第92話 スクロールのドロップ
僕を守るのを優先しているから、思い切り振り抜けなくて、正面でハンマーみたく叩いただけだけど、ダイアウルフはその一撃で消えて、地面にドロップアイテムが落ちる。
僕とは火力が雲泥の差だなあ。
僕の撃った矢が目に当たったダイアウルフは、刺さった矢を前足で抜こうとしているのか、目をかくみたいに動かしていた。
その時〈海〉が発動し、狙った方向にいたダイアウルフとともに、矢を抜こうとしていたダイアウルフも巻き込まれて、ドロップアイテムを落とし、その場に矢が残った。
──あ、スクロールだ。
拾いたいけど、今は無理だなあ。
スクロールはどんな魔物もダンジョン内に限り落とすとされているアイテムなんだ。
経験値アップや攻撃力アップなんかの、色んな効果のあるもので、どんな魔物から何がドロップしやすいとかはあるけど、一応ぜんぶの種類がドロップすると言われている。
重ねがけが出来て複数使用可能だけど、同じ効果のスクロールだけは、二重に使用することの出来ないものなんだ。攻撃力20%アップに攻撃力10%をたせない感じかな。
「さあ、その要領で、どんどん狙うんだ!」
「う、うん!」
次々と襲いかかってくるダイアウルフを、〈海〉を発動させつつ矢で攻撃していく。
これがこれからの僕の攻撃スタイルになると叔父さんが言った。
だんだんと〈海〉を警戒して、ダイアウルフたちが近付いて来なくなってきた。
僕はその隙に足元に落ちていたスクロールを拾った。──攻撃力20%アップだ!
やった!さっそく使おう!
僕はスクロールを発動させた。
向かってくるダイアウルフに狙いを定めて弓を引く。──放つ!!
「ギャイン!?」
ダイアウルフを貫通した矢がダイアウルフを一撃で倒して、ダイアウルフが消えると、アイテムをドロップした。
「やった!!一撃で倒せた!!」
「スクロールを使ったのか。
何割のやつを使ったんだ?」
火力が急に上がった僕に叔父さんが言う。
「えとね、20%攻撃力アップのやつだよ。
さっき落ちていたのを拾ったんだ。」
「ふむ、2割でそれなら、もう少し鍛えればスクロールなしでもいけそうだな。」
と叔父さんがウンウンうなずいている。
「ほんと!?僕頑張るよ!」
僕はどんどんダイアウルフを倒していく。
叔父さんに手を貸して貰っていたのも最初だけで、だんだんと余裕が出てきて、1人でも〈海〉で狙いつつ倒せるようになった。
そして巣に逃げ帰ろうとしているダイアウルフたちを追い詰めて、この場にいた全部のダイアウルフを倒し切ってしまった。
「やった……!!」
「良くやったな。今は俺がいるという安心感があるだろうが、1人でも落ち着いて狩れるようにならないとな。」
「うん、頑張るよ。」
「お前のスキルは出すのに時間がかかるし、その間に弓で威嚇しつつ、スキルの威力を相手に教えてやれば、抑止力になるからな。」
メインの攻撃はスキルでやるけど、魔法と同じで発動に時間がかかる。1度発動させたらあとは手持ち無沙汰なのだから、弓で同時に攻撃したほうが隙が生まれなくていいね。
僕がもっと力をつけて、弓だけで倒せるようになれれば、1人で2人分の、いや、それ以上の戦力にもなれるというものだよね。
だけどもっと早く出て来るように出来ないのかなあ?もっとバンバン出せたら、海水の攻撃だけで、敵を倒せるんだけどなあ。
〈海〉からアイテムが出て来る速度って、常に一定なんだよね。
その時間がとても、もどかしいんだ。
叔父さんいわく、それはリキャストタイムというもので、特殊な技を放てるスキルは、攻撃力が高いかわりに、バンバン放つことの出来ないものなのだそう。
ヒルデの使う双剣にも、本来の双剣使いなら、スタミナ無限という特殊な技が一定時間使えたりするんだって。
双剣はスタミナをかなり消耗すると、ヒルデが言っていたものね。それが一定時間とはいえ無限になれたら、スタミナ回復を気にせずに連続攻撃も可能になるということだね。
「これは魔物でも人間でも同じことだ。弓矢で威嚇しつつ、スキルで倒す。スキルはMPを使用しないが、SP、つまりスタミナは使用することがあるが、減り具合はどうだ?」
僕は叔父さんの貸してくれたスクロールを開いた。これは自分の現在のステータスを文字にして見せてくれるものだ。
スクロールは分厚い書類みたいなもので、普段は巻いて持ち運ぶから、それをクルクルと広げた感じかな。
本来ならスクロールっていうのは、一回使うとなくなっちゃうけど、叔父さんのはなくならないレアなタイプのものだ。
ダンジョンでしかドロップしなくて、それでも数を落とすから普通に手に入るけど、消えないスクロールはレアドロップなんだ。
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