「え!?そ、そうなんですか!?」

「魔法剣士の為の剣は、魔法をまとわせやすい素材でないと駄目なものなのです。

 お気持ちはありがたいのですが……。」


「そ、そうなんですね。そっか……。」

 魔法をまとわせやすいとなると、銀とかミスリルとか、特殊な素材のものになるよね。

 普通の剣は使えないのか。残念……。


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元々の代表作だった作品の、月イチ自己ノルマ最新話もアップしました。

よろしければそちらもご覧いただけると嬉しいです。

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